怖い映像

黒雲

第1話 1年前の旅行先にて

『この度は、数ある企業から当社をご応募頂き、誠にありがとうございました。

厳正なる選考の結果、誠に残念ではありますが⋯』


もう何度この文面を見たことか⋯。

こうなってくると、採用通知が来たとしても見落とすんじゃないのかと思うぐらい不合格が当たり前の感覚になってきた。

実は自分が知らないだけで、採用されるには何か法則でもあるんじゃないか?まさか履歴書にある文言を書かないと採用されないのではないか⋯。


「⋯駄目だな⋯。」


こんな思考回路になってしまっては、しばらく頭の中を休ませなければ。


「そういえば先週旅行に行った動画見てなかったな。」


気分転換も兼ねて、録画した旅行の動画でも編集しようと思い動画アプリを起動させた。


映像には友人2人が撮影してる自分に話しかけてる箇所から始まった。

「えぇ、これから生涯を共にしようと決めた「野郎」だけで京都観光に行ってきまぁす。」

「そんな約束はした覚えはありませんが、暇なので私も一緒に行ってきます。」

「気がついたらカメラを持たされ京都に行くぞと車で拉致られました。この映像を観た人すぐに通報して下さいよぉ~。」


何とも内輪だけが面白がってる恥ずかしい映像ばかりで、我ながら恥ずかしくなってきた。


映像を確認しながら当時を思い返し、黙々と編集して行った。だが、ある場所で違和感を感じてもう一度その場面まで巻き戻して再度確認してみた。


「何だ?これっ。」


その場面は観光場所からは少し離れたある橋の上で、映像には友人2人だけが映り周りに人はいなかった。それを良いことに1人がふざけて橋にぶら下がり、

「助けてぇ(笑)」

等と遊び始めた。


「落ちても助けないからなぁ。」

「うん。っていうか落ちてしまえ。」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」


何か聞き取れないが、音声のようなノイズのような物が映像に入ってることに気付いた。

もう一度巻き戻して聞いてみたが、聞き取れなく今度は音量を上げスロー再生で聞いてみた。


「み⋯⋯⋯⋯る。」


ボンヤリとだが、聞こえ始めた。さらに音量を上げてた。


「み⋯⋯み⋯⋯やる。」


もう少し。


「み⋯なみ⋯てやる。」


もう少し。


「みんなみ⋯⋯してやる。」


さらに音量を上げ聞いてみると、



「みんなみちずれにしてやる。」



「エッ⋯。」

思わず声を上げ、手が止まった。

空気が薄くなり呼吸が苦しくなるのを感じるほど驚いた。

「何だよ、コレ。」

信じられなく、もう一度聞いてみると、


「⋯みんな道連れにしてやる⋯。」


男性なのか女性の声なのか分からない声色だが、確かにそう録音されていた。

撮影していた時には、自分達以外誰も周りには居なく

こんな言葉は誰も発していない。


もちろん怖い感情はあったが、初めて心霊動画を撮れたことに多少の興奮もあった。このことを一緒に行った2人にも教えようと連絡を取ってみたが、運悪く2人とも留守番電話になってしまった。


もしかしたら、この後の映像にも何か撮れてるんじゃないかと思い、映像の先を見てみた。


橋を後にし、別の観光場所に移動する為、車移動していたその車内の映像にも異変があった。

それは高速道路上で、断続的にトンネルが続いていた場所でトンネル内に入ると映像が暗くなり、当たり前だがトンネルを出ると映像が明るくなるのだが、トンネル内に入り画面が暗くなると、後部座席にいる友人とは別にうつむいた人間が座っていた。

画面が明るくなるとその人は消えるが、暗くなると再び現れる。2、3回続くのだが、4回に暗くなるとその人はカメラの方を向き笑っていた。前髪で隠れ、目は見えないのだが口元は確かに笑っていた。


さらに映像を進めると、昼食中にも撮影をしていたのだが友人の方にカメラを向けて撮影していたのだが、少し離れた席に違和感がある人物に気づいた。

その人のテーブルには何もなく、無表情でまっすぐ前を向いて座っていた。その部分だけ一時停止してるような映像で不気味に感じるほどその人は微動だにしなかった。

ふと思ったのだが、何故撮影していた自分はこの人に気づかなかったのか。何故違和感を覚えなかったのか。


カメラが自分達のテーブルを写し、また後方を写した時にはその人物は消えてしまっていた。


その後の映像にも別の観光地、車内⋯あらゆる場面で不気味な人物が写っていた。

だが、写っていた人物はどれも同じ人物ではなくそれぞれ別の人物が写っていたが、共通していたのは全員白い服を着用していて全体が透けてるような写り方をしていた。

そして、どの人物も気持ちが悪いくらい笑っていた。




映像は泊まった旅館の部屋での映像になっていた。

この時はカメラを天井近くの角に固定して撮影しており、

その映像には談笑してる3人が映っていたが音声が途中からブツッ!ブツッ!と切れながら流れていた。


しばらくすると突然映像が止まり、画面が暗くなってしまった。録画してた映像はまだ続きがあるはずなのにおかしいと思い、いろいろ弄ってると画面が明るくなり先ほどの続きが流れた。だが、その映像には友人1人の姿が消えており自分を含む他の1人も気づいていないようだった。

するとまた、画面が暗くなり映像が見れなくなってしまった。間もなくして画面はまた明るくなったが、その映像にはもう1人の友人の姿も消えていた。

映像には、映っていない友人がいるかのように自分1人で話し続けていた。全身の血の気が引いていくのが分かるほど体中に寒気が走り画面にノイズが走り、また音声が切れかかっていた。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯よ。」


ノイズの終わりにまた何か言葉が入っていた。


「つ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯だよ。」


これ以上見ていられる状態ではなく、パソコンの電源を落とした。本能がここに居たらマズイと感じてるようで無意識に財布とスマホをおもむろに取り、部屋を後にしようと身体が勝手に動いていた。


急いで上着を着てドアノブに手をかけた瞬間、身体が動かなくなった。眼は勝手にパソコンの対面にあるTV画面を見ていた。そこには電源を切ったはずのパソコンが起動しており、自分1人だけが映る先程の映像の続きが流れていた。

そして、今度の映像ではハッキリと声が聞こえた。








 

        「次はお前だよ。」




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