第18話・報酬03
「な、ん、だ、こりゃあ!?」
そのカーテン越しに見えた3つの、
高さ1メートルくらいの影を見て―――
俺はカーテンをバッ、と開ける。
するとそこには、プランターから1本ずつ、
まっすぐに木が生えていて、
「まあ、こんなに立派に……
じゃねーよ!!
『
たった一晩で何があったんだよ!」
いくら魔法が不思議なものだと言っても、
これは不思議過ぎるだろ!
しかも目立ち過ぎる!!
いや、落ち着け―――
別に誰かに見られているワケでも、
見られてマズいワケでもない。
記録映像とか撮られてさえいなければ。
「しかし、一晩でコレかぁ~……
もう一晩経ったらどうなるんだ、
コレ?
二階建ての二階だからいいけど、
ベランダの屋根付き破る事は
無いだろうな」
いっそ家の中に入れるか?
いや、それでも同じだ。
むしろ被害が拡大する。
捨てるのも目立つし、何より大家さんに
見つかったら言い訳が面倒だ。
何より一晩で育てられると誰かに
知られたら―――
国とかそういう機関が黙っちゃ
いないよなあ。
下手すりゃ永久就職という名の
監禁くらうかも。
「……よし」
そこで俺は、とある事を思いついた。
「すいません、大家さーん」
10分後―――
俺はアパート一階にある、大家さんの
管理室を訪ねていた。
「何だい、あんた。
ん? その野菜は?」
幸いにも実がバカでかいとか、そういう
事はなく……
促進栽培されたミニトマト・ピーマン・
ナスを
差し出す。
「いやあ、ベランダでちょっとした
家庭菜園やっていたら、収穫出来て
しまって。
それでおすそ分けしようかと」
「家庭菜園?
あんた、そんな事やってたっけ?」
「ははは、やだなあ。
結構前からやっていましたよ?
この前も大家さん、ベランダを見て
『おー、そろそろかい?』って
言ってたじゃないですか」
「そう……だった、かねえ?」
首を傾げるおばあちゃんに、俺は押し付ける
ようにそれを差し出し、
「じゃあコレ!
実は俺も今から食べてみるので、
味は保証出来ませんけど」
「まあ、そう言うなら―――
今は何でも高いしね。
くれるって言うのならありがたく
もらうよ」
そこで大家さんからお礼を言われ、
俺は自室へと戻っていった。
「ふぅ」
部屋に戻った俺は大きく息を吐く。
これで、大家さん公認で、ベランダで
家庭菜園をやっていた、という事実を
作る事が出来た。
コソコソやるより、『やっていましたが
何か?』とオープンにした方が、後先
いろいろと勘繰られたり、目をつけられる
事は無いだろう。
「あとは大家さんで
もとい、気に入ってもらえればあとあと、
無理を聞いてもらえるかも知れないし」
いくら何でも毒ではないだろう、多分。
そんな事を考えながら、俺は転職サイトを
見つつ、就職活動を再開した。
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