第14話 戦乱呼ぶは欲ある者達
戦乱を呼ぶのはいつの世も欲を持つ者達だ。
その欲に呼応して様々な悪意や想いがめぐる。
ある者は名声をある者は永遠の命をある者は国を。
彼らや彼女らは暴君にもなり名君にもなった。
つまるところ欲は正しくもあり悪しくもあるのだ。
その心や願いをとある男は聖杯として産み出した。
あらゆる願いをかなえる願望の杯、それは最初は清い心の持ち主が扱い、多くを救った。
だがこの戦乱の世、歪み黒い願望を持つ王達の手に渡り多くの悪を為した。
やがてこの世の悪を統べる意思となり彼女は受肉をし魔性と神性を得た。
全ての悪を統べるものアンリマユ。だがその中には一筋の光があり、悪でありながらも善も内包する謎の存在。
長い黒髪に紅い瞳、褐色の肌に長身痩躯の美貌。
見るものはすべてを手に入れたいと願う絶世の美女ではあるが、彼女は誰にも靡かず、気にするのは一人だけ。
はじまりの悪魔ジョン=ドゥ。
あらゆる悪を楽しみながら善行もする謎の悪魔。
その悪の様に彼女は惹かれた。
あらゆる悪を楽しみ善を楽しみ。
勇者と英雄を産み出し時に魔王として君臨する。
あらゆる意味での絶対者。
優しくもあり残酷でもある。
そして彼を慕う者、敵対する者、恋焦がれる者、全てが生き物として素晴らしい。
彼は自らの流儀を知っている。
欲の在り方も知っている。
彼の世界は誰にも奪われる事はない。
その世界に惹かれ鼓動を動かしながら多くの心を知っている。
アンリマユは
あらゆる悪意を受け受肉した。
悪意の先にある愚者の記憶も
そのそこに沈む善意もわかっている。
人は悪に混ざれば悪になる。
だがその悪を善となればまた何かになれると知っている。
アンリマユは絶対悪とはいえない。
他の世界では絶対悪といわれていたらしいが。
はじまりの願いは真っ白なものだったから。
一筋の光の善意は悪意を浄化する。
彼女は悪意を扱いながら善意をも扱う。
彼女は神如きもの。
彼女は魔如きもの。
全ての欲をみすえ
その悪性を力にし善性を力にするもの。
世界を混沌にみたし
世界の欲を動かし
あらゆる種族を惑わせる。
欲望を産み出し消失し。
世界を動かす。
その中で心動かす悪魔にも目線を合わせ
回想をする。
ああ、自分は産み出されたまた一つの女であり、生命なのだと。
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