第4話 ムテキング、今川義元になる
転生したら今川義元だった。
即座に絶望するムテキング。
だってさ。
今、桶狭間にいるんだもん。
すぐ部下の足軽を呼んだ。
呼んで、裏の崖を警備しろと伝えた。
すると足軽さん。
なんで?
って、当たり前の反応。
いや、そりゃ、織田軍突っ込んで来るし。
奇襲されて今川義元死ぬし。
とにかく裏手を警備してねと伝えた。
正面は大丈夫だから。
数の暴力出来るし。
だから拠点を小突かれてさ。
その都度本陣から兵を出すのも止めてね。
本陣を固めてね。
本陣を。
優勢だけど。
防御してね、お願いだから。
そう。
懇願に近く伝えた。
すると足軽さん。
なんで?
って、至極真っ当な反応。
そりゃそうよ。
織田さんなんか大軍で押し潰せんだから。
東海一の弓取りなんだもん。
大軍にもならぁ。
でも慢心はダメだよと諭した。
織田さん、小さな国だけど。
戦争なんだから。
慢心はダメなんだよと。
そしたら足軽さん。
えー、殿様強えーから大丈夫っしょ。
って、楽観主義此処に極まれり。
違うの違うの。
話を聴いて?
リッスントゥーミー。
リッスントゥーミー。
裏手の崖から馬でくっから。
ブリャアアアア!って。
だから本陣裏に馬防柵とか。
なんか作ってくれない?
崖っつっても。
長野オリンピックのモーグルより。
傾斜ねえんだから。
そりゃ馬来るよ。
だから馬防柵とか。
人員揃えて槍衾とか敷いて?
すると足軽さん。
えー?来なかったら殿様どうすんすか?
って、敬いもクソもねえ反応。
解った解った。
俺、お歯黒大名とか言われてるけど。
来なかったら。
ホワイトニングすっから。
あと。
桶狭間終わったらさ。
皆で名古屋グランパス観戦行こうぜ?
プレミアシートで。
スタジアムジャンパーも買うし。
なんでも食べて良いから。
だからお願い。
裏手の崖。
其処だけ。
裏手の崖。
其処だけ。
むっちゃ警戒してくんねえ?
すると足軽さん。
かったりぃー。
って、残業頼まれた平社員みたいな反応。
今川義元なのに。
気分は係長。
残業頼むのって辛い。
でも理解して?
理解してあげて?
死ぬの。
裏、護らねえと。
嫌々動いてくれる足軽さん。
コントに出てくるみてえなペラペラの壁を。
裏手に一枚だけ建ててくれた。
嫌々。
一枚だけ建ててくれた。
これで良いすか、殿様?
って、最早馬鹿にさえされていた。
良いわけねーだろ。
織田さん来ちゃうから。
早く壁作って。
ベニヤ板で防げるのBB弾ぐれえだから。
多分、弓矢でも穿いちゃうから。
槍で刺されちゃうぞ?
すっごく痛いぞ?
すると足軽さん。
織田さんの妹さん、むっちゃ美人っすよね?
って、危機感ゼロ。
話聴いてた?
リッスントゥーミー。
リッスントゥーミー。
お願いプリーズ。
この雨だから。
馬の足音も聴こえねえの。
いきなり織田さんくっから。
だから早く壁なり柵なり。
メイキングでビルディング。
アンダスタン?
アンダスタンしましたか?
脳みそ働かせてますか?
すると足軽さん。
南蛮由来の言葉は存じ上げませぬ。
って、いきなり歴史に沿いおった。
結局、壁も柵も出来ず。
裏手から織田軍の奇襲。
今川義元もといムテキング。
槍で刺されたけど。
死ぬまで。
ずっと足軽を見ておった。
働いてくれない足軽さんを。
怨めしく。
睨んでおった。
見られていた足軽さんは。
笑いを堪えながら。
幸せそうに死におった。
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