それって僕の仕事ですか?!

半端者ハルコン

プロローグ 山木戸、バイトを探す

私立 聖桜せいおう学園 一年棟

ここに、ひとりの男がいた――。


「やっべえ……今月使いすぎた……。付けもしないピアス買わなきゃよかったなぁ」


1年B組・山木戸 聖也やまきど せいや

一見冴えない彼だが、その中身は――


「でもなぁ、あのピアス、葉っぱの模様が綺麗だったんだよな……。仕方ない、仕方ない」


――冴えない上に、根っからのアクセサリー好きだった。


「こうなったら、放課後にでもバイト探すか……」


そして時は巡り、放課後。


「えぇっと……なんかいいのないかなぁ。コンビニは昼だから無理、居酒屋は深夜かぁ……保留っと」

なかなかいい求人が見つからない。


「ん? 【銀宝堂ぎんほうどう】従業員募集?」


なになに……?


---


**【銀宝堂】従業員募集**

「魔力で満ちた宝飾店で一緒に働きませんか?」


時給:1200円

勤務時間:平日 6〜7時+17〜20時

土日祝日は要相談


仕事内容:

・宝飾品制作の手伝い

・店内清掃

・接客

・雑用

・人探し


このチラシを見た方は、ぜひ銀宝堂まで!

住所:東京都○○○市✕✕駅から100m先、路地裏入口


---


「ねぇ……全体的に悪くないし、学校からも家からも近い……。

朝早いのは気になるけど、一人暮らしだし問題ないか……」


「でも“人探し”ってなんだ? 呼び込みのことかな……? ちょっと引っかかるけど……まぁ、アクセサリー店って魅力には抗えないし。行くだけ行ってみるか」


---


15分後。


「あった……。路地裏には不釣り合いなほど綺麗だな」


磨かれたガラス越しに、店内の様子が見える。

木製の机と棚に並ぶ、数々の美しい銀の装飾品。

なぜか置かれたキノコや木、苔の置物。


店先には、赤地に白で【銀宝堂】の三文字。


そして――見れば見るほど頭に響く、“はいれ”の三音。


ひとつ息をつき、覚悟を決める。


「すみません、このチラシを見てきたんですけど」


「はぁーい!」


奥から現れたのは――

長く艶のある黒髪に、紺のロングワンピースをまとった女性。

蒼い瞳の下に、泣きぼくろがひとつ。

そして、その頭には――


「トンガリ帽子?」

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