第2話 ケーキの行方

 亜紀はまだ食べていないのにケーキは二つではなく一つ。

つまりは元からケーキは一つということになる。亜紀母が間違えたらしい。

「おばさんが間違うの珍しいな」

「……そうね」

 やはり今日の亜紀は様子がおかしい。これ以上理由を追及することはしないが。

「ケーキはじゃんけんで決めるか」

「いや」

「じゃあ、半分こするのか?」

「……いや」

「……」

 呆れるほどいつもの強気な態度がみえた。少し安心する、気がする。

「ならやるわ」

 そういって椅子から立ちあがり、リビングのソファのほうにいく。今日の課題をやってしまおう。

「……ねぇ」

「ん?」

 うしろから声を掛けられて振り向く。

 亜紀がフォークを手にしてこちらを向いている。メチャクチャこちらをみている。目力がいつになく強い。ぶっちゃけすごく怖い。

 なんかしたのだろうか、俺。

「やっぱり何でもない」

 なんでもなさそうには全くみえない。

「なんでもない」

 念押しされる。

 おとなしくリビングにいき、課題を始めた。

 しばらく課題に集中する。かすかに食器の音が聞こえた。

「ふう」

 課題が終わった。大きく背伸びをする。

 時計をみると三十分くらいかかったらしい。

「おわった?」

 亜紀が唐突に視界に入ってくる。

「お、おお」

 少し驚く。

 よくみると亜紀が手を後ろに回していた。

「目つぶって」

「え?」

「いいから、目つぶって、早く」

 なにも考えずに言われたとおりにする。

「口開けて」

 口をあける。

 口の中になにか入ってくる

「食べて」

 口の中のものをたべる。甘酸っぱい味が口に広がる。どうやらイチゴらしい。

「もういいわよ」

 目をあけると亜紀はもう背をむけて台所のほうへ歩いていた。手にはフォークがあった。さっきのイチゴのでどころはさっきのケーキらしい。

 なんだったのだろう。

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