転生して最強になったけど現地人はもっと超最強でした………(泣
鮫島竜斗
第一話 ハリボテの最強無敵
俺は最強無敵だ。
無職引きこもりの『三島勇気』は死んで、この世界に転生し、『アルベルト・カレイド』となって以来、俺の『三仮現体』――肉体、アストラル体、エーテル体――は、この世界のあらゆる攻撃や法則を寄せ付けない堅牢無比を誇っている。そのどれもに傷一つ付けるのは不可能だ。
俺の魔力は、この世界の魔術師が持つ汎用的な魔力とは一線を画す、色付きで特別な性質を持つ。そしてその量と質は、俺が取引で差し出しているものと到底見合わない、極端に優遇されたチートだ。
俺の隣には、穏やかな笑みを浮かべるマリアがいる。魔術師最高位の第三団『S・S』の最高位〈イプシシマス〉、アテュⅢ『女帝』。俺の庇護者だ。
「アルベルト。今回もまた、あなたの力は光速で惑星一つを鎮圧しましたね」
「当たり前だ、マリアは超世界の媒介次元の損壊した壁を魔力で修復してる?らしいが。さっき俺はその壁殴って壊してた神の名を騙る星を食らう巨大なドラゴンという、とんでもなくヤバい存在の『魂の核』を、軽く素手で握り潰してやっただろうが」
俺は不敵に笑う。
「俺も取引自体はしているが、おかげでこの世界の魔術師のように、超世界の神だの天使だのに媚へつらっていちいち相応の贄を差し出すような手間がない。この世界は、俺にとってただのハリボテだ、つまんねーなw」
そこでマリアは、いつものように静かに忠告した。
「ですが、アルベルト。その『見合わない特権』は、世界の均衡を破っています。そして同じく世界の均衡を乱せる者に、その特権の枠組みの外から攻撃される危険は常に存在する。
俺は、彼女の忠告を遮るように笑った。
「わかってるさ、マリア。だが、その『枠組みの外』なんて、この星には存在しない。お前の忠告は、いつものように杞憂だ」
俺はそう言って、マリアの警告をいつものように無視した。俺の最強は、世界のルールを出し抜いた特権に基づいていた。
その時、空間それ自体がガラスが割れるように『割れた』……?
来る……! 今まで感じたことのない、世界の理を無視した『歪み』?なんにせよ、どうにかなる俺はチートなんだからな……!
俺は、最強の本能が警告を発するのを感じた。
「やれやれ……『チート最強無敵野郎』くんの慢心は、脆いねぇ〜」
裂け目から現れたのは、アテュⅠ『奇術師』の魔術師『12』
「お前……!」
俺は、反射的にその存在どいう存在者で、『12』という名前であると感づいた。なぜその数字なのか、理屈はわからない。厳密に何もわからないだが、しかし、ソイツこそが『12』だ。
「なんだ……お前……消えろ……!」
俺は、俺の誇る傷一つ付けられない身体と、特別な魔力での魔術による一撃を放った。これで確実に、そう確実に葬り去る。……だよな?
しかし、その一撃は『12』に届く直前でありえない無効化のされ方をした。
「たかが『三仮現体』粗雑な
『12』はニヤリと笑う。そして、次の瞬間、俺の全身を、存在の根源を揺さぶるような痛み、感じたことのない不快な痛覚が全身を貫いた。
それは、肉体への物理的な痛みではない。俺の『三仮現体』は無傷なのに、その連関が動物磁気を媒介につつかれるように揺さぶらせ崩れていく、そんな意味不明な苦痛の感覚に
なんだ、これ……! 俺の構造そのものが、内側から分解されているような……!理屈は全くわからない、が、これが「心」を直撃する……!
最強たる俺の『三仮現体』は無傷だったが、その「相互作用の関数関係」が崩壊したことで、心に致命的なダメージが走った。のか?まさか?!そんな芸当できるはずがない。理論上はありえる、しかし、それは、いちいち相互作用の関数関係を撹乱してながら、望みの効果をだす複雑で緻密な計算……数学の暗算で例えれば、一つ一つすべて大型コンピュータが処理するような長大な方程式……しかも右手で複素解析、左手でベクトル解析の解の導出計算を右手と左手で同時に手計算で行い、さらに別の線形代数を口で計算をしながら、頭の中で全く別の関数解析を平然とあたりまえのように暗算するような芸当……いや遥かそれ以上だぞ!?ありえるはずがない!神業……じゃねぇあか…………。
「う、あ……ぐぁあああああ!」
俺は膝をつき、そのまま地面に額をつけそうになりながら、激しい動揺と恐怖に支配された。
『12』は淡々と告げる。
「残念だったな、
俺の目に、情けなさと恐怖の涙が滲む。俺の最強は、所詮、「構造」を支える「心」が弱い、見せかけだった。
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