第4話 親方ポイント
「親方のステータスや能力については、その都度説明するとして──
当面のカギを握るのは“親方ポイント”だ。」
大吉親子二代に渡り使われ続け、ついには魂が宿った付喪神。
異世界までついてきた健気な相棒……その“
「親方ポイント? なんじゃそりゃ。
Bポイントとか極楽ポイントとか、その類いか?」
当の本人が、自分のステータスすら把握していないという、
実に困った状況である。
「う~ん……まあ似てなくもねぇけどよ。
重要度が“ダンチ”なんだわ。
親方がこの世界で生き残るのに欠かせねぇスキル【親方】の──
言わば燃料であり、元手でもあるんだぞ」
「こら、ノミ公。
てめぇの説明はまどろっこしくてかなわん。
もっとスパッと簡単に言えんのか!」
「おいおい……これ以上どう分かりやすくしろってんだよ。
まあいい、親方ポイントの重要さを理解するには、スキル【親方】の仕組みから説明したほうが早ぇな」
そう言って固有スキル【親方】について説明を始めようとしたちょうどその時、周囲の木々がガサガサと揺れた。
「ちっ、せっかくオイラの調子が出てきたところで横槍が入っちまったみてぇだな。
しかもおあつらえ向きに敵意むき出しの何かが現れたみたいだぜ。
親方、スキルの発動はオイラに任せな!
異世界デビュー戦──派手にかまそうじゃねぇか!」
ノミ公はどこからともなく**キィン!**と甲高い金属音を響かせた。
☆ ☆
木々をかき分けて姿を現した“大きな影”。
まるで小山のような図体。
天を突く牙を持ち、血走った目の──
巨大なイノシシの魔物だ。
動物……ではない。
まとった気配が明らかに“魔物”。
ノミ公はすかさず大吉のステータス画面を操作し、鑑定を実行する。
『フォレストボア』
・大森林に生息する魔物。縄張り意識が強く、侵入者を見つけると容赦ない攻撃を仕掛ける。脅威度C。
◆ パラメータ
項目 値
HP 600
MP ー
Power(力) 100
Intelligence(知力)20
Vitality(体力) 60
Agility(敏捷) 80
Dexterity(器用) 15
Luck(運) 20
Offense(攻撃力) 150
Defense(防御力) 55
スキル【突進】──攻撃力・俊敏1.5倍
「親方、見えるか? これが
まあ厄介ってほどじゃねぇが、HPはそこそこあるな。
転生したての親方よりは遥かに格上だぜ。
……と言っても、頑丈な親方にダメージなんざ入らねぇだろうよ。
練習がてらに“ゲンコツ”を何発か──
っておい! 話の途中で走り出すんじゃねぇ!!
まだスキル発動してねぇんだぞ!」
説明を聞く前に反射で走りだす大吉。
喧嘩っ早いのは生まれつきである。
「猪公め、ワシのゲンコツを食らえ!」
瞬く間に懐に飛び込み、拳を叩き込む。
「ヴヒィィ!」
不意を突かれた魔物が悲鳴を上げた。
親方の拳は、人間離れした**痛みを与える特性『痛打』**がある。
ダメージは少なくともひたすらに“痛い”のだ。
だがそれが逆効果。
魔物は怒り狂い、超至近距離から突進を繰り出す!
轟音とともに大吉の体が宙を舞った。
「の、のわ~~!!」
そのまま木へ激突し──
木が くの字 に折れた。
「だ、大丈夫かぁ!? 親方~~!!」
ノミ公が腰袋から顔を出して叫ぶ。
しかし心配したのがバカらしくなるほど、
大吉は木くずを払ってケロッと立ち上がった。
「おのれ
きついお仕置きが必要だな」
またも大吉は考えなしに挑みかかろうとする。
「だから待てって言ってるだろーーー!!」
とうとうノミ公の堪忍袋の緒が切れた。
親方に頭をガシガシ打ち付ける。
尖った金属なのだからたまらない。
「アチチチチ。おい何しやがる。
痛ぇじゃねーか。てめぇ血迷ったか!」
「話も聞かずに突っ走りやがって……ほんとどうしようもねぇ御仁だよ、親方は!
いいか、ただゲンコツでぶん殴ったって大したダメージにならねぇんだ。
スキルを発動してからじゃねぇと、魔物は倒せねぇんだっての!」
ノミ公は親方をキッと睨みつけ、諭すように続ける。
「つまりだ、ゲンコツかます前に“スキル【親方】の≪ゲンコツ≫”を発動させるのが肝心なんだよ。
……ほれ、今オイラが操作したから、もう殴っていいぞ!」
「最初からそれを言えってんだよ。おっ? なんだ拳が光ってやがる。
――カッコいいじゃねぇのよ」
大吉は満足げにニヤリと笑い、再び拳を振り下ろす。
――ドゴッ!
拳が魔物の頭へ叩き込まれ、
さっきとは比べ物にならない悲鳴が上がる。
「ブギィィィ!!」
明らかに大ダメージだ。
「よっしゃ効いてる! 間髪入れずもう一発だ!」
「おおよ! 食らえぇッ!」
大吉の拳がめり込み──
魔物はついに地に伏した。
「親方やったなぁ! 見事なデビュー戦勝利だぜ!」
「フン、ステゴロの喧嘩でワシが負けるわけがない。
まあ、今回はお前さんのサポートが効いたな。ありがとよ」
「あったぼうよ! オイラは親方の相棒だからな!」
こうして、
親方と鑿の凸凹コンビによる異世界初戦は、
見事(?)な連携で幕を下ろした。
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