僕は何がしたいんだろう

　僕は何がしたいんだろう。図書館司書か？　作家か？　それ以外か？　どれも違う気がする。これらを考えると重たい南京錠が心にのしかかる。落ちこんでしまう。沈む。沈んでいく。僕の心はどこまで深いのだろう。そこには何があるのだろう。もしかしたら自分のなりたいものがそこにあるのかも知れない。けど分からない。心なんて高校生のころに知り尽くしたつもりだ。三年間ずっと自分の心と向き合ってきた。それでも僕は自分の心を知らない。知りようがないじゃないか。あちらから教えてくれれば答えがすぐに分かるのに。都合がいいもんね。だから教えてくれない。自分好き勝手に僕を落ちこませたりイライラさせたりして出て来るのに。僕に一言も声を発することなく、用が済んだら引っ込む。本当に好都合主義だね。でも、嫌いじゃないかも。僕を誘っているんだよね。招いているんだよね。僕から行動しないから痺れを切らしているんだよね。心の底に行けるように、僕に重たい南京錠を付けて下を向くようにと外してごらんと暗闇の中で鍵を探させようとするよね。本当に身勝手なやつ。こっちの気持ちを考えてほしい。けどさ、鍵を見つけたときの達成感は悪くないかも。南京錠をやっと外せるという想いより見つけたという想いの方が強かった。外せたのは良いけど、ここどこだ？　来た道覚えてないけど。何より暗すぎて怖いけど。鍵探しに夢中で今さら周りの空気を認識した。どうやって帰る？　というか帰れるのか？　夢かな。爪を思いっきり指に食い込ませた。強く食い込ませた。痛くなかった。だけど血は出た。温かい血液が指をなぞって滴り落ちた。