監視なんてゴメンだ
クラスメイト達から惜しまれることもなく、出立の日取りが決まった。
足手纏いはいらないということだろう。もちろんそれでいい。
出発の前日には何人か声をかけに来てくれた。これが人望というヤツだ。
錦城さんも離脱することが決まっていた。ただ錦城さん周りの女子や錦城さん狙いの男子から盛大に惜しまれていたので俺より三日遅く出立するらしい。
これが人望の差というヤツだ。
準備をして各所に仕かけを置いておく。新垣先生を助けるために必要な下準備。【転移】の印つけだ。いざという時にテレポートして戻って来れるようにするための備え。
新垣先生を連れて逃げるための備えでもある。
朝起こされて最後の朝食を食べる。これまでは新垣先生に食べ物を届けていたが、それがなくなってしまう。なので逆に追放とかして欲しい。追放されたところを拾えばいいだけだし。
大分やつれてきているので早くしなければ。
訓練に行くクラスメイト達を見送って、旅支度を整えて騎士の一人に案内してもらう。初めてこの場所の外に出る。ちょっとしたワクワクを胸に門から出ると城下町が広がっていた。
案内してくれた騎士の人に頭を下げていざ。
一般人に紛れ込むためにあまりキョロキョロせず雑踏の中に消える。
城の正門前からはメイン通りなのだろう。広い道幅に人々が行き交っていた。店が建ち並んでいるようだ。こんな目立つ立地に店を構えているのだから相当客入りがいいだろう。
行き交う人々は全て人族みたいだ。
他種族っぽい見た目の人は見当たらない。奴隷にしているそうだが、モンスターとして俺達に殺させようとしているなら街にいさせるわけもないか。
俺は勇者二人のように絶世のイケメンでもなければ大々的に見送られたわけでもない。目立たず人混みに紛れることができていた。
んー……。ずっと見張られてるな。
『気配察知』にずっと引っかかっている気配がある。城を出る前からずっとだ。どうやら俺を尾行しているらしい。城の中からということは、城の手の者。つまり老人か王辺りが命令していることになる。
わざわざ俺如きに監視をつける必要があるのか? 街を出るまでかもしれない。とりあえず事前に聞いた情報通りに必要なモノを調達してからさっさと街を出よう。
身分証を貰うための冒険者ギルドへの登録。俺は生産スキルを持っているので生産ギルドにも登録しておく。周辺地図の購入。食糧は貰えなかったが購入分の路銀は手渡されているので数日分購入。『収納』は物流界隈にとって最高のスキルなので隠した方がいいと踏んでいるので旅支度用の布袋に入れていく。街を出たら『収納』に入れるけど。
人に見られている気配を感じながら過ごすのはストレスだったが、気づいていないフリをする。高い外壁の外に出ればモンスターが蔓延る危険な旅の始まりだ。
街の外には広大な草原が広がっていた。遠くには森や山も見える。
門から商人などが行き来する用の街道が敷かれている。街の周りだけ石畳になっていて、途中から土剥き出しの道になるらしい。大きな街への道中は道があるが、小さな村や集落などに向けては整備されてないことも多いのだとか。
モンスターに襲われないよう【気配察知】を発動したままで歩く。……まだついてきてるな。
街から離れればきっと、と思っていたが街から離れてもついてくる。監視されているとモンスター狩りができないから困るな。
こうして街から離れても見張られているということは、監視以外の目的がありそうだ。まさか始末しに来たんじゃないよな? 俺なんかを始末しても意味ないぞ? 表向きは大した情報も持ってないし、逃げ出すだけで真っ向から敵対する意思はない。国家が相手になると面倒加減がMAXだからな。
嫌な相手を消すんじゃなくて、関わり合いにならないのが俺の信条です。
まずは世界を見て回るというのが今の方針。世界情勢というヤツを探っていきたいので、一番近くの街を目指している。その街の近くにはダンジョンがあるという。ダンジョンとはモンスターがいて宝箱や罠のある冒険者が挑む自然発生の職場みたいなモノ。
その街はダンジョン目当てにやってくる冒険者をターゲットにした商売を中心に発展したそうな。ダンジョンへの道のりも整備されていて通いやすいらしい。冒険者ギルドの受付さんから聞いた。どこで稼ぐのがいいかって聞いたら教えてくれたのだ。有り難し。
ただダンジョンはモンスターを討伐する必要がある。つまり俺が入ったら不自然なのだ。
どうにかして監視の目を振り切らないとな。一応生産の師匠を見つけるという名目は作れるので言い訳できるが。
『気配察知』の範囲は尾行している相手を捕捉しているが、モンスターを避けるのはそれより狭い範囲に入ってからにしている。あくまで監視に気づいてないですよというアピールだ。
空腹になったら買った食糧を食べる。カモフラージュに買った保存食なので美味しくはない。硬い塩味の干し肉とか、乾パンとか。新鮮な食材は道端のを拾って『収納』へ。焼く場合は『刻印』で。夜になったら『異空間』を開いて持ち込んだベッドで就寝。異空間内なら敵に襲われる心配もないので安心して眠れる。少しずつ使ってレベルを上げたので若干広くなった気がしなくもない。
『異空間』内からは外の『気配察知』ができないので起きた後待ち伏せされてもいいように警戒しながら出る必要がある。
起床後に『異空間』内でご飯を食べて武器を構えながら外へ。モンスターもなにもいなかった。『気配察知』内に監視役の気配はある。表向きはほっとしつつ武器をしまって旅を続けた。一日中歩いているのにそこまで疲労感がないのはステータスのおかげだろう。あと旅なのにベッドでぐっすりなのもいい。便利だな『異空間』。
そんなこんなで次の街へ。……ずっとついてきてるんですけど。
城下町は一般市民が多い印象だった。だがこの街は冒険者が集まってきているからか武装した人が多い。ここには奴隷らしき首輪をつけた他種族もいた。活気に満ちていていい雰囲気の街だ。一応ダンジョンについての情報も得ておく。最深部目指して冒険者達が攻略中とか、最前線を走る冒険者パーティがどこだとか。
色々やりたいことはあるが、監視の目を振り切るための策を考えるとしようか。
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