第二話 真の超最強の現地人たち

俺は……心が折れた。肉体やアストラル体やエーテル体が如何に頑強であろうと、堅牢無比であろうと……その3つの三位一体トリアーデの関数関係を揺さぶられたら、俺では……持たない。心が持たないんだ。


 心。それは霊性。それは、肉体とアストラル体とエーテル体の相互作用の自己創造オートポイエーシス。関数概念でありその自己創造の形態として『肉体』『アストラル体』『エーテル体』の『三仮現体』は架構的に実体を得る。ようは身体となその三つの相互作用そのもの自体ってことだ。


「…………戦えない。怖いんだ。臆病な。俺を許して……くれ」


 もう地面に膝も額もつけてうずくまるしか俺に出来そうもない。すまないマリア……いつも通りお前の期待に応えそうもない。俺はクズだ。薄々気づいていた転生してどれだけ最強無敵になったて、所詮はハリボテ、ハッタリ、造り物、三島勇気という男は……根本的に弱いんだ。


 俺は情けなさと恐怖で涙を流した『アルベルト・カレイド』としては始めてだが……『三島勇気』としては何度目だろうか……そんな現実逃避をしていると


「ふん……!なるほど第三団『S・S』の最高位〈イプシシマス〉のXXⅠ座の一角ともなれば……『チート最強無敵野郎』を下す一手など、指すのは容易いと……」


 マリアは、そう言うと。いつもなら絶対にしない世界を喰らいつくすように野蛮な笑みを浮かべて


「ひさびさだ。本当にひさびさだよ。『本気の殺し合い』を愉しめるなんて五百年ぶりぐらいか?いやー感謝感謝……っと」


 え……マリア?どう…した?の?


 するとアテュⅠ『奇術師』の魔術師『12』は訝しげに


「観察していましたが……アテュⅢ『女帝』〈三女神〉とは思えない……発言ですね?……まるで〈殺された神々〉のような発言……ふふ、ハッタリですか?たしかにアテュⅠ〈三神IOA〉と〈三女神〉は……こと戦闘に関しては勝ち目がないですか……いや?そもそも……ああ」


 『12』


 は納得してうような素振りを見せると同時に


「一度でも言ったか新参者。たかだか三百年〈イプシシマス〉にいるだけの青二才が五千年間〈イプシシマス〉に居座る私の何を知る私の真名は『24』……マリアだの『女帝』だのはオメーみたいに〈イプシシマス〉は皆、同格だと思い込んでるガキをブチのめすための撒き餌つまり、嘘」


とマリアが言い終えた、その


 その瞬間


 割れた。


 何が?


 空間が、だ


「私はアテュⅩⅢ『死』だ」


 当然『12』は割れた空間の渦中。どんな肉体、アストラル体、エーテル体だろうが重大な損傷がなのに……ニヤニヤ笑って


「貴女と俺が同格……?ジョークとしても不出来ですね……なあ?格下が」


 割れた空間を『12』は


「さあ、どうしたら老いぼれ〈イプシシマス〉に制裁を加えるか?居座る時間しか誇るもののないババアが図に乗るなよ、お局様よぉ」


 『12』はというと


「たしかに……空間に亀裂を入れればどれだけ頑強な『三仮現体』でも損傷する。で?そんなものは『霊体』という自己創造オートポイエーシスのプロセスそのものを掌握する俺に通用」


 マリア……『24』は


「しないな、そもそも『三仮現体』それ自体が相互作用プロセスの結果の現象でしかない。その相互作用プロセスまあ、自体創造オートポイエーシスを調整すれば肉体、アストラル体、エーテル体の損傷なんぞどうとでもなる。が、あえて派手な魔術を使った、お前は気付けない……仕掛けに、今はな」


 と言うと


「ええ、永久に気付けないでしょう?魂それ自体が抹殺された者との対話は


『12』の挑発的な態度に


「やれやれ本当に『水星』の加護や寵愛を得てるのか?愚劣な……よく見ろ、お前の魂のプロセス。自己創造オートポイエーシスを」


 とマリアは挑発を返す。


「…………」


 『12』はすこし驚いたように


「なるほど、霊体プロセスの干渉への魔術陣の形式系がすこし……破損している、うんアテュⅩⅢ『死』というのはハッタリじゃないと、〈殺された神々〉の三つ組の資質持ちしか魔術陣の形式系つまり魔術の言語そのものへの介入はできない。流石に〈殺された神々〉の『資質』である『第一物質プリマ・マテリア』の『蒸留過程』の『魔術師』だ、で?」


『12』の嘲り混じりの解析に


「ああ、分かってる無駄にある手札からカード一枚を剥奪したから図に乗るな、と?そりゃそうか形而上と形而下の直接的無媒介の接続と干渉……人間離れしてる神業、を軽く呼吸するようにやってのけるやつだが底なわけないな、だな?」


 このマリアの余裕綽々という返し、そして


「もちろん〈イプシシマス〉ともなれば自己の『トートの書』に記された七十八枚すべてがだ、当然理解している私も〈イプシシマス〉だ、からな」


と続け、それに対し『12』は


「というわけさ、たかだか『コートカード』の『棒の王子』を一時的にしたぐらいで」


 返すも、さらに返す刃でマリアは


「イキがるさ、若造、今の私のは『トートの書』の魔術なんかじゃない。つまり個性ペルソナ化されてないオリジナルの〈イプシシマス〉に相応しい魔術なんかじゃなくて、でお前は多少とはいえダメージを受けた、分かるかこの事実に?」


 『12』はその事実にたいして動揺さえ見せずに


「……………なるほど伝説が本当なら『ハイザイン体系』。あの発表された三万頁はあるであろう論文は『序論』だけであった。それの『本論』が完成したと?」


「魔術師の上から下のすべてつまり、最下層の〈修行者〉から最高位の〈イプシシマス〉まで、宮、惑、元、球の悪魔、自然霊、天使、天使長、神の名まで〈ハイザイン〉これはわかるだろ?教科書にも乗ってるこの超世界の魔術の根源的超存在から魔力をしないと、つまり何かを差し出さないと魔術は使えない……『本論』は完成試行錯誤の途中なぜならな、宮の自然霊『完全従属契約』は締結できてない、からな」


 『12』は哄笑して


「ふふ……あははは……ハハハハハハハハハ!!まさか!?全魔術師の一つの夢である〈ハイザイン〉からの魔力の無償提供……つまりノーコストで魔術行使ができる……と?ありえないな、誇大妄想症は魔術師にふさわしい態度じゃあない!堕ちたな〜!え?」


「ならよく観察しろ老眼鏡かけるには早すぎるだろ小僧、宮の自然霊から頂戴したこの魔力を……よーく目を凝らして、そして扱うことは魔術の陣も唱も印も一瞬たりとも見逃すな、言い訳は許さんぞ」


 マリアがそう言った。


 次の


 瞬間


 ゆっくりと、水が、徐々に、鋭い、尖った、槍、に変化する。


「……おいおい、うん、へぇー、本当だ、わ」


 『12』に水槍が高速で衝突する。がそれを掴み地面に叩き潰す。


「なら、宮の自然霊の魔力の量ではどうしようとない、そういった質違うの魔術を行使すれば問題ない、まるでな」


 宮とは惑の力のフィールドだ、その自然霊となれば必然的に理屈が正しければ物理法則的に干渉する魔術となる。つまり


 『12』は自らを形而上学的理念へと存在様態を差し替える。つまり自然世界からおさらばした……?


 声が響く


「こればっかりにはアテュカードを切らせてもらったよ、しかも0番『愚者』をね……流石だね、で?さあ?どうする?今の俺は時空間なりその内容物をどのように操作してもだ、なぜなら時空間内に当の俺はからな」


 声は空気でも動物磁気でもなく、世界そのものを震わして霊体に直接干渉してことにしている。そんな芸当を『12』は出来るというのか?


「やれやれ……ようやくスタートラインに立ったな」


 マリアは舌なめずりをして


「ハンティングは相手が強すぎては趣味として成立しない。が、弱すぎても成立しないんでな」


 そうして魔術師としての全てを極めた者どうしたの人智を遥かに彼方に置き去りにした神々の黄昏の如き、真の頂上決戦の一幕が始まる。

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