█████を憶えていますか

くさかり

『祠』

ネットの掲示板より


0001 らいち 2022/7/21(木) 20:18:45

AD時代?の怖い話していいか?


0002 ジャッキーン 2022/7/21(木) 20:20:18

>>0001

芸能界の闇キチャー(^O^)/


0003 らいち 2022/7/21(木) 20:20:55

>>0002

すまん。心霊系や


0004 シノタウロス 2022/7/21(木) 20:21:19

>>0003

それはそれでオモロそう


0005 ターキーネーター 2022/7/21(木) 20:21:34

テレビ業界の心霊とかヤバそう


0006 ジャッキーン 2022/7/21(木) 20:21:47

>>0003

それでもかまわんぬ


0007 らいち 2022/7/21(木) 20:22:15

じゃあ話させてもらう。

これはAD二年目の時に、衛星写真で見つけた奇妙な場所に実際に行って確かめるっていう番組での体験談。


その番組、タレントはスタジオに呼んで、ディレクターが現地に行って取材するって形だったんだよ。だから俺も何回かディレクターについて日本全国を飛び回ってた。


だんだん慣れてきたな~って時だった。視聴者からそのたよりが送られてきたのは。


「変な集落があるんです。調べてみてください。」


その番組では視聴者から奇妙な場所の情報を教えてもらうことが多いんだけど、送られてくるフォームには大体、建物とかミステリーサークルの話が書いてあった。でもそれには『集落』って書いてあって、随分と規模が大きなっていうのが最初の印象。ディレクターのFさんも気になったらしくて、二人でその場所の衛星写真を確認したんだ。


そのフォームよれば山に囲まれた僻地にあって人影が一切ないらしい。投稿主はそこに近い街の人で気になって見に行こうとしたが、その集落への道がなく断念したという。それで地元に詳しい祖父や知り合いに聞いたが誰もその集落のことを知らなく情報はゼロ。だから番組に応募して確かめてもらいたいみたいだった。


確かに調べてみたら山の中に何の情報もない小さな集落があって、人が生活してる雰囲気は航空写真からはなかった。それに街からその集落へ繋がる道は見えなくて、代わりに街とは反対側の森に続く道があった。普通の廃村といわれればそうなんだけど、なんだか違和感があって、Fさんもそう感じたらしく行ってみることになった。


0008 ターキーネーター 2022/7/21(木) 20:24:20

航空写真ってなんかいろいろ映ってそうだよな


0009 ジャッキーン 2022/7/21(木)20:24:25

いい導入


0010 らいち 2022/7/21(木)20:24:49

んで、結局現地に行ったのは、たよりが届いてから一ヶ月後の七月でじめっとした暑さがある日だった。最寄駅から集落があるはずの場所まで二時間くらい歩いてFさんも俺も汗だくになったのを覚えてる。登山道もない森の中を機材を背負って必死に歩くと開けた場所にやっと出た。そこには衛生写真で確認したとおり、いくつもの家が建ってた。ただ全部木造の古さを感じさせる建物で、現代人が住んでいるようには思えないところだった。Fさんはそれを見て落胆した様子で言った。


「んーただの廃村か。」


廃村だと人がいなく取材ができない。そうなると市に確認したりして色々ネタを探さなきゃいけなくなる。俺も「残業か。」なんて考えて溜息をついてた。


ただ、どこか違和感を感じて、「とりあえず中覗いてみません?」と提案してみるとFさんは「カメラ回しとけ。」って言って取材をすることになった。


手始めに手前の古民家に行ってみることにした。横開きの扉は閉じられていて、一応人がいないかノックして確かめた。でもやっぱり返事はなくて、勝手に入るわけにはいかずに諦めて次の家へ。それを繰り返して十軒以上回ったと思う。途中、大声を出して誰かいないか確認したけれど閑古鳥が鳴いただけだった。


「んーボツかー」


なんて思ってたら、ふと窓から中の様子が見えた。窓っていってもガラスのない木の格子窓なんだけど。写真があったんだよ。家の中の仏壇に。暗くて上手く見えなかったけど女の人の写真。それも古いモノクロの写真で、その横に男の人の絵があった。


なんか気味悪いなって思ってたら別の家を見ていたFさんが「おい!こっち来い!」って呼んできた。彼の元に行くと「中見てみろ。」と窓を指してたので覗くと、そこにも仏壇があった。ただ違うのは写真がカラーの比較的新しい物ということ。そして、男側も写真ということ。もちろんさっきの人とは違う人なんだろうけど、なんとなく絵と写真の男が似ている気がして悪寒がした。


「もしかしたら人いるかもな。そうだ。写真で見た時、山道あっただろ?そこ確認してみるか。」


"それに街からその集落へ繋がる道は見えなくて、代わりに街とは反対側の森に続く道があった。"


住人がいるかもしれない。そう思ったFさんは声色を上げてそう言った。帰りたい気持ちはあったが残業の方が嫌だった俺は渋々承諾した。


抜けてきた森とは反対側へと向かい、例の道を探そうとしていた時、俺は違和感の正体に気がついた。草がない。そう、ここまで人影がないのにも関わらず、村の中に雑草は生えておらず土が露見していたのだ。誰かが除草したのか?にしても…


そんなことを思っているとFさんが道を見つけた。2メートル幅の道が森の奥へとずっと薄暗い樹海へと続いてた。俺とFさんは横並びでカメラを構えて進んだ。途中、石を積んで作った階段があってどんどんと登らされた。十五分くらいしたらFさんが「なんだあれ?」と息を荒げながら呟いた。


そこには小さな『祠』があった。樹齢百年は超えているような大樹が二本、その間に石でできた祠があった。それを見つけた時、なんとなく空気が変わった気がした。なんというか神域にはいったみたいな圧があった。


「人は…おらんか。」


またもやFさんの落胆が聞こえた。彼は、はあっと大きくため息をついて近くの木の幹に座りこんだ。俺はカメラで祠を撮りながら少しずつ近付いた。一応、何かに使えるかもしれない。そんなことを思ってるとあることに気がつく。祠が綺麗なのだ。


「Fさん!祠、綺麗です!もしかしたら誰か拝みに来てるのかも。」


そう言ってFさんへ振り返るとそこには誰もいない。


「え?」


あたりを見渡すが彼の姿はどこにもない。それに気がついた時、突如、森が静かになった。いや、静かという表現では足りない。鳥の声に蝉の音、木々の擦れる音さえもしない無音。聴こえるのは自身の鼓動と荒い息。


ガタン


重い石同士がぶつかったような鈍い音が鳴った。驚いて振り返るとそこには祠。恐る恐る屈んで中を見ると仏像と目が合った。赤い布を巻いた仏像。それは目を閉じているのに此方をじっと見ている。全身の気が逆立つを感じた。震えが止まらない。


どうにか落ち着こうと、震える手を抑えようと視線を移したその時、持っていたカメラが視界に入った。長方形の小さな画面にはレンズの先の祠が写っている。ただ違うのは仏像の顔、目を瞑って祈っていたはずのその顔は、歪んだ笑顔で此方を見ていた。そして気付く、これは家で見た絵の男と一緒だと。


血の気が引く。ここは入ってはいけない場所だ。だからこんな秘境にあるのだ。だから誰も知らないのだ。俺は恨んだ。何故あの時、帰る選択肢をとらなかったのか。残業なんて命に比べれば安いものなのに。只管に願った。家に帰りたい。ここから抜け出したいと。


ミーンミンミンミーン


蝉の声が聞こえた。いつの間にか閉じていた目を開けると、そこは自宅の最寄り駅だった。何が何だか分からなかった俺はスマホを取り出して時間を確認した。時刻は18:30。あの後、集落を出て帰ってきたとしたら辻褄が合う時間だ。すぐさま俺はFさんに連絡する。


      「あの取材ってどうなりました?」


「ボツかな」


    「祠に行った後、どうしましたっけ?」


「なにいってんの?祠って?」


        「山道の先にあったやつです」


「?」


「山道って廃村の?」


               「そうです」


「そうですって…おまえが帰ろうっていう

       から登らずに帰ったんだろ?」


「大丈夫か?帰りぼーっとしてたし熱中症じゃねーか?」



Fさんによれば俺はあの山道を登るか否かの時に、突然帰ろうと言い出したらしい。しかし、俺の脳裏には、はっきりとあの仏像の歪んだ笑顔に黒い眼が刻まれていた。


家に帰り、少し落ち着きを取り戻した俺はふと思い出す。


「あ…カメラ。」


そう。あの時、俺はカメラを回していたはず。


急いでリュックからカメラを取り出し、録画を確認する。

最新のファイル。約2分ほどの動画だった。開いて確認してみるが、そこにはザーッというノイズに真っ黒な画面しか映っていなかった。どうして。


必死に何か映ってないかを探した。何度も何度も再生した。しかし、映るのは黒のみ。


なんなんだったのか。そう思いながら真っ暗な画面を見ていると、ふと反射した自分の顔が見えた。そう"自分"の顔が。自分のはずの顔が。


しかし、自分の顔として反射していたのは、あの絵の、あの写真の、あの仏像の顔だった。



今も俺の顔は知らない男の顔のまま。知らない顔、それなのに卒業アルバムも去年撮った集合写真もその顔。もう前の顔は思い出せません。でも、この顔が自分のものだとも思えません。鏡は見れないです。知らない男が映るので。写真も撮りません。知らない男がいるので。最近じゃ自分が分からなくなってきました。なんかこう、思考まで浸食されている感じで。


だから自分が自分じゃなくなる前に誰かにこの話を伝えたかった。ごめん。軽い感じで始めたんだけどなんか重くなちゃった。話はこれでおしまい。


0011 ジャッキーン 2022/7/21(木)20:32:11

>>0010

え、ちゃんとこわ


0012 ターキーネーター 2022/7/21(木) 20:32:14

>>0010

自分の顔が変わるとか怖すぎだろ


0013 ジャッキーン 2022/7/21(木) 20:32:31

憑りつかれたってことなんかな


0014 ターキーネーター 2022/7/21(木) 20:32:44

わからんけど、祠の仏像って水子地蔵じゃね?赤い布とか


0015 ジャッキーン 2022/7/21(木) 20:33:01

仏壇も意味わからんな。なんで絵を飾っとるん?


0016 ジャッキーン 2022/7/21(木) 20:33:12

とりま主はお祓い行ってこい


0017 ターキーネーター 2022/7/21(木) 20:33:19

ほんそれ


0018 らいち 2022/7/21(木) 20:33:25

ありがとうございます


0019 シノタウルス 2022/7/21(木) 20:33:31

ありがとうございます

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