ひと

「痔です」という三文字を言いたかったのに、私は「おしりが痛くて…」と「穴…?みたいな…?」と「もしかしたら痔みたいで…」を挟んでようやく「痔みたいです」と先生に言うことができた。


私が勇気を出すためにまわりくどく何回も言葉を変えたのに、先生は「あ、そうなんだね〜」と軽く返して、そのあと何度か言葉を交わし、薬を出すねと言ってくれた。ちなみに、これが治らないと専門的な病院に行き、また痔ですという告白をしなければいけない。頑固なのは私の心だけでいい。おねがいだから早く治ってほしい。君のことは絶対に忘れないと約束する。


2回目のインフルとコロナの検査も陰性に終わり、今回の発熱は首が腫れているのが原因だろうということで幕を閉じた。私は病院に行けたこと、痔という重大報告をするという任務を終わらせることができたことで調子に乗り、帰りにハンバーガーを食べようと店に寄った。嫌な予感が的中し、喉が痛くて飲み込めずに30分が経ち、家に持ち帰って再度温めて食べることになった。


帰宅後、アイスの実を食べて処方された薬を飲むと、眠気が襲ってきた。そこでふと、寝てる時の音を録音しようと思いスマホを起動した。35分後、目覚めてから録音していたものを聞くと、怪獣のようないびきが聞こえた。今朝、うとうとする私を何回も起こしたいびきは私のいびきだったのか。ちょっと待てよ、ということは恋人との通話中寝落ちてしまった時私はこんなものを聞かせていたのか?


そこまで考えて、考えることをやめた。そんなわけはない。私は数ヶ月前、母にいびきをかいているか聞いたことがある。その時は歯ぎしりはあるけどいびきはないと言っていた。まあ、普段別の部屋で寝ている人間がわかることでは無いとは一瞬思ったが。


私のおじいちゃんは怪獣のようないびきをかく。その娘である母もそう。父はもう、5年以上同じ家で寝ていないのでわからない。私はどうやら、いつか母に言われた拾われた子ではなく、血の繋がった娘らしい。判明の仕方があまりにも最悪だ。


20歳になるということ。

それは、誕生日の3日前にスマホを落とし、16万のスマホを一括払いで購入すること。当日に階段の最後の一段で転けたところをイケメンに見られること。ヘルニアの一歩手前と言われ、日常生活で体を動かすことは特にないと言ったら先生に鼻で笑われること、コルセットを巻くこと。ぎっくり腰になること。痔になること。怪獣のようないびきを恋人に聞かせること。帰宅中、歩くのが遅かったせいでアイスの実が1粒完全に溶けてしまい、ぐちゃぐちゃになってしまうこと。こんなことなら、一生19歳でよかったのに。


私が猛烈なアピールをしたら、母はWiFiを隠し持っていたらしく、パスワードを教えてくれた。私がお金が無いと言い(好きではない言葉)、体調が悪いことをアピールし、レポートが終わらないと言い続けなければ、きっと私は今日も微熱のままどこかをさまよっていたことだろう。微弱なのか、OFFにしているのか、よく消えるWiFiではあるけれど、無いよりはとても助かる。


私は、お金が無いのに子供を産む大人がよく分からない。理由は簡単、負の連鎖でしかないからだ。


だから、私は中学生の時には子供を産まないと誓っていた(もともと欲しいと思ったことはないけど)。それは今後も変わることは無い。子供を産んでから少なくとも中学生になるまでは家にいても良い経済力があること、私が一人の人間を育てることができるほどの精神状態であること、頼れるパートナーがいること、それが叶わないうちは絶対に子供を産まない。これが難しいということは理解しているし、全てを叶えたからといって最後には私が命をかけてまで子供を産みたいと思える時までは産まないというチート的な理由も待ち構えているため、私が子供を産むということは確実に無いと言える。ネガティブなことを言うと、幸せにできるという根拠の無い自信が微塵もない時点で、簡単に人間を生み出したくないのだ。


けれど、あくまでこれは私個人の考えだ。人の数だけ意見もあると思うし、それに関して思うことは何もない。だから私の考えもその程度であってほしいのに、人に言うと必ず驚かれる。でもそれもきっと、多様性ということなんだろう(便秘な言葉)。


多様性といえば、「多様性を認めるということは、受け入れられない人のことも認めるということ」というドラマで聞いたセリフを思い出す。その流れで、「今の人は自由という言葉に囚われて自由に閉じ込められている」というどこかで読んだ言葉も思い出す。


そういえば冬になると人肌が恋しくなるというけれど、冬に恋人がいた試しがないからか、家族での思い出がないからか、そんな事を1度も思ったことは無い。そういうことを言う人は、冬に誰かに触れて、愛を感じたことがあるんだろうか。今一番気になる謎だ。


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