第2話 筋トレ開始
前世で俺は、絶望していた。新たな筋トレの理論が発表される度に、俺のやってきたことは間違っていたのかと。最初から知っていれば、今頃どれほどでかくなっていただろうと。
できることなら、生まれ変わって最初からやりなおしたいとーーーーーー
***
~10日後~
(・・・29、30、うおお!
漸進的過負荷は、前回より強い負荷を加えるという、筋肉の増大に欠かせない手法だ。
ここでいう負荷とは、筋ボリューム理論である。
前世では筋ボリュームと呼ばれる、重量×回数×セット数の値である。筋肉増大に最も大きく寄与する要素とされていた。
今の俺に扱える重量は自重しかない。というか手足を動かすのも一苦労だ。
とにかく手足の曲げ延ばしを繰り返す。疲労困憊まで繰り返す。
今俺は、前世で得た最新理論に基づいて筋トレできている。殺されたと聞いて最初は怒ったが、今思えばあの女神には感謝するしかないだろう。
膝の曲げのばし31回×3を終えた。
「おい!どうした!?大丈夫か!?」
父が俺に向かって叫んでいる。それはそうだ、生まれて間もない赤子が汗をかきながら、突然激しい息切れを起こしているのだ。親としては当然の反応だろう。
しかしすぐに、息切れは収まった。
父は安心したようだ。
生まれてから10日、毎日親の目を盗んで筋トレを繰り返してきたが、ついに見つかってしまった。病院に連れて行かれるかもしれない。
「まあ、こんなこともあるか。」
意外な反応だ。しかし助かった。筋トレが見つかる度にいちいち病院に連れて行かれてはたまったものではない。俺はクレアチンとプロテインを生成し飲み干した。
-------一ヶ月後---------
筋トレを続けていた俺は、体重10kg筋肉量5kgにまで成長していた。謎ステータスの魔力量は2cmになっていた。最近気づいたが俺の体は、皮膚から2cm先程度まで、紫色のオーラのようなものを纏っている。どういう原理か、筋トレで疲労困憊になるとオーラは消え、息切れが収まってくると元に戻る仕様だ。
周りの人間も同様で、父は5cm、母は3cm程のオーラが見える。色は同じ紫色だ。
たぶんこれが魔力なのだろう。前世でたまにみていたアニメでは魔力を使ってものを宙に浮かせたり、炎をだしたりする魔法を放っていた。俺もあんな魔法を使えるのだろうか。少しワクワクする。
だが考えてもよくわからないので、一旦考えるのをやめた。大きくなったら分かるようになるだろう。
***
それはそれとして、最近立てるようになった。
これによってスクワットができるようになった。これは、俺の筋トレライフをより充実させる。今までより高い強度の負荷をかけることができるようになっただけではなく、ものを抱えてスクワットすることで、重量の調節ができる。
筋肉増大を効率的に促すために、RM値に基づいた重量の調整を考慮する必要がある。
RM値とは、一回ものを持ち上げる、もしくは引っ張るのが限界の重量を1とした値である。
RM値0.8前後が筋肉増大に効率がよいとされ、おおむね10回持ち上げるのが限界になる重量だ。
基本的に筋肉の増量は筋ボリュームに支配されている。その一方で、RM値の調整は、筋力増強に対して支配的だ。たとえば、10kgの重りで100回3セットのベンチプレスをするのと、100kgのおもりで10回3セットのベンチプレスをするのとでは、同じ筋ボリュームになり、これによる筋肉の増分に差はない。しかし、筋力については、後者がより伸びるとされている。
筋力を増強し、重りを重くしていくことで、常に1セット10回で疲労困憊になれる。回数を増やして筋ボリュームを増やすよりも単純にタイパがよいのだ。
スクワットへの移行により、俺の筋トレは加速するだろう。
自重でのスクワット10回×3セットを追えた俺はまたプロテインを飲みほした。
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