風鈴と朝顔
風鈴と朝顔
「橋の人飛び去る鳥に言問や」
そう業平は言問橋でナンパしたのだろうか?
都鳥は風鈴付きの朝顔をねだった。
赤い金魚の絵付きの風鈴は
からからと安っぽく鳴った・・・
朝顔市の売り子はいう。
毎朝、米の磨ぎ汁を与えれば
いつまでも朝顔は咲き続けると。
私は小さなベランダの大きな青い花を見て喜び
蔓はどこまでも添え木を越えて伸びていき
白い洗濯ものがたなびく竿まで
絡みつくような勢いだった。
白い洗濯ものと共に風鈴は
からからと安っぽく鳴った・・・
風鈴を外したのは君だったのだろうか?
だからあの女はやめときとあたしがいたったんだよ。
「恐れ入りやの鬼子母神」は風鈴を噛み砕くようにいった。
秋風に揺れて風鈴は
からから安っぽく鳴った・・・
小さなベランダの花々は枯れて
洗濯物は干されなくなり
残った風鈴だけが
からからと安っぽく鳴った・・・
いつしか枯れた蔓は風鈴に絡みつく前に
鬼子母神は風鈴を投げ捨て
それを噛み砕くごとく
バリバリと硝子が飛び散り
風鈴は二度と鳴ることはなかったという
蝿の女王
緑のスーツで颯爽さを演出、そういうブレーンがいるのさ百合の花のような清潔さ、その裏では各党の党首を手球に取りTV時代のニュースキャスターは票になるといい虚構の公約フリップで示し、その場限りの口約束騙されるあんたが悪いのよ、みんなやっていることだもの海外の有名大学だって卒業出来ちゃうもともとあたいは帰国子女なんだから選挙に勝てば官軍、雑魚たちはおだまりそれが政治というものそれをわたしはキャスターとして学んだのわたしの代わりはいくらでもいるもの、花があるときに道筋付けなきゃ
賢者たる民衆は、変化しない私を選ぶ、老いもせず、不老不死のアンチチェイジングあとはお前が後継者だと甘い言葉をゴルフのたびに囁くだけさ
NASAの勝負下着、パリのオートクチュール、日本ならイッセイミヤケね。そうしてスタイリストとお抱えコーディネーターのお陰でインスタ・バエの「蝿の女王」とは私こと。
白衣の異人
今日も金を恵んでもらいたいと座っている。
汚れたTシャツの絵はロックスター
しけた顔の目が突き刺す
駅への乗降客は蔑んで一瞥もしない
子供たちが物珍しそうに彼らについて質問する。
ママ、あの人どうしちゃったの?
迷路を嘲笑う腹いっぱいの男はお前だ。
べとついた汗で隣の女を抱きかかえるゴースト
二人の道化芝居、それを観察する男の視線
この世がもう一度ひっくり返ったらいい。
合わせ鏡
それは彼のゴーストだった。それは
何も語りはしない。
その残像だけを空白のページに埋めていく
彼はその虚空の下に立つのだろう
長編詩の試み。最初の一行は
「ママ、あの人どうしちゃったの?」
最後の一行は
「缶の中の小銭は盗まれた」
題は「みなとみらいの駅の片隅で」にしよう。
在日
俺は東京の生まれでも大阪の生まれでもない。
多くの在日と同じように半島からやってきた。それは島の場合もあるのだろう。俺の親父はそれより早かった。
それで俺は彼女に答えた。ああ、
知っていたよ。キムが済州島出身だということも。逃げてきたんだ。
弱ちょろい親父とたくましいお袋と。それでアイツが生まれたのさ。
大阪でもなく、ソウルでもなく、済州島でもない、東京という外れの町で。
だからアイツは俺の兄弟だったんだ。父親も母親も違うけどな。たまたま生まれた場所が東京の外れの町で。
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