第6話 格闘術と料理のプロ護衛
才華が入院している病院から店へと帰還し、早速最後の一人を召喚しようと部屋に急ぐクレア。
陽も落ちてゆき、夕方の時刻。
今回の召喚では二人は着いてこず、夕飯の準備に取り掛かっていた。
「よしロバート、お前は料理できるか?」
「目玉焼きなら余裕ですね」
「奇遇だな! 私も目玉焼きなら得意料理だ!」
二人の高らかな笑い声が、クレアがいる個室にまで聞こえてくる。
そんな声を聞いてクスッと笑ったクレアは、召喚の儀式に集中し始めた。
死者の書を手に取り、ページを開いていく。
依然として、キッチンからは二人の声が聞こえていた。
召喚する人物も決まり、唱えようとしたその時。
「歓迎も兼ねて、久しぶりに私が料理するか!」
四星の声が聞こえ、クレアが心の中で反応してしまった。
(スーちゃんの料理、あんまり上手くないんだよなぁ……美味しい料理食べたいな)
そんな雑念が混ざってしまい、死者の書のページがめくれ別の人物が召喚されてしまう。
「あーーーっ!」
想定していた別の人物が召喚され、大きな声をあげてしまうクレア。
その声を聞いた二人は個室に走って来て、勢いよくドアを開ける。
「どうした姫!」
四星が現場を見ると、既に魔法陣が生成され人が形作られていた。
彼女が選んだ人物から料理の雑念が入った人物が、いま形成されていく。
ロバート同様黒いスーツに身をまとった男性。
ぼさったした黒色の髪に、少し人相が怖い男が現れた。
一目見て
「おい……なんで俺はこんな場所にいるんだ?」
男がクレアを睨みつける。
クレアは男の威圧に屈せず、見つめ返していた。
そんな男を見て何かを思い出した四星は、男に指をさして声を出す。
「その姿……お前諏訪だろ!」
「あ?なんで俺の名前知って……お前は!」
互いに指をさし合う。
状況が呑み込めない二人は呆気にとられている。
「スーちゃん、この諏訪って人はどんな人なの?」
事情を詳しく知らないクレアの為に、四星は諏訪に付いて説明し始める。
「本名は
そう説明された諏訪は気まずそうにしていた。
四星はそんな諏訪のことなど一切気にせず、命令するような口調でお願いする。
「おい諏訪、お前姫の護衛しろ」
「はぁ? 姫って誰だよ」
四星はクレアを指差す。
諏訪がクレアを見ると、クレアは手を差し伸べて笑顔で答える。
「諏訪には、今日から私の護衛をしてほしいの!」
「嫌だね」
諏訪はクレアとの契約を拒否したのであった。
拒否されると思っていなかったクレアはショックを受け、その場で固まってしまう。
「おい諏訪、何が気に入らないんだ」
四星は怒った口調でそう諏訪に言った。
諏訪は四星を指さしてこう答える。
「お前がいるだろ。俺がいなくても、お前一人入れば問題ないはずだ」
指を差された四星はため息を吐く。
「私はずっと姫の近くに居ることが出来ない。だからそのための護衛だ。お前を含め三人いる」
「なおさら必要ないな。このまま俺を死なせてゆっくりさせてくれ」
意見を変えない諏訪に、四星も熱くなってしまう。
「一人は撃たれて重症、ロバート一人ではなくお前にも手伝って欲しいんだ」
「撃たれて重症とは、間抜けな護衛だな」
そう言って諏訪は才華を馬鹿にする。
その言葉を聞いたクレアは、諏訪に対して怒りを見せる。
「才華の事を馬鹿にしないで!」
先程まで元気で笑顔だったクレアが、才華を馬鹿にされたことによって怒る。
三人は驚き、固まってしまう。
怒ったクレアは個室のドアに手をかけて、扉を開き外に出ようとする。
「もう貴方とは契約しないから、早く帰って!」
クレアはそう言い捨て、部屋を後にした。
残された三人の内、ロバートは気まずいのかこっそりと部屋を後にする。
部屋にはバツが悪そうに頭を搔く諏訪と、腰に手を当て諏訪を睨む四星が残っていた。
「おい諏訪、なんで怒らせた」
四星が諏訪に聞く。
「別に、本当の事だろ。護衛に失敗して怪我する程度の奴だったんだろ」
「お前も仕事中に刺されて死んでるだろ間抜け」
二人の言い合いは続き、互いに折れない。
どうしても護衛任務に就きたくない諏訪と、何故そこまで断るのかを知りたい四星。
対立した二人の熱は徐々に収まっていく。
「お前がそこまで断る理由、まだ
んのか」
嫁と言う単語を聞き、諏訪は四星の
「おい、気安くアイツの事を出すな。お前には関係ないだろ」
「あぁ関係ないぜ。お前が護衛を断る理由ぐらいにはな」
それを聞いた諏訪は黙り、胸倉から手を離す。
四星は服を正し、再び諏訪に向き直る。
「……とりあえず、姫の所に戻るぞ。私達にはお前が必要だ」
「そうかよ」
二人は部屋を後にし、ダイニングへと辿り着く。
そこではロバートとクレアが座っており、戻ってきた二人に気付いて振り向いた。
「あぁ、おかえりなさい二人共。話は済みましたか?」
ロバートがそう言って、二人に着席するよう促す。
四星は座るが、諏訪はその場で立ったままクレアを見下ろしていた。
「……何? まだ居たの?」
クレアは嫌悪感を
そんなクレアを見て、諏訪は生前共にした妻をクレアに重ねた。
『何? まだ居たの、あなた』
『すまん、遅刻した』
諏訪の脳内に、あの時の記憶が蘇る。
忌まわしきあの日の事件を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます