エピローグ:先生の溜息
その一部始終を、遠くの丘から、キツネ先生が見ていた。
「二本足」たちが、動かなくなったクマキチを囲み、勝利の雄叫びを上げている。 彼らにとって、クマキチは恐怖の象徴であり、排除すべき「害獣」だった。
キツネ先生は、静かに首を振った。
(……馬鹿者ですぞ、クマキチくん)
キツネ先生には、クマキチが「悪」だとは思えなかった。 ただ、彼は「知りすぎてしまった」のだ。 ブナの実やドングリより、遥かにカロリーが高く、甘く、美味い「餌」の存在を。
(あなたは、我ら山のルールではなく、『二本足』のルールがある場所で、山のルールを押し通そうとした)
彼らの「食べ物」は、彼らのもの。 彼らの「住処」は、彼らの縄張り。 そして、彼らの「仲間」を傷つけた者は、群れ全体で報復される。
それが「二本足」のルール。 クマキチは、それを知らず、知ろうともせず、ただ本能のままに行動した。
(あなたの『呑気』は、人里の『甘さ』には勝てなかったのですな……)
キツネ先生は、人間の街の明かりに背を向けた。 そして、もう二度と山の下(しも)を見ることなく、冬支度のために、暗く、食べ物の少ない、しかし「安全な」森の奥深くへと消えていった。
腹ペコ熊のクマキチは、人里の味が忘れられない メロンパン @MelonePan
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