ネコの彼女と穏やかで魅力的な日々を過ごしましたが結局、自分が台無しにしてしまったのです だがせつない「ネコの音」はまだ鳴り響いているのです
そういち
第1話 ネコの彼女は美しいがなまけものでした
自分はもともと昼間の仕事をしていたのですが、夜の仕事に変わった時にそのネコの彼女に出会ったのです。
昼間の仕事を辞めた理由はこうでした。
ある時、仕事の愚痴を友人に話したら「おまえはもしかしてなまけものじゃないのか」といわれたのです。自分はひどく驚いてしまいました。
「なまけもの」というのはどうやってもまじめに働くことのできない人間のことです。それはある種の心の病気で本人がどう頑張っても決して働くことが出来ないのです。そういう人間が社会には必ず一定数いるのです。
そういう病をもった人間ではないのかとその友人は言うのです。
自分はまさか自分がなまけものとは考えていなかったので本当に驚きました。
本当にその通りかもしれないと思ってしまったからです。
昔からどこかだらしないと言われてきた人間だったからです。
規則正しく生活していると自分の中で何かが淀みます。
集団の中でそれなりの役目を果たしてまじめに働いていれば確かに皆から認められます。
しかしそれでは心が泣くのです。自分が無意味なプラスチックになったように思えてくるのです。
仕方がないので昼間の仕事を辞めて夜間の仕事をはじめました。
イベントのために徹夜で会場の舞台作りをする仕事です。
夜の仕事で若い働き手はいくらでも必要です。イベントは全国各地で行われるのでいつでもどこでも嫌がらずについてくる奴は重宝されるのです。
自分は一時雇いでしたがここで勤勉に働きました。不思議なことに夜間の仕事というのはちゃんと働いていてもどこか淀んでいられるのです。自分にはぴったりでした。自分は「なまけもの」でもちゃんと働ける方の「なまけもの」でした。「なまけもの」とはそもそも夜行性なのかもしれません。夜にこそ輝く、光を放つものなのです。夜行性の動物だった高貴な遺伝子を体の中に引き継いでいるのです。
そんなときに出会ったのがネコの彼女です。
彼女はイベントのために会場に来ていたアルバイトのモデルでした。会場でいろんな衣装に着替えて宣材写真撮影のため舞台に立つのです。
彼女は会場だった体育館の隅に置いてあった体育マットの上で寝ていました。
自分は近づいて行って話をしました。最初はこんなイベントのアルバイトモデルなのであまり綺麗ではないのかと思いましたがよく見ると意外なほどの美形でした。
彼女はネコ風の衣装を着ていました。黄色いうすいぴちぴちの水着みたいな服でした。彼女の体は小柄で細くてしなやかでその衣装にぴったりでした。
首にはネコらしく鈴もつけていました。そのせいで顔が小さく見えました。
皆がちょっと振り返るぐらい魅力的でした。
しかし彼女は仕事が終わると仲間と離れます。そしてそのまま隅で寝てしまうのです。
自分たちは気が合いました。彼女もなまけものの種族のようでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます