華麗なる演舞曲
まっちゃん
第1話 華麗なる演舞曲
舞台を清める儀のように、静かで厳かに。
冷たき白き液体を注ぐとき、その表面は静謐な湖面。ここに一筋の金属を差し入れる——まるで筆を取るように、または風を誘う扇のように。弦のトレモロにハープのアルペジオ、オーボエの主題が静かに奏でられる。
最初の動きは穏やかに。水面軽やかに、気泡の息を呼び覚ます。やがて乳白の液がわずかにとろみを帯びると、白鳥が羽を整え、優雅に身を起こす。
次第にテンポを上げる。ワルツを舞うが如く、輪を描き、空気と乳が恋をする。主題はホルンに移り、温かく柔らかい音色をクラリネットが支え、コントラバスのピッチカートが跳ねるようだ。
空気の粒が幾重にも抱かれ、泡は光を含み始める。その煌めきは、春の朝の霜のごとく繊細に、一振りごとに、世界の輪郭を柔らかくぼかしてゆく。
やがて、艶は姿を変え、重力に逆らう力を秘める。トランペットが高らかに主題を歌う。
——頂を描く、その刹那。泡は舞の極みに達し、雪の花が咲くが如く、静かに佇む。
この瞬間こそ、終結部。余韻のごとく金属を静かに上げると、その先端に宿るのは、一輪の純白の薔薇。ハープの一音のみが鳴る。
生クリームを泡立てる職人は水面に月を宿すが如し。
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(2025.11.03 了)
三題噺「輪」「職人」「水面」
華麗なる演舞曲 まっちゃん @macchan271828
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