第3話 その後

 あのあと亜紀は自室に行ってしまい、俺が自宅に帰るまでに話すことはできなかった。

 今日は両親ともに帰りが遅いので夕飯はインスタント麵で済ますことにしてさっさと食べてしまう。

 二階の自室でぼんやりと動画をみていると玄関の鍵が開く音がした。親のどちらかが帰ってきたらしい。

「ただいま」

 階下から母の声が聞こえてきた。そのまま階段を上がってくる音が聞こえる。

 ドアを叩いた後、母が部屋に入ってくる。

「夜ご飯どうした?」

「適当に食べた」

「あっそ」

 大した興味はないらしい。

「今からリビングで録画してた昨日のドラマみるわね」

「どうぞ」

「集中したいから降りてこないでね、きても静かによろしくね」

 本題はこっちだったらしい。

「了解」

 別に問題はないので頷いておく。

「麻子さんはもう観たっていうのよ」

 麻子さんというのは亜紀の母親だ。俺と亜紀の母親は仕事場が同じなのである。

「亜紀ちゃんも観てるらしいわよ、あんたも観たら」

「いいよ、好みじゃないし」

 そのドラマというのが「恋愛づくし」というタイトルの超ベタベタの恋愛ものなのだ。

「そう、面白いのに」

「いいから早く観たほうがいいんじゃない?親父が帰ってきたらテレビでニュース見始めるんだし」

「ああ、それもそうね。じゃあ、テレビつかうわね」

「はいはい」

 ドアを閉めて階段を降りていく音がする。

 その後またスマホで動画を見始めた。

 何本目かの動画を見ている途中、のどが渇いてきた。

 動画を停止してから部屋を出て階段を降りていく。

 リビングに入るとテレビの音が大きく聞こえてきた。そちらをみると真剣にドラマを観ている母親の背中が視界に入る。

 ドラマ鑑賞の邪魔をする気はないので言われたとおりに静かに台所にむかう。冷蔵庫をあけ麦茶を取り出してコップに注ぐ。

 それをゆっくりと飲む。

 ふと、ドラマをみる。

恋人らしき男女二人が食堂らしきところで仲良く食事をしているシーンらしい。恥ずかしげもなく、あーん、をしている。ベタベタの恋愛ものというはなしのとおりの内容だ。

 亜紀も観ているといっていたが女子には受けがいいのだろう。

 そういえば亜紀の様子がおかしい理由は結局わからずじまいだったことを思い出す。

 明日、ちゃんと聞いてみるか。なにか悩んでるのかもしれないし。

 そう決めて残った麦茶を一気に飲み干した。



「ママ、晩ご飯なに?」

「ハンバーグ」

「やった」

「亜紀、そんなことより、どうだったのよ」

「……なにが?」

「とぼけないの、恋愛づくし大作戦よ」

「何、そのダサいネーミング」

「恋愛づくしのまねする作戦だからに決まってるじゃないの」

「そのまんますぎない?」

「そんなことはどうでもいいのよ、上手くいったの?作戦は」

「ママが勝手にやったんじゃない、ケーキを一つしか用意しないで」

「いいじゃない、たまにはあのぐらい直接アタックしなさいよ。あーんした?あーん」

「するわけないでしょ。恥ずかしい」

「そんなんじゃいつになっても進展しないわよ」

「うるさい、ご飯できたら呼んで」

「あ、ちょっと逃げないの亜紀。もう、こういうときだけ弱気なんだから、あの子は」

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2人分の1つのケーキ でーかざん @daikazan

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