私の好きなもの
せおぽん
私の好きなもの
ヨシトくんを見つけたので後ろから抱きつく。
両腕を廻してヨシトくんを捕まえたよ。
「栞ちゃん?」
ヨシトくんは私の名前を呼んで、私の方を向こうとする。私はヨシトくんを捕まえたままヨシトくんの後に廻る。
「ヨシトくん」
「栞ちゃん」
「ヨシトくん」
2人でクルクル回ってる。
「危ないよ」
とヨシトくんが言うので、クルクルを止める。ヨシトくんの前に回って、彼を見上げる。優しい顔。私は手を伸ばしてヨシトくんの鼻を摘む。
「変な顔だね」と私は笑う。
「可愛い顔だね」とヨシトくん。
へへ。照れちゃうよ。
ぴゅうと、冷たい風が私たちをひやかす。
ヨシトくんが私の手をとる。
「寒くなって来たね」
「うん」
私はヨシトくんに握られた手をヨシトくんの上着なポケットに差し入れる。
「危ないよ」
「ゆっくり行けば大丈夫だよ」
コンビニの自動ドアが開いて、メロディーがなる。
ちょっとバージンロードみたいじゃない?
私はヨシトくんの顔を横から見上げて、ちょっと未来を想像するのだ。
ーーーーー
コンビニ。
揚げ物の匂い。
中華まん。
おでんも始まってる。
今日は休日で、午前9時。ヨシトくんのお家に遊びに行く途中で、ヨシトくんを掴まえた。
ヨシトくんは、雑誌コーナーに行きたいみたい。私はヨシトくんを離して、グミコーナーで立ち止まる。
私は、ブドウ味のグミが好き。
「栞ちゃん。ブドウ味のグミが好きだよね」
ヨシトくんが、私の後ろから頭越しに離しかけた。ヨシトくんは私の事をなんでも知ってる。私の好きなものも。
「ヨシトくん。本買うんじゃないの」
「後でね。せっかくの休みだからずっと一緒にいたいんだよ」
もう。私もだよ。
私は、ヨシトくんに抱きつきたかったんだけど店員さんが変な目で見てるのでやめた。
ーーーーー
ヨシトくんと並びながら、ヨシトくんとコンビニを探索する。
かごには、ブドウ味のグミ。今週のヤングジャンプ。雑誌コーナーから左にターンしてスナックコーナーへ。
「お菓子は?」
「大丈夫」
私は、朝の鏡で見たアゴのニキビを思い出して断った。ヨシトくんは、小さいプリングルスをひとつとってかごにいれる。また、私の好きな味。
パンコーナー、スイーツのコーナー、カップドリンクのコーナー。かごの中には、ヨシトくんの好きなものと私の好きなもの。私はかごの中を見て、ヨシトくんに腕組みをする。店員さんの変な目なんて気にしない。ヨシトくんを捕まえて離さないぞ。
「栞ちゃん」
流石に、レジ前は恥ずかしい。ので、ヨシトくんから離れる。バーコードが商品を読み取る音。ピッ、ピッ。
「それ、テープ貼ってください」とヨシトくん。テープが貼られたのはブドウ味のグミ。
「はい。栞ちゃん」とそのグミを私に渡す。
もう。私は子供じゃないんだよ。
私は、ぷうと頬を膨らました。
ヨシトくんは、頬を膨らませる私を見て愛しそうに笑った。
私の好きなもの せおぽん @seopon
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