首狩り、モーニングルーティン
@AsuAsaAshita
首を狩られた
首を狩られた。
母に、朝、突然。
ああまただ。これは初めてではない。
そう、僕は何度も首を狩られている。首を狩られて殺されている。そして、殺されて絶命した直後にまた同じ日の朝に戻っている。
僕の首を切り落とす人は毎回違う。ある日は友達、ある日は店員、ある日は配達員。そういうことだ。その事実は僕だけが知っている。
なぜ、首を狩られるのか。なぜ、朝に戻るのか。
全く分からないし、意味不明だ。でも、そうなる。そうなってしまう。
ならば、首を狩られぬようにしなくては。もう死ぬのはごめんだ。
そうして朝、僕は学校へ行く。どんな風に殺されるのか、それを把握したい。そう意気込んでいると横を通り過ぎたクラスメイトに首を鉈で切断された。
起きた。
つまりいつ殺されるのか、どういう方法なのかまったく見当がつかない。そういうことが分かった。そんなことが分かってもどうしようもない。
どうすればよい?
どうすればこの円環から脱出できる?
そして何回か殺されたあと、ある考えが浮かんだ。
僕が首を狩った場合どうなる?
何も変わらないのか?それとも何かが変わる?どうする?やってみるか?
悩んだ結果僕は実行することにした。斧を購入し、街を歩く。鞄に入れて。
人々が歩いている。誰にしようか。だが、できるのか?斧を使って人の首を落とす?やったこともない。それに、それに人を殺すなんて。
手が震える、足が竦む。
鞄の中の斧の重さが、鉛のように僕の全身にのしかかる。殺意なんてものはない。ただ、この不条理な地獄から抜け出したい、その一心だ。僕は狂っている。このループが僕を狂わせたのだ。もしここで引き返せば、また母に、友人に、見知らぬ誰かに、首を落とされる。あの血と痛みが、そして目覚めの絶望が、また繰り返される。
心の中で何百回も謝罪を繰り返した。
でも、そうしないともうどうしようもない。
僕は電話をしている会社員の男に目をつけた。痩せていて、首も簡単におとせそうだ。ターゲットを探す自分に嫌悪する。
僕はその人の後をつけた。声が聞こえた。電話の向こうから、女性の声が聞こえる。楽しそうに話している。
今から、この人を殺す。この幸せを、この人生を、僕の脱出のために奪う。だが、もう僕はおそらく心が参ってしまった。
やるしかない。
僕は斧を振りかざし、その人の首を切断した。狩った。鮮烈な血の噴出と、地面に転がる首。そして、その絶叫が途切れた瞬間、
どうだろう。次の瞬間朝に戻っていた。失敗したのか?そう思った。
しかし、その日、首が狩られることもなかった。
当たり前みたいに、次の日が来た。
僕は歓喜した。終わった、終わったんだ。やっと普通の日常が帰ってくる。平和だ。
_____________________________________
首を狩られた。
後ろから誰かに。
俺は普通の会社員だった。妻も娘もいて幸せだった。だが、ある日に、後輩から首を狩られてから、その日の朝に戻った。
ずっとこれが繰り返される。
そして今日も、電話中に首を狩られた。
まただ、いつになったら終わるんだろう。
首狩り、モーニングルーティン @AsuAsaAshita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます