第18話 水曜日とその理由
「えっとぉ...」
詩織は考える素振りを見せ、俺はそれをジト目で見る。
「あ、アレよ!あの...アレ!」
「アレってなんだよ...?ていうか否定しないって...自覚してるじゃん」
「違うわよ!!」
詩織はあたふたして考える素振りをやめ、涼むように片手を上下に振る。というかツンデレって自覚してるのかどっちなんだ...?
「まぁ...いいや俺は寝る。今度聞かせてくれ」
俺は横になって布団に入り、そのまま目を閉じて寝た。...疲れた。
「ホント...無理しないでよ...バカ...」
意識が疎かになる中、詩織が両手で顔を覆い呟いている事だけは分かった。何を言っているかは分からなかったけど...。
「なんか一発ギャグしろよww」
「俺そんなの出来な...」
「早くしろよ!!」
突然自分の机を蹴る誰かに、俺はそれと同時に地面に横転する。顔を上げても上から先は真っ暗だ。
「っ...!!」
「はははは!!」
「机ひでーwww」
「乙ww」
俺は立ち上がろうとすると後ろから右足を蹴られ、再び横転する。...こんなの間違ってる。俺は泣くのを堪えてもう一度立ち上がろうとした。
「おおっ!来るぞーww」
「いけいけww」
「顔面パーンチww!!」
拳が自分の顔面に迫る。俺はそれをただ、見ることしか出来なかった。
「はぁっ...!!夢...か...」
浅くなっていた呼吸を落ち着かせるように深呼吸をする。窓を見ると雨が降っており日は沈みかけている。
「はぁ...」
汗がにじみ、しばらく深呼吸をした俺はドアを開けて部屋から出る。
「治ったの?」
「ま...まぁな...」
椅子に座っている詩織と向かい合う席に俺は座る。
「汗すごいわね...」
「ちょっと変な夢見てちゃってさ」
俺は首元を広げて、手で仰いで風を送る。それと同時に詩織は何か反応したように俺から視線を外した。
「...どうした?」
「いや...何も...雑炊作ろうかしら」
「それは助かるけど...」
俺はあの行動を怪しく感じて眉をひそめたが、その後詩織は何も怪しい行動はせず、そのままキッチンへ向かった。
「いつ雨が降ったんだ?」
「3時間前くらい。予報では降らないはずだったんだけどね」
「今日帰れるかなぁ...というか帰ってもなぁ」
窓から雨が段々と激しく降る様子を見ながら、ボソッと呟いた俺の言葉に、詩織は疑問を持ったように反応する。
「帰っても...ってどうしたのよ?」
「俺の親がさ...海外出張らしくてしばらく帰ってこないんだよ」
「そ、そうなの...ね」
「そうなんっ...ん?」
玄関の開く音が聞こえ、俺は座りながら玄関の方向を見つめた。
「天気予報ちゃんと見たのに!」
「うわーずぶ濡れだよー!」
「最悪...!」
「...え」
「おかえりー」
結希、心寧、綾香の順番でリビングに来たのを見て、俺は一瞬で視線を別の場所に追いやった。それと当時に呟く。
「なんで毎回こんな...事に...!!」
視線を別の場所に追いやった理由は単純だ。雨のせいで3人の制服が...す、透けっ...たから。
「「「えっ?」」」
「ア...ドウモ...」
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