裏切りのない物語
クライングフリーマン
裏切りのない物語
================= 基本的にノンフィクションです ============
裏切りのない物語。
そんなものは、私の歴史にはない。裏切られてばかりだった。
従って、黒歴史が回顧録?にちょくちょく出てくる。
先日、一周忌の時、どこが一番いやだったか?と尋ねられた。
「・・・2番目のサ高住かな?」
私は、こう応えた。
母を引っ越しさせた後、数年に亘って、FAXの音らしいイタ電があった。
恐らく、「何だったら、出て行ってくれていいんだよ。」と言った、(私にとって)2番目の支店長だろう。
1度、原稿書いてFAXで送ったことがあるが、それでFAX番号だと勘違いして覚えたのだと思っていた。
彼は、腹いせなのか、FAXで嫌がらせのメッセージを送りたかったのか、何度も『届かない』FAXを送ったようだ。
思えば、イエ電(家の固定電話)に電話して来た事がなかった。
かけて来たことがあれば、会話の電話と同じだと気づくだろう、と私も思っていた。
だが、ドラマでFAX兼電話を使っているシーンを思い出した。
そうか。同じ番号だと分かっても、FAXに付いている受話器を外して電話することは出来る。そういうイメージで、留守番電話もFAXの留守番電話と勘違いしたか。
1度だけ「ウチにはFAX専用の番号はありません。」と言ったことがあったが、理解出来なかったに違い無い。
彼は、私を嫌悪していた。
引っ越しをした時、手伝いを依頼した『何でも屋』さんにまで冷たく当たったそうだ。
その時、母のベッドの運搬を請け負ってくれた介護用品会社の社員にもだ。
『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』というが、とんだとばっちりだ。
自分も客商売しているのに。
彼は年末に入社し、元日のは、社長の『おごり』で、初詣の送迎してくれ、母と「いい人が入ったね。」と言っていた。
事件は、翌日起きた。
夕刻、母が急に腹痛を訴えだした。
私は救急車を呼んで貰った。
救急隊員が、「腹膜炎の可能性があるので、卑近の〇〇病院より、救急病院の◎◎by要員の方がいい」と言うので、そこに移送して貰った。
レントゲンとCTの結果、下腹部に詰まっているものがある。極端な『便秘』だ、と診断された。
下剤投与の結果、腹痛は治まった。
それで、施設に連絡して、迎えに来て貰った。
すると、終始お冠。
車椅子自動車を運転出来るスタッフが医療機関の送迎をするのは当たり前。
で、彼は『送迎は通院の場合だけで、今回は特別で、別料金を頂きますので』と捨て台詞。
普通に言って、普通に別料金請求すればいいことなのに。彼の言い分では「『介護タクシー』呼ぶか、普通のタクシー呼べばいいのに。」と言っているように思える。
初めから、こちらはタダでとは言っていないし、急場で介護タクシーはチャーター出来る訳もない。多分、社長に怒られたのだろう。
後に、私は彼に『こども店長』というあだ名をつけた。
彼は、介護にも一般常識にも、あまりにも無知だった。
1番目の支店長は、社長と喧嘩して辞めた。
本店店長とも折り合いが悪かった。
だから、突然の交代劇だった。
社長は1ヶ月も経たない内に後釜を雇った。
1人しかいない介護福祉士は、本店に転勤した。
彼女は見越していたのだ。
彼が来る前、1番目の店長が辞めた後は、本店店長が支店長と兼任していた。
後から聞いた話では、本店では、スタッフが充実していた。
1番目の店長が辞めた理由の1つに、私(当家)のこともあった。
その店長の前の店長が契約した、ネットの介護情報サービスの会社「み〇なの〇護」という会社の契約で、入居契約が成立したら、そのサービス会社から10万円支給することになっていた。その10万円の多くは、介護事業者から支払うシステムだった。
社長は、一方的に、そのサービス会社と解約させ、私に払わないことになった。
面接時、1番目の支店長はいなかった。理由をこじつけていたが、実は、0番目の支店長が解雇されていた。そして、1番目の支店長に払えないから伝えろ、と言って来た。
もう、私は、引っ越しの準備をしていた。今更他を探せないから、と焦った。
今にして思えば、それでも無理矢理他の業者に替えることも出来たのだが。
最終的には、私がサービスの会社に、介護施設との契約をキャンセルした、と嘘を言わせ、「クーポン出しますから」と言って、契約時に10万円引き算したが、それは普通敷金として徴収して、出て行く時に返して貰う筈の金だった。
詐欺だな、と思ったが、1番目の店長に同情して契約をした。
そして、2番目の店長赴任。1月2日に腹痛起こしたのは、夜部眠る前に「便が出にくい薬」を処方させていたことが分かった。
夜勤が少ないから、という理由で、被介護者を犠牲にしていたのだ。
訪問診療を行っている医師に直訴して止めさせた。
その後、質の悪い介護士が順次入って来た。
母のお茶飲み用ペットボトルに100鈞のストローを差し込んで使っていたのだが、何度頼んでも勝手に洗い、ペットボトルの水を飲みにくいようにストローを上にずらしたり外したりした。
どういうことにになるか。脱水症状である。トイレに閉じ込めて外のスイッチを切ったままにしたこともある。
当時はアクシデントと思ったが、後で考えると故意だった。
その頃は、ストロー付き水筒があるなんて知らなかった。
注意書きを貼り出したこともあった。
ハイソックスの履かせ方が悪い、脱がせたパジャマや衣類を放置したままだと私がフォローしなければいけなかった。妹は、何も知らないのに、支店長に味方した。
『担当者会議』が行われた時、彼は私を除外しようとした。
日頃から連絡を密にしていたケアマネは激怒した。
私を入れて会議することに抵抗があったのか、あからさまに席を外した。
『担当者会議』という名前から、彼は勘違いしていたのだ。『介護に関わる会社同士の連絡会議』だと。
実際は、ケアマネが中心となり、被介護者と被介護者の家族の前でオープンに会議し、本人や家族の意見や要望を尋ねる大事な機会なのだ。被介護者がいなくても、代理人である家族が立ち会う。彼は『素人』丸出しだった。
被介護者毎のファイルがジムスペース奥にあるのだが、車両式収納スペースの端のレールは埃が貯まっていた。
本店店長が、社長と喧嘩して突然辞めた。
その支店長は、本店と掛け持ちすることになった。
それで、益々多忙になり、怠け者介護士達の言いなりになった。
そこで、冒頭の台詞。
「嫌なら出てってくれていいんだよ。いつでも入居者あるんだから。」
奢りも甚だしい。半分以上は2番目の支店長が契約した入居者だし、母が入る前はガラガラだった。
私は覚悟を決めた。
ケアマネ推奨の、3番目のサ高住への準備をしながら、2番目のサ高住の片づけをした。
引っ越しは、親族がアテにならないから、便利屋さんに頼んだ。
その時の3番目のサ高住責任者のアイディアで、2番目のサ高住から、通所しているデイサービスに母を迎えに来て貰い、2番目のサ高住からの引っ越しを行い、3番目のサ高住のセッティングを行い、デイサービスから3番目のサ高住に母を送って貰った。
前の晩は雨が降ったが、不思議とその朝は上がった。
母は『晴れ女』だった。
そして、入居半年後。介護情報サービス会社に『入居日』『退去日』を報告した。
2番目のサ高住施設は、介護情報サービス会社に契約違反で訴えられていた。
これで、裁判は施設側敗訴が決まった。
今まで『口裏合せ』をしていたのに、追い出してしまって、『口裏合せ』を無効にしてしまったのだ。
ご存じの通り、トップに立つ者は『後先考えて行動』が鉄則だ。
そして、客商売なら、お客あっての商売と考えるべきだ。
何度も来た、嫌がらせFAXは、この件の怨みだろう。
因みに、私の家の電話回線は、電話、FAX、留守番電話、昔はインターネットにも繋いでいた『たこ足配線』である。
FAXを自動受信は出来ない。前もって連絡を貰って、手動切り替えしないといけないのだ。
介護生活は、『裏切り』の歴史。
3番目のサ高住は、親族なしで決め、引っ越した為か、3年半いた施設に妹が現れたのは、たった2回。2回目は、母が妹を覚えていなかった。私が来る前の時間を知った上で現れた妹は泣いて帰った。コロナが流行る前だった。思い出すまで待てば良かったのだ。
私がやらせていた算数のドリルは、いつも100点だった。
老人性ボケは「認知症」ではない。
母は亡くなった。
仏壇の横の額縁の母は「あんた、誰?」と妹に語りかけただろうか?
―完―
※「介護回顧ー病老介護」で書いた事実と重なっております。
裏切りのない物語 クライングフリーマン @dansan01
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