第二章 開いていた扉

翌日の放課後。

私はどうしても確かめたくなって、

一人で旧校舎へ向かった。

外はまだ明るい。

でも、旧校舎の中に入るとすぐに温度が下がったように感じた。

空気が冷たい。

埃の匂い。

窓の隙間から、風がカーテンをわずかに揺らしていた。

廊下を進むと、階段の上にひとつだけ開いた扉が見えた。

そこだけが、まるで“誰かが通った後”みたいに。

心臓が少し早くなる。

でも、足は止まらなかった。

三階へ上がる。

開いた扉の先は、古い教室。

黒板には、かすかにチョークの跡が残っている。

「……また、きこえるよ」

白く掠れた文字。

まるで、誰かが慌てて消そうとしたように。

その瞬間、背中にぞくっと冷たいものが走った。

黒板の端――そこに、

消えかけた“手の跡”があった。

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