「かわいい」という言葉
島尾
かわいいについて
先日、地下鉄のホームのベンチに腰掛けてドトールのカフェ・オ・レを飲んでいた。そのときふと顔を上げると、3歳児と思しき人がその指を吸い、小首を傾げ、こっちに興味を向けていた。私がペットボトルから口を離して顔を上げた瞬間目が合った。久しぶりにこどもをかわいいと思った。しかしその人はすぐ両親に呼びつけられ、私のもとから去った。なぜ私を見ていたのか。その理由はドトールのロゴがかわいかったからだと後々分かった。もし私がバーコードと原材料表示の面が見えるように持っていたら、その人は私のすべてに興味を持たなかっただろう。
それはそうと、かわいいという言葉で済ませるのは昔から嫌いである。可能な限り別の言葉で表現しようと努め、自分の感覚により合致する言葉の組み合わせを見つける。ここには一種の喜びがある。かわいいと一括りにすると、何がどうかわいいのか分からなくなる。3歳児とドトールのロゴはどちらもかわいいが、まったく別の感覚である。また、猫や犬をかわいいと表現して済ませるのも自分は許せない。猫を取っても、どんな毛色、姿勢、どこにいるのか、天気はどうか、時間はいつか、等の一見不要な情報が実際はかなり重要な意味を猫に付していると思う。
ほかにも例を挙げればきりがない。だがバスがバス停に着きそうなのでここで書くのをやめる。
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