似たものどうし。
@sakunaga
二人の傷
中学生の頃の僕はいじめられていた。勉強は少しだけ得意で、友達は多くはなかったけれどいつも友達と過ごしていた。そんな僕を妬んだのか、いつからか友達が減っていき、僕は一人になった。今考えれば僕は友達というコマのひとつなだけだったのかもしれない。僕が知らない間に僕の悪い噂は流れ続けていた。時が立つと周りから視線を感じるようになった。今までかかわることのなかったクラスメイトから軽蔑されていた。担任に相談しても信じてもらえなかった。いじめっ子は表と裏があって、表ではいつも優等生のふりをしていて、テストの点数が少し悪くても評価はよかった。担任はいじめっ子を信じ切っていて、僕に嘘つきのレッテルを貼った。
いじめっ子の彼とは反対に僕は点数が上がっていっても評価は悪くなっていった。
高校はそんな彼らとは別の学校を選んだ。彼らとはもう関わりたくなかったし、偏差値の高い学校だったのもあって自然と別々になったのだろう。
担任には何度もやめておけ、と言われた。担任は僕が性格が悪くて努力している人間を軽蔑していると思っているし、そんな担任のせいで成績が足りなかった。それでも僕は目指した。
3月、努力のおかげで合格した僕とは違って、彼は高校には行けなかった。僕は3学期の間、彼のいじめの証拠を残し続けた。彼が目指した私立高校に証拠をまとめて送ってみたら、彼の合格は取り消しになった。怒った彼はやり返そうと僕の目指している高校に悪い噂を流そうとしたが、証拠がなく相手にされなかったみたいだ。
担任は驚いていた。僕が2月に証拠を送った時、担任にもその証拠を見せ、担任はすぐに謝罪した。
どんな気持ちだったのだろうか。今まで優等生だと思っていた自分の教え子が最低の人間で、最低の人間だと思って評価を下げ続けてきた教え子が実は被害者であると知ったら、きっと青ざめるに違いないだろうと思っていたが、顔を見る気にもならず結局どんな気持ちだったのかわからず終わった。
彼は最後まで僕のことを恨んでいた。けれど担任が味方ではない彼が僕に対して妨害ができるわけもなかった。クラスメイトも担任の説明によって謝罪するもの、驚くもの、青ざめるもの、人それぞれだった。この頃から、僕には人には言えない悪さを秘めた一面があるのだろうと自覚し始めた。
彼は卒業の数週間前に不登校になった。僕と違って彼には1カ月の孤独も耐えられないみたいだった。ある日の放課後、彼の親が学校に来て、担任を怒鳴りつけていた。僕を見ると近づいてきて大きな声で僕に怒鳴りだしたが無視して家へと帰った。
彼によっていじめられたことで僕には深い傷が残った。けれど、彼に対しての復讐が少しだけその傷を塞いでいた。
私には弟がいた。私よりも8歳下でとにかくわがままだった。弟ができるまで母や父の愛情を受けて育ってきたはずなのに、弟ができてから家族は弟のことばかり考えて私は空気のように扱われた。
何をするにも私が姉だと言い聞かせて我慢しろと言った。
新しい文房具が欲しいと母にいえば、弟のおもちゃを買うから我慢しろと言われた。友達と遊びに行きたいといえば、弟を病院に連れて行くから留守番をしていろと言われた。
私が風邪を引けば部屋で寝ていろと言われ、弟が少し体調を崩せば私を置いてでも病院に行った。
私が中学生になるとさらに弟の優遇は大きくなった。弟はこの頃になると身体が弱いことがわかって病院で生活していた。母はそんな弟に付きっきりになり、父は母の分まで働いていて家に誰もいないことがよくあった。母も父もいない家は静かで母が料理を用意していなかったのでほぼ毎日自分で作っていた。家のことをすべてしなくてはならず、美術部も辞めた。絵を描くのを諦めて家事をし続けた。美術部をいきなり辞めたことで友達は減った。
このあたりから何をするにも弟のせいで、と思うようになっていた。友達には弟のせいでと説明するわけにもいかず、家の事情だと話すといつの間にか私は学校で信頼してはいけない人間だと言われていた。どれだけ嫌われても勉強だけはしたいと思った私は学校に通い続けた。けれど私のことをよく思わなかった数人がいつの間にか私をいじめる側へと変わっていた。けれど、彼女らは絶対にいじめを表に出さなかった。表では無視をするくらいで物がなくなったり嫌がらせをされるようなことはなかった。しかし裏では私の悪口を広め、私に対しても暴言を吐いていた。ある時限界になった私が学校にスマホを持ってきて先生のところへ行こうとすると、彼女らは私を止め、スマホを投げ捨てた。父に話そうとしても、疲れたから今度にしてくれと何度も言われた。母にはちょうど家にいた時にスマホをなくしたことを伝えると怒鳴られた。とても不満げにしながらなんとかスマホを買ってもらったものの、機種はとても古く安いものだった。
スマホを無くしたことで今までの証拠も消えてしまって、先生には言葉で説明したが証拠がないからとまったく相手にされなかった。その日から必死になって投げ捨てられたスマホを探してやっとの思いで見つけると、たまたまその場所に現れた彼女たちにスマホを奪われ、私が自ら投げ捨てたと先生には嘘をついた。彼女らは先生に優遇されていたわけではなかったけれど、いきなり美術部をやめた私を信頼していなかったのか、彼女たちのことを信じ切って私のことを叱りつけた。その流れで親を呼ばれ、母には携帯をわざわざ買わせたのか、とその場で怒られ、父には家に帰ってから長時間説教された。
この時から私には居場所がないと悟った。そんな私の生きる希望になったのはとある高校だった。その学校の近くにはいとこの家があって、いとこはいつも私に一緒に暮らそうという話をしていた。高校に行くことよりも早く親から離れることを考えていた私は親に勉強していい高校にいきたいと言いながら、裏では家を出る準備を進めた。いとこの家であれば親の手続きを踏む必要はないし、親からも離れることができた。そんな好条件の場所はそこしかなかった。
高校はしっかりと合格し、制服やその他の物品の購入はいとこ同伴で終わらせ、学校には少し遠いことを理由にいとこと生活していると事前に連絡した。
入学式の前の日にどうせ親は来ないからと思い、念のためにいとこの家に泊まると言って家を出た。私がいとこの家に着くころにきっと私の部屋がもぬけの殻であることに気づいたのであろう母から大量の連絡が入っていたが、すべて無視していとことの2人暮らしを始めた。
もう両親とは会いたくもない。どうせ弟のことを理由につけて色々言ってくるだろう。さんざん傷ついたのにこれ以上傷つきたくはない。
似たものどうし。 @sakunaga
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