順調は油断を呼ぶか?
困りましたね。
困ることは何もない事で困っています現状。困りたいんですよ私。何か反動がありそうで。
村長同士の話し合いは上手く行きました。やはりというか当然、メナン村の村長とザーギ村の村長は渋い表情を浮かべていたけれど、その場に私がいたことで、そこで大きな声を出すことは無く。
この辺の展開はリーン女史の見立て通りだった。
あと、その二つの村では巨大熊がいることに気付いていなかった事も大きかったのだろう。
ハラー村でも、痕跡が発見されただけで姿が確認されたなかったわけだけれど。
――この時点では。
この話し合いの直後、メナン村でついに巨大熊の姿が目撃されました。
メナン村では軽くパニックになったみたいですけど、村長が巨大熊の情報を持ち帰っていたので、何とか被害は少なくて済んだみたいです。
少なくとも、人間に被害はなかったとのこと。
巨大とは言っても熊は熊なので、基本的には臆病なのかも。メナン村の猟師たちが「対処」すると、すぐさま山の奥に引き返したとのこと。
ただ、こうして巨大熊の存在が明らかになったことで、話が一気に進みました。
伯爵家への嘆願書。狼煙の配置。
そしてそれに合わせて私の各村への訪問も実行されました。
……なぜかレルと一緒に。
「わたくしも《聖女》ですから!」
と、言われてしまうと、拒みようが無くてですね。
それに私自身が「危険は無い」と言い続けたことも確かなことですし。
ただこれによって、一応私たちの護衛みたいな役割を請け負ってくれたゲルトおじさんと、他の村の猟師たちと間で積極的に交流できた事はいい事だったのだろう。
何せ山狩りとか、そういった実務的な問題について具体的にまとめることが出来たのだから。
それはつまり伯爵家への嘆願書も具体的になる、という事に繋がるわけで。
結果予想よりも早く、伯爵家は動いてくれた。
この事態に対処すべく派遣された兵士隊長――多分、そんな立場の人――であるカルト卿は、元々ザーギ村のさらに南方にあるピョルト砦に詰めている人とのことだ。
ピョルト砦というのは、グラナドス侯爵領に備えるための前線基地だから、カルト卿はおざなりで派遣された感じではないみたい。
実際見た目は壮年の
その部下である三人の兵士も、当然キチンと戦える人たちばかりみたい。
確認した人はいないけど、どうやらカルト卿は魔法も使えるらしいし。
この頼もしい助っ人たちはロート村に駐在して、狼煙の合図を待つという私のアイデアどおりの配置になってしまった。
その際の飲食含めた世話はロート村の担当になるけれど、ハラー村から援助物資が運ばれるので、当面問題ない。
……というわけで、やっぱり順調すぎて気持ち悪い。
気持ち悪いので――ちょっと余計なことを考えてしまったよ私。
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