長髪美少年のパニクルライフ! 〜女子が苦手な美少年と、俺の秘密を知る軍師〜

なぎ&ねぎ

プロローグ

綾瀬あやせ ゆうは、光の中にいた。


長く艶やかな黒髪、陶器のように白い肌。


少女漫画から飛び出たようなその容姿は、彼が着る女子制服と相まって、周囲の視線を一手に集める「呪い」だった。


女子グループは彼を「可愛すぎるマスコット」として愛し、無遠慮なスキンシップや甘い香水を振りまく。


しかし、その「善意」こそが、悠のトラウマを刺激する「毒」だった。


(可愛い、ではない!俺は男だ! 触れるな、近づくな!)


悠はポケットの裏地を指先で掻きながら、完璧な「美少女の笑顔」を張り付けた。


彼にとって、この教室は『美貌』という名の檻に入れられた、逃げ場のない『密着戦場』だった。




教室の最も隅、日陰の壁際。


高嶺たかみね あおいは、光とは程遠い場所にいた。


黒いリュックと眼鏡、常に手元にある少年漫画が、彼女が周囲の流行に無関心であることを示している。彼女は、教室の「風景」の一部であり、悠の周囲の熱狂には一切加わらない。


その時、葵は漫画から顔を上げた。彼女の瞳は、女子に囲まれ笑顔を張り付ける悠の「美しさ」ではなく、その裏に隠された「孤独と戦術」を見抜いた。


(フッ。「美貌という名の呪い」と、「女子の密着という名の難関トラップ」か。あれは、『女の皮を被った、孤独な戦士』だ)


葵の口角が、静かに上がった。それは、ゲームの攻略法を見つけた時のような、確信に満ちた笑みだった。


この瞬間、美貌という呪いを背負った少年と、男のロマンを追求する少女は、一つの秘密を共有する『戦友』となる運命を決定づけた。

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