異界言語学入門

常陸 花折

授業シラバス・課題内容及び評価基準

【到達目標】

1.異界主要言語の特徴と文法構造を理解する。

2.言語と文化・魔術体系との関係を説明できる。

3.基礎的な詠唱文・碑文を現世共通語へ翻訳できる。

4.翻訳における“意味保持”と“魔力保持”の両立の課題を理解する。


【授業計画】(全15回)

第1回 導入:異界言語学とは何か

 フェリス・ヤタ教授による自己紹介と、言語と魔術の関係史。

 “言葉が世界を動かす”とはどういうことか――。

 課題:身近な呪文や言葉(ことわざ・祝詞など)の「力」を分析。


第2回 音の構造Ⅰ:現世共通語と発声呪術

 現世共通語における音韻体系と、発声における“魔力共鳴”の概念。

 映像資料では声帯波形と魔力流のシミュレーションを可視化。

 課題:自分の名前を音韻的に分解し、異界言語で再構成。


第3回 音の構造Ⅱ:エルニア語の詠唱リズム

 精霊圏で使われるエルニア語の音楽的特徴。拍節と呪詩。

 例:「Rael’fenna, siel a’maru」などの実例分析。

 課題:提示されたエルニア語詩を韻律的に解釈。


第4回 文字体系と記号の力

 神代語の象形性・構文魔法におけるルーン的表現。

 文字自体が魔術式である場合の危険性についても触れる。

 映像:教授が古代神殿の碑文拓本を実演解読。

 課題:簡単な封印文字を図形として描写・注釈。


第5回 文法構造Ⅰ:語順と意味の連鎖

 現世共通語・神代語・エルニア語の基本文型比較。

 “主語”が存在しない神代語の文法構造に注目。

 課題:提示された三言語文の主述関係を分析。


第6回 文法構造Ⅱ:時制・相・位相の概念

 神代語では「時」を“観測者の位相”として扱う。

 映像:位相ずれ翻訳のデモ(同一句が異なる時制で意味変化)。

 課題:与えられた詩句の時相を三通りに訳出。


第7回 文化と言語:信仰の言語構造

 言語が文化・宗教・政治構造とどのように結びつくか。

 「神の名を呼ぶ」行為の社会的制約について議論。

 課題:自領域または現世文化における“言霊”の事例分析。


第8回 翻訳論Ⅰ:意味保持の限界

 “言葉の意味”はどこまで転写できるか。

 エルニア語の「水」と神代語の「流れ」は同義か?

 課題:異界語→現世語翻訳時の“損失”を分析。


第9回 翻訳論Ⅱ:魔力保持の技法

 単なる意味翻訳では術式が失われる――“魔導翻訳”の基礎。

 フェリス教授による実演:同詠唱を三種翻訳で唱えた結果の比較。

 課題:詠唱文を“意味優先版”と“魔力優先版”の2種に翻訳。


第10回 言語変化と異界間通信

 異界語の変化と、ネットワーク変換技術による“自動翻訳”の限界。

 ストラテッラ通信史とAI翻訳魔術の倫理的問題。

 課題:自動翻訳ログを読み取り、人間翻訳との差異を指摘。


第11回 社会言語学:支配と言語

 支配層の言語・民衆の方言・召喚獣の音声構造。

 例:火星領域の「命令語」と自由意志の制約。

 課題:提示された召喚記録の台詞構造を分析。


第12回 詩と呪文:感情の構文論

 感情を直接的に伝える“非論理的構文”。

 エルニア語詩における感情変調と発動率の相関。

 課題:感情語を中心にした詠唱文を自作。


第13回 言語と観測:言葉が世界を作る

 観測哲理学との接続回。

 言語が世界認識をどのように形成するか。

 課題:自身の母語で“存在”を定義する詩的文を書き、それを神代語構文に再構成。


第14回 総合演習:異界碑文翻訳

 実際の古代遺構碑文(映像資料)を題材に翻訳。

 班に分かれた想定で複数案を提示し、比較解説する。

 課題:最終課題提示(期末レポート)。


第15回 総括:言葉の彼方へ

 フェリス教授による講義総括。

 “言葉の限界が、世界の限界ではない”というメッセージ。

 受講生への通信メッセージ形式で締めくくる。


【評価方法】

・各回の課題提出(短文翻訳・比較分析レポート):60%

・期末レポート(指定詠唱文の翻訳・解釈・文化的分析):40%

※映像講義終了後、指定の学内通信システムに提出。


【使用教材】

・『基礎異界言語学資料集』(大学配布PDF)

・フェリス・ヤタ監修『神代語構文と文化』


【備考】

・本講義は「魔導翻訳実践Ⅰ」(2回生以上対象)の履修前提科目である。

・一部講義では音声認識・翻訳演習のため、録音提出課題が含まれる。

・最終課題の優秀作品は大学紀要『Lingua Stratella』に掲載される。

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