元聖女の従魔フェンリルの主人探しの旅

蒲さし利休さん

第1話 主人とのお別れ

今から11年前、魔王の脅威に世界は恐怖した。

そこでこの大陸で一番の強国アルリフラ帝国は勇者パーティーを創設する。


「魔王デウス、これで止めだ。」


勇者カインの聖剣エクスカリバーが魔王の心臓へ突き刺さる。


「やったぞ、サーシャ。魔王を倒したぞ。」

勇者カインは、聖剣エクスカリバーを魔王から引き抜き、魔王から距離を取り、後ろで控えている聖女サーシャに声を掛ける。


「これまでか。だが一人では死なんぞ。死ねば諸共だ。」


魔王は体内の魔力を暴走させ、魔力爆発を起こす。


「バチバチバチ、ドカーン。」


閃光が走り、爆発が起こり、魔王がいた辺りに巨大なクレーターができていた。


砂埃が落ち着くと、勇者カインは倒れており、何とか息をしているが、左下肢から下が欠損していた。

聖女サーシャもこの爆発の直前に結界を張ったが、自分の真後ろにいた従魔フェンリルのリルを身を挺して守ったため、この魔力爆発で致命傷を受けた。


「カインに回復魔法を・・・。」

聖女サーシャは、致命傷を受けていながら、勇者カインの左下肢の欠損以外を治療する。


「ねえ、リル。私はこれまで見たい。」


「くうーん。」

従魔リルは悲しそうに鳴く。


「よく聞いて、私は助からないわ。

だから、最後にイチかバチか転生魔法を試してみるわ。

成功したら10年後に赤ん坊として生まれ変わっている筈。

成功したらで良いわ。リル、私を迎えに来てね。

だから悲しんじゃだめよ。しばしのお別れよ。リル、大好きよ。」

「パリジェネシア」


聖女サーシャが呪文を唱えると、聖女の体から眩い光が発光したかと思うとその光は天に昇っていった。

目の前には聖女の亡骸が静かに横たわっている。

リルは勇者カインを背中に乗せ、聖女サーシャの遺体を収納魔法で収納すると、トボトボとした足取りで、帝都サンクタスへ向かうのだった。


魔王との戦いで、勇者パーティは、賢者ロト、聖騎士ハインツ、重騎士ヒーツ、聖女サーシャを失った。

そして、聖女サーシャの従魔、フェンリルのリルは帝都サンクタスから人知れず姿を消した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る