ボス攻略なんてゴメンだ
ダンジョンの第十階層の最奥。十階層毎にあるボスが待ち構える部屋に辿り着く。
荘厳で巨大な扉が眼前に見える。高さ十メートルくらいか? 街にいた他種族でもここまでの大きさの人はいなかった。なんの意味があってこんなに大きいのだろうか。ボス! って感じを演出するためか? というかダンジョンってなんで存在してるんだろう。それを突き止めるためにダンジョンを攻略してる面もあるのか、発生原因はわかっているのか。少し気になるな。
閑話休題。
「開幕のデカいので仕留められなかったら追撃を頼む」
「ええ」
戦闘の感覚はこれまでで大体掴めた。ボス戦の経験も大事だが、あまり長居しすぎると新垣先生の救出という目的を果たせなくなってしまう。時間の猶予はあまりないと見た方がいい。
なのでボスには悪いが速攻をかけると決めていた。
扉中央の菱形水晶が青く光っている。これは中のボスが健在であることを示していて、パーティ毎の順番待ちをしている時に便利らしい。光っている時は挑めるよという印で、パーティが中に入っている時は光が消えて挑戦できないというのを示しているのだとか。ギルドで説明を受けた。
扉の前一メートルくらいまで近づくと自動で開く。
中は薄暗い。足を踏み入れると扉が閉まり明かりが灯っていく。広く丸い筒状になっているようだ。円状の白い床の中央にボスと思われるモンスターが鎮座していた。
暗い紫色の毛並みをした熊のような姿だ。二本足で立ち手足が長くミノタウロスの熊版とも言えた。鎧などは着ていないが両手に片刃の斧を持っている。全長五メートルくらいのモンスターが持っている武器なので刃渡りが二メートルくらいある斧だった。
『鑑定』でアックスグリズリーと表示された。レベルは二十五。第一階層からモンスターのレベルが一ずつ上がっていっているようだったので想定内だ。ただボスモンスターなので他より強いと思われる。油断せずぶちかまそう。
俺は魔力を込めた指で【i】を描く。ルーン文字で氷を意味する文字だ。
イメージはボス部屋ごとボスを凍らせてしまうほどの極寒の冷気。
【i】が溶けてイメージした通りの冷気が放たれる。冷気は床を凍らせ瞬く間に波及していく。ボスも反応できず凍り、ボスの後ろの壁まで凍っていた。
代わりに魔力がごっそり持っていかれたらしい。なんだか気怠くなってきた。
とはいえまだ終わりではない。
俺は凍った地面を滑らないように歩いていき、ボスが全く動かないことを確認して【解体】と記す。アックスグリズリーは凍ったままバラバラに解体された。遠距離からはできないが【死】と相手の身体に書けば相手は死ぬのでいきなり【解体】と書いてもバラバラにできるとは思うが。
とはいえ解体しても凍ったままなので一部位ずつ【解凍】していく。
「お見事」
アマネがパチパチと手を叩きながら言う。
「レベルもこっちの方が上だし、本来なら使えないような魔法と同じことしてるからな。まぁ、妥当だ」
これがチートというヤツか。いやまぁ、汎用性は高いができないこともあるので最強無敵チートというわけでもない。
素材はアマネと分けて荷物として持っている。持てない分は俺の『収納』に入れて生産に使えるか確認しようと思っていた。ボスの素材も『収納』分を確保していく。斧はデカすぎて荷物に入らないから『収納』行き確定だ。
「本当に便利なスキルね」
「いつも助かってるよ」
『収納』がなかったら色々と大変だったろう。
ボスを倒すとボスの後ろにあった扉が開いた。進むと入口にあったのと同じ魔方陣がある。
「今回はこれで帰ろう。の前に」
「ええ」
魔方陣の前で外に出る準備をする。準備と言っても二人してそれぞれのスキルで【存在希薄】を発動させるだけだ。俺もアマネも顔を覚えられてしまっている。【存在隠蔽】でない理由は存在を消すと逆に怪しいからだ。存在感を薄くすることで事なきを得ようという作戦である。
それから二人で魔方陣の上に乗ると魔方陣の光が増していき、一瞬の浮遊感の後入口に転移した。
ダンジョンの外に出ると今の時間がわかる。すっかり夜だった。
「お疲れ様です」
帰還用の魔方陣から戻ってくると入口で順番待ちの冒険者パーティを捌いている人が挨拶してくれた。俺達のことはちゃんと見えている。しかしアマネを注視していないので【存在希薄】が上手く機能しているようだ。
「「お疲れ様です」」
二人で挨拶してダンジョン入口から立ち去る。並んで歩き冒険者ギルドに向かった。
「素材の換金をお願いします」
「はい、こちらのカウンターにどうぞ」
素材換金受付のカウンターに並び、番になったら二人で持っていた素材を取り出し並べていく。
「かなりの数ですね……」
「ええ、まぁ」
「査定にお時間をいただきますので、少々お待ちください」
『鑑定』だと金額までは表示されないのだが、レベルが足りないのか別のスキルがあるのか。それとも料金表を覚えているのか。受付のお姉さんは一つずつ手に取って状態を確認しながらメモを取っていく。
やがて全ての素材を査定し終えた彼女は、カウンター下の金庫かなにかから金を取り出して袋に詰めていった。渡す金を用意し終えてからこちらに手渡してくる。
「どうぞ、こちらが換金結果となります」
「ありがとうございます」
受け取ったが具体的な金額は言われない。査定内容は明かせないからそのまま受け取れよということか。俺が代表して受け取り、後で分けるとして立ち去る。後ろの人を待たせてしまうからな。
「宿は取ってるか?」
「いいえ、まだよ」
「それなら俺が泊まってるとこにするか? 嫌じゃなかったら同じ部屋でもいいぞ。俺は『異空間』で寝てるから使ってないし」
「そうね……。宿代も浮くことだし、同じ部屋に泊まろうかしら」
アマネは嫌がらなかった。俺も流石に素のアマネなら別の部屋でお願いしたが、【存在希薄】で目立ってない今なら同じ部屋に泊まっても変な噂が広まらなくていい。
文句は出なかったので大浴場に寄ってから宿屋へ行く。今の部屋に二人で泊まっていいか確認した後、宿代は変わらないそうなのでそのまま就寝した。
二人になったので検証したが『異空間』は俺がいないと他の人が入れないので安心安全の『異空間』ベッドルームは俺が使うしかない。
「おやすみなさい」
「おやすみー」
俺が『異空間』に入るタイミングで挨拶して眠りに着く。
明日からは本格的に新垣先生救出作戦を実行し始めないとな。
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