月すぎる私と、太陽すぎる君。

苺葉 苺

ある日のこと

 私には幼馴染がいる。

「ぉ、ぉはよぉ〜…」

 あ、声裏返った…

「あ、雪灯ゆきあちゃん!おはよー!…あれ?夏希なつきは?」

 ふぅー…よかった。裏返ったのバレてない…

「ぇーとっ…ま、まだっ…き、きてなぃ…」

「ふーん。そーなんだ。雪灯ちゃんきたから夏希も来たと思ったんだけどなぁ」


 ドンっ!

「お、お、お!おっはよーーーーー!!!!!」


 力強く扉が開いた音がした後、聞き慣れた声が聞こえた。

 …この声が、いつもの声量だ。


「あ!夏希!おっはよー!」

「今日来るの遅いじゃん」

「寝坊しちゃってさー笑」

「もー何やってんの?笑」


 …そう、これが私こと、浅沼雪灯の幼馴染。

 柊 夏希。

 クラス1、いや、学年1の陽キャでありながら、学年1をほこるだ。

 …もはや天才。

 …まぁ、私と正反対の性格なんだけど。

 …さぁ、ここで皆さんに問題。この隠キャすぎる私が、陽キャすぎる夏希の友達に何故認知されているのでしょうか?認知はまだしも、挨拶したら何故返してくれるのでしょうか?


「ねぇねぇ、夏希目玉焼きには何かける〜?」

「私〜?んーと…」

 …ん?私の方に近付いてない?…気のせいか。

「ゆーきあっ」

「ひゃあっっっ!?」

「雪灯は目玉焼き何かける?」

「へっ!?わ、私!?」

「うん!」

「わ、私は…」

 どーしよ、びっくりしすぎて頭回んない!

 えーとっ…何?目玉焼き?は?いきなりすぎない!?

「えーとっ…しょ、醤油かな…?」

「おっけ!」


はるかー?私醤油!」

 夏希はさっきいた集団に戻って行った。

「もぉー…絶対雪灯ちゃんに聞いたでしょ」

「えー?ダメなの?私、雪灯と一心同体だからさ。私、雪灯と一緒にするし。てか、したいし。」

「はぁー…夏希っていつもそうだよね。…まぁそーいう雪灯ちゃん愛がすごいとこも好きだけどさ笑」

「でしょ!私は、どんな私でも好かれちゃうんで!」


 はぁ…さっきは何だったんだろ?…いつもだけど…

「ねぇー?ゆーきあっ?」

「何がっ!?」

「私って好かれちゃう体質だよねー!って話!」

 …確かにそうだ。

 女子にも男子にも好かれる。

「…夏希はバカだけどね。」

 …私は気は弱い。でも、なぜか夏希には普通に喋れる。

 幼馴染だからなのか、分からないけど。

「んーっっ!!!!あーっ!そー言うズバズバド直球な雪灯も大好き!」

 …こいつは、自分がバカなことを少しも気にしないバカだったようだ。


「ちょ、お前あぶねーだろっ!それ誰かに当たったらどーすんだよっ!」

「お前が先に喧嘩売ってきたんだろ!?」


 教室が騒がしい。

 男子が喧嘩してるみたい。

 うわっ…ハサミ持ってる…

 …こういう時、夏希は––


「ちょっと!ストーープッ!」

「な、夏希!?」

「危ないでしょ!?」

「いや、こいつが喧嘩売ってきたんだって!」

「今、関係ない!一旦置いて?」

「は!?いやでも…」

「…!!!」


 みんな息が止まった。

 そう、男子が持っていたハサミが手から抜けたのだ。

 そのハサミは宙を舞って私の方に飛んできた。


 …!ちょっと…まっ、え!?


「雪灯!危ない!」


「…!!!!」


 ズバッ


 そのハサミは、避けきれなかった私の腕に命中。


「イッタ……。…!?」


 私の目に映ったのは血が溢れる腕。


 …グロ…


 あまり深い傷じゃないだけマシだ。


 すごい痛いけど。

 自分の腕がハサミで斬られかけたことは一回あるし。

 まぁ、あの頃に比べたらまだマシな方––––


「雪灯!!!!」

 夏希が駆け寄ってきた。


「大丈夫!?…大丈夫じゃないね…保健室!保健室行こっ!」

 男子が口を開いた。

「あ、浅沼さんっ…ご、ごめ––」


「チッ」


 夏希が舌打ち…?

 …あ、待ってこれやばい…

 夏希が–––


「…あぁ、一応言っておくけど、お前らは絶対に許さねぇからな?私の命より大事な雪灯を傷つけたこと。…覚えとけよ?」


 空気がこの一瞬で凍った。


「…な、夏希?私は大丈夫だから…」

「大丈夫じゃないでしょ!それ見て大丈夫って言えないよ!」

 でも…


「あの男子やばいって…」


「夏希をガチで怒らせた…」


 空気が重いっ!!!!

 ほら、男子が可哀想だって!


「あ、あの…古橋さん?わ、わた、私は大丈夫だから、な、夏希のことは気にしなくていいよ」


「ゆ、雪灯!?あんなやつ許しちゃうの!?」

「うん…わざとじゃないし…」

「…とりあえず、保健室行こ…」

「うん…」


 その後保健室に着くと先生が手当してくれて、私の腕は包帯がぐるぐる巻かれて。

 夏希はその腕をじぃーっと見つめて何も言わなかった。


 下校はいつも自分のことばかり話す夏希がすごく静かで、不思議な帰り道だった。


 …先ほど出題させていただいた、問題の答えを言います。

 答えは、

 夏希が私のことが大好きな上にシスコン、ブラコンがあるように、フレンドコンプレックス略してだからです。そして夏希がずっと私の隣にいるから。


 皆さん知っていますか?

 月は毎晩輝いているけど、あれはけっして月自身の光じゃなくて太陽の光なんです。

 …そう、夏希は太陽で、私は月なんです。







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月すぎる私と、太陽すぎる君。 苺葉 苺 @Maiha-itcigo_00716

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