新・夜叉ヶ池
新・夜叉ヶ池
かっぽれ かっぽれ
からっぽのおれたちはこうしんす
どこへむかうかじゅんれいのたび
ひとをもとめて かっぽれ
おとこをもとめて かっぽれ
おんなをもとめて かっぽれ
にんげんをもとめて
かっぽれ かっぽれ
へいわのこうしん 虹のパレード
おや 蛇太郎もついていくかい
しきるのはあたしだよ
夜叉ヶ池の修羅雪姫とは私のことさ
かっぽれ かっぽれ
拾っていくよ
人間ではない魂を
かっぽれ かっぽれ
空っぽのこの身体に
七色の妖怪たち、
かっぽれ、蛇太郎
かっぽれ、蟹五郎
かっぽれ、鯉七
かっぽれ、鯰入道
かっぽれ、名無し男
かっぽれ、名無し女
そして、修羅雪姫が
かっぽれ かっぽれ
御旗を立てる 巡礼の旅
歌はない歌──中野重治「歌」を読んで
お前は歌ふなと言いながら歌ふ
赤まゝの花やとんぼの羽根は歌わないが
ひよわなものは歌ったのだ
それは人だろうか?
お前自身の弱さを歌ふ
最初からその過ちに気付いているはずだ
逆説的に歌はねばならない歌は
威厳に満ちて威風堂々とするが
お前が歌ったのはそんな歌であるもんか
恥辱のなかでのたうち回る息でもって
喉仏の奥に異物が引っかかりながらも
声に出せない声を絞り出すのだ
その声は自らの胸廓に響いているのだ
青春18きっぷ
青春を取り戻すんだ
ケチな旅行じゃねえか
な、青春を取り戻すんだ
ケチを付けるのはお前じゃないか
エントロピーに逆らって
おいらは四国遍路だ
逆回りで弘法大師に出会うんだ
青春を取り戻すんだ
ケチな旅行じゃねえか
鏡花墓仕舞い
鏡花忌にお参りするやお隣さん田中さんから願い伝えて
もののけは墓がなくとも儚(はかな)しや雑司が谷から夜叉ヶ池まで
白雪の案内嬢はパートなの深夜バスまでもののけガイド
かっぽれかっぽれかっぽれなあ今夜はねこバスかっぽれなあ
夜叉ヶ池にダイブする蟹・鯰・鯉・姫・巳・余所者がいる
修羅雪姫
薄明の夜明け前の静寂、白雪よ!
白蛇を首に巻き蛇の真紅の舌から滴る血の匂い。
吸血の修羅雪は、極悪入道に囲われし白拍子、殿上人を切り捨てし極楽に誘ふ。
ぬばたばの闇から浮かぶ白の舞ひ……舞ひ……
満州の馬賊の紹興酒より、阿片より、花びらの入った酒より、
白雪舞へば、男は倒れ、首が飛ぶ、修羅雪
おまえに向かって、僕のペニスはそそり立ち、返り刃となって意識が飛ぶ。
おまえの目は、赤く射抜くように、僕の倦怠を見抜き、血の貯水池となる。
夜明けの赤目女は誘ふ、しばしうたたねしばし下層へ。
嗚呼!まどろむ光の渦よ、鬼神は鈴の音 ねでうたふ。
ぼくは舟唄にゆれながら、白雪を四度目に抱き力尽きた。
嗚呼! それにぼくは、奔放な復讐の女神 (メガイラ)よ、
おまえの寝台の地獄のなかで、おまえの根気をくじき、
窮地へと追いつめてゆく、プロセルピナにはなれやしない!
二人の貴人の間に漂う宇治の川、
激流は白雪を転覆させ、
死者の形代と成仏出来ない此岸に、
鬼の化身で姿を表す修羅雪。
男を窮地に追いつめ、寝首をかき切れ、修羅しゅしゅしゅ……
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