第4話仮定ダンジョンの発見

 ここが経験値効率が一番いい土地だな。ここを拠点とする! と言う事で、あれからまた暫く移動を続けていたんだけど、北に向かって行っても、魔物が弱くなる地点に到達した。なので、ここを狩場として行動する。とりあえず、俺の領地を何とかしないといけない訳だから、ここから円形にグルグルと回って良い感じの場所を見つけないと。というか、ここが一番いい場所なんだけど、まさかのワイバーンの住処だとはなあ。流石にここに国を作る訳にはいかないだろう。もっと良い場所があるはずだ。まあ、経験値はもの凄く美味しいんだけどね。ここに1か月くらい滞在したら、VITが反転するくらいには経験値が稼げる。ここは良い場所だ。こういう魔物が沢山居てくれると、一気にVITがプラスになるんだけどな。流石にそこまで上手くはいかないと言う事で。


 で、それでグルグルと回っていたんだけど、思ったよりも森が東西には距離が無かった。というか、人里を見つけた。……なんでこんな場所にあるのかは知らないけどな。南の方が住みやすいとは思う。なんで神様はそんな場所に人を生み出したのか。それが解らない。それか、南側にも国があったのかもしれないけどな。……近づくことはしない。俺はレイス。魔物だからな。ただ、何というか、北の森がどんどんと狭まっているのが解る。とにかく探知を広げて地図を作っているんだけど、かなり巨大な国が東西に分かれている。それを隔てるように、森があるんだよな。ただ、そこから先が、海なのかね? 一気に塊がなくなるんだけど。海は朗報だな。森が海岸線まであるのであれば、そこまで何とか気付かれないように国を広げていきたいな。塩は欲しいし。まあ、最悪は、どちらかの国と交渉して、塩を分けて貰うと言う事でも良いとは思うが……。それは最終手段だな。そんな感じなので、国を作るのであれば、海に近い方が良いとは思う。が、それ以上に謎なものが探知できているんだよな。何というか、空間がねじ曲がっているような感覚があるんだけど、……これは一体何なんだ?


「まあ、調査にはいかないといけないよな。何かがあることは解り切っているんだし」


 目的の場所は、北に真っ直ぐ向かったところにある。変な場所なんだよな。何が起きているのかが今一つ解っていない。最大限の警戒をしつつ、特攻すると、そこには遺跡のような建物があった。……人が住んでいるとは考えにくい。遺跡はあれども、それは明らかに森に呑まれているからな。


「こういうのは、男心が擽られるよな。行くしかないよな。いざ、探検だ!」


 遺跡の中に入ってみる。特に変わった様子は無さそうではあったが、奇妙なものを見つけた。地下へと続く階段だった。古めかしくも新しいそれは、とてもとても冒険心を擽ってくる。そして、中に入ると、異様な空気で満たされた。探知は何かに邪魔をされて、壁を通り抜けようとしても、一定以上は進めない。地下にある何かに似た性質がある。


「……いや、道は続いているんだが、探知が変な感じだな。道に沿っては探知できるみたいだが……。そもそも外とは繋がっていない?」


 一度外に出てみると、やはり何かがおかしい。空間が捻じ曲がっているのは解るんだが、どうにも解らない。そして、階段の先には、外からでは侵入できない。なんなんだろうか? 誰かの隠れ家か? それでもいいか。とりあえずは探索しよう。


 奥へ奥へと道を辿って飛んでいく。ゆっくりとだ。壁の向こう側に不可視の壁が更にあって、緊急回避が出来ないようになっている。外との繋がりも階段を除けば無いし、どうなっているんだろうか。


「……魔物の反応? なんで魔物がこんな所に?」


 まあ、いいか。魔物が潜んでいることは解ったんだから、そこまで行くべきだろう。どんな魔物なのかと言われれば、非常に弱い魔物だ。それこそ、初めて俺が世界に降り立ったというか、転生してから初めて出てきた場所の魔物よりも弱いと感じる。この場所の付近の魔物よりも弱い。なんでそんな弱い魔物が住んでいるんだろうか。とりあえず、調査続行だ。


「……あっさりと倒せたな。弱すぎるくらいだ」


 遭遇した魔物は、あっさりと倒せた。何事も無かったかのように、あっさりと。ただ、そこからが奇妙な事が起きた。魔物が姿を消して、魔石だけが残った。なん、だと?


「死んだ魔物を食う魔物か? いや、そんな事ってあるの……!? ダンジョン! ダンジョンの可能性があるのか! そうかそうか! これは良いものを見つけた。ダンジョンか。町の中心はここだな。ダンジョンなら話が早い。そうか、それなら色々と納得がいく。空間が捻じ曲がっていることも納得だ。そうか。ダンジョンがあるのか。そして、それを見つけた訳だ。……問題は、ダンジョンと分かったのはいいが、どうやってこれを攻略するのかだよな。とにかく、下へ下へと進んでいけば良いのかね?」


 ダンジョンと言えば、無限に続く訳でもなく。この世界のダンジョンがどんなものなのかは知らないが、一般的には、最奥の間に、ダンジョンコアがあるとされている。それを手に入れることが出来れば、一攫千金も夢じゃないとは言われているな。まあ、別の創作の話にはなるんだけど。この世界のダンジョンがどういう風になっているのかは知らないからな。だけど、攻略されていないと言う事だけは解る。攻略されていないのであれば、攻略してしまっても構わないんだろう? 色々と想像が膨らむな。ダンジョンという確証がある訳でもない。だが、ダンジョンでないと説明がつかない事もある。魔物が消えるなんて、それこそ、ダンジョンの特徴じゃないか。まあ、別の似た何かという可能性も無きにしも非ずなんだけど、それでも調査を続けないとな。


 そんな訳で、予定を変更して仮定ダンジョンの攻略をしてしまう事にした。ダンジョンとは何か、それも解っていない。それでも突き進めば、何かしら解るというもの。楽しい楽しい探索だ。こっちはレイス。アンデッドだ。そして、馬鹿みたいなHPがあるんだ。簡単には死なない。探索を続けよう。何かしらのお宝があるかもしれないしな。どんどんと進んでいこう。


 VITの為の経験値は良いのかという疑問はあるだろう。それはもっともな話ではある。が、好奇心には勝てない。楽しい事は抗えない。ダンジョンを探索しよう。最下層まで探索しよう。もっと深い場所にいかなければならない。そして、案外、ふふふふふ。もしかしたら、もしかするかもしれないからな。ダンジョンとは何か。それは誰しもが考えることだ。だが、ダンジョンにも幾つかのパターンがある。確定でこれだという確信は無い。だが、あの状態がダンジョンだとすると、俺は楽しい事になると思うんだよな。


 1回攻略されてしまえば、また何処かに飛んでいくってパターンもあるんだよな。そうなったら面倒ではあるんだけど、ある可能性に賭けている。そうすれば、ここを拠点にしても何も問題がない。寧ろ、ダンジョンがあるんだから、拠点に相応しいまであるんだ。ダンジョン都市なんて珍しくも何ともないとは思うからな。ダンジョンがあるなら、色々と出来ることが増えそうだ。しかも、ダンジョンを上手く利用できれば、もっと色々と出来ることが増えるんだよ。


 良い事じゃないか。ダンジョンが、理想のダンジョンなら、話は一気に変わってくる。理想のダンジョンでなければ、それはそれでいい経験になったと思うしかない。そうしたら、普通にVITの経験値になって貰うだけなんだから。さあ、このダンジョンはどういう形式なんだろうな。

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