第2話 彼女の手にはネコのしぐさがありました
自分はやがて彼女の手にはちょっとしたネコのしぐさのような独特な動きがあることに気づきました。
自分が話をしていて「動き回って少し気分が悪い」と言うと、彼女は自分の額に置きました。ですがその時の手の動きが変だったのです。そういうことにある時気づいたのです。手のひらは返しているけれども、ネコみたいに微妙にかまえていて普通に返しきれていないように見えるのです。自分が見たのに気づいて彼女はすぐに手を引っ込めてしまいました。
「自分は手の動きがついへんになるので映像には出してもらえないからこういう写真の仕事につかってもらっている。食べていかなければならないのでここにいる。ここにくればなんとか食事代も出る。食べて寝るところがあれば何とか生きていける」と言いました。
しかしそれをのぞけばこんなところには不釣り合いなほど可愛い女性でした。
彼女と自分は会場の隅で丸まって寝て話をするようになりました。
そうしている彼女の体は本当にしなやかに見え、握る手はやわらかでした。
した。顔も頭も小さく形の良いものでした。体も小さくおりたたむようにしていました。
象牙のように色が白くて目も少し青みがかって長いまつげがあって寂しい顔もしていました。
昼間は厳しい目つきです。彼女に近寄る人はいません。
でも夜はおだやかで寂しい優しいまなざしになるのです。
彼女の母親は実演販売の仕事をしていてつきあっていた男が逃げたので怒って彼女に調理器具をぶつけたりしたそうですが、その体はごく奇麗に見えました。
彼女は少し手の動きがちょっとへんで体はしなやかで美しく夜は一人きりでした。そして自分だけには挨拶するのです。だから自分と彼女はいつも一緒にいるようになりました。
自分たちは全国どこに行っても仲間との何の集まりにも参加せず、ただコンビニで食べ物を買ってただ会場の隅で眠りました。それで十分だったのです。
我々はそのままに一緒にいれば幸せになったはずでした。
しかしそうはなりませんでした。
自分の人生は結局、ネコの彼女の人生と交わらなかったのです。
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