第17話 死亡フラグイベント改変

「―それで? レシアーナ、その子達は?」


 レシアーナの婆ちゃんこと、ツィオラは訝しげな顔で両腕を組みながらそう口にする。レシアーナとお揃いのいかにも魔法使いといった大きな帽子に服装……どうやら、レシアーナの服はこのツィオラのお下がりか何かだったみたいだな。


 そんなツィオラの言葉に、レシアーナは苦笑いを浮かべつつ答えたのだが―


「あ、はい。この人達は……すいません、誰なんですか?」


 だが、途中で俺に顔を向けながらそう尋ねてきた。まあ、無理矢理連れて来たしな。


「俺はシュウと言います。実は街の外でモンスターと戦うために魔導師を探していたんですが、街の噂で魔導師が店をやっていると聞いて、それでその店に居たレシアーナを誘ったんです」

「街の外でモンスターと……? って言っても、あなた達まだ子供じゃない。どうして、わざわざそんな危険なことをするの?」

「まあ、それは色々事情があるんですが……俺達は孤児院に住んでるんですけど、生活が厳しい状況で、それでモンスターを倒して素材を売れば少しは生活に余裕ができるんじゃないかって考えているんです」

「孤児院? そう……しかし、子供がモンスターと戦うのは危険よ。気持ちは分かるけど、他の方法を探した方が良いわ。事情が事情だし、私も何か手伝えることがないか考えてあげるから」


「気持ちは嬉しいですけど、他にもレベルアップ……じゃなかった、強くならないといけない理由があるんです。だから、稽古だけじゃなくて実際にモンスターと戦って強くなりたいんですよ」

「強くなりたい、ね……でも、それならなおさら今は危険な状況だからやめた方が良いわ」

「え? どういうことですか?」


「実は街の近くで凶暴なモンスターが暴れ回っているらしいのよ」

「え? モンスターが?」

「ええ。『バジリスク』というモンスターなんだけど……本来はこの辺りに生息しないはずのモンスターなのよね。だから、街の外に出るにしてももう少し先の方が良いと思うわ」

「うわ、『バジリスク』か……あの毒やっかいなんですよね……」

「ん? 『バジリスク』と戦ったことがあるの?」

「え? あ、あ~、あはは……いや、まさか、そんなわけないじゃないですか」


 しまった、つい『プリテスタファンタジー』のゲーム内のことを思い出して口にしてた。危ない危ない……。


 ただ、実際、『バジリスク』はゲーム内でも本当に厄介なモンスターだった。毒攻撃が厄介でアイテムや魔法で解除しない限り延々とダメージを受けてやられるし、状態異常攻撃のヤバさを知らしめるモンスターと有名なのだ。


 ――でも、ツィオラさんの言う通り、本来は盤以降のダンジョンとかにしか居ないモンスターだし、街の近くには居ないモンスターのはずなんだよな。


 俺がそんな風に思い出していると、師匠がツィオラさんに声を返していた。


「しかし、『宮廷魔導師』だったあなたが店を経営していたとは驚いたな……」

「まあ、もう『宮廷魔導師』なんて肩書きには疲れたからね。あなたは騎士団の人ね?」

「フェレールだ。だが、もう騎士団からは引退している」

「そうなの?」

「ああ。今は道場を開いてそこの子供達の稽古を付けているんだ」

「へぇ……子供達に稽古を……ただ、さっきも言った通り、モンスターと戦うのはまた今度にした方が良いわ。『バジリスク』なんて大人が戦っても危険な相手だし、そんなのに遭遇したら子供達が危ないからね」

「そのようだな……というわけだ。今日は孤児院に戻って稽古の続きをするとしよう」


 そう言って、師匠はミュラやエリシル達に声を掛ける。しかし、胸騒ぎが収まらなかった俺はふとツィオラさんに声を掛けていた。


「えっと、ツィオラさん……で良いですか?」

「あ、うん。どうかした?」

「ツィオラさんはどうするんですか?」

「……? どうって?」

「これからレシアーナと一緒に店に戻るんですよね?」


 確認するような俺の言葉に、ツィオラさんの表情が固くなるのが分かる……やっぱり、嫌な予感が的中した。そして、ツィオラさんは驚くレシアーナと俺に声を返してきた。


「……いえ、残念だけど、わたしは『バジリスク』退治に行かないといけないわ」

「ええ!? ど、どうしてお婆ちゃんが行かないといけないんですか!?」

「師匠って呼びなさいっていつも言ってるでしょ?」

「あ、す、すいません……いや、そんなことより、どうして師匠が『バジリスク』と戦うことになるんですか!? 早くしないと開店時間になっちゃいますよ!?」

「悪いけど、今日は休業よ……もし、『バジリスク』が街まで来たらそれどころじゃないからね」

「し、師匠……」

「大丈夫よ。さっさと倒して店に戻るから、レシアーナは店に戻ってなさい」


 そう言って、涙ぐむレシアーナの肩に手を置いて安心させるツィオラだが……俺は嫌な予感が強くなっていた。間違いない……これは多分、ツィオラの死亡イベントだ。


 原作未登場のキャラクターの死亡イベントは詳細がない以上、何が起こるか分からない。けど、目の前で死ぬかもしれない人を見捨てるなんてできるわけがない。


「あの、ツィオラさん。ちょっと良いですか?」

「ええ、シュウって言ったっけ? どうかした?」

「その『バジリスク』ってモンスター……俺にも戦わせてもらえませんか?」

「え……?」


 そんな俺の言葉に、ツィオラさんやレシアーナだけでなく、みんなが驚いた顔を見せていた。


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更新が遅れてしまっていて、申し訳ありませんでした……!

ようやく手術を終えて退院したところでして……徐々に更新を再開していきたいと思います。余談ですが、最近はゲーム開発もしてて執筆にあまり時間が取れず申し訳ありません……。


とはいえ、なるべく更新の間隔を空けないよう尽力しますので、今後ともよろしくお願いします!

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RPGの脇役はバッドエンドを許さない~RPGのモブに転生したからバッドエンド回避して女主人公とラスボスを助けたらなぜか修羅場になった~ 白波 鷹 @Taka_Shiranami

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