第2話 kiss

「美月……」

莉桜花は美月の名前を呼びながら、美月の腰に手を回すのです。

「莉桜花……」

美月もまた、莉桜花の名前を呼びます。

お互いの名前を呼び合うと、そのまま抱き合ったのです。

互いの体温を感じ合いながら、しばらく抱き合っていたのです。

呼吸は荒く、心臓の音が伝わってくるような気さえしました。

やがて2人はゆっくりと離れると、再び見つめ合いました。

2人の顔は上気しており、目は潤んでいましたが、その目には強い意志が宿っていたのです。

そして……2人はもう一度顔を近づけるとキスをしました。

2人の唇は再び重なり合いました。

キスは先程よりも長く続いています。

何度も唇を重ねると、今度は舌を入れて絡ませたんです。

「んっ……ちゅっ……」

お互いの舌を絡ませていきます。

唾液を交換するようにして貪り合います。

お互いに夢中になってキスをするのです。

「そろそろ帰ろ」

美月が突然言ったのです。

2人は見つめ合うと、小さく頷き合いました。

その場で立ち上がると、ゆっくりと歩き始めます。

手を繋ぎながら……。

そうして、二人が帰る方向が違うので、途中で別れるのです。

美月は莉桜花の家まで送ります。

別れ際にキスをするのでした。

そして……2人はそれぞれ自分の家に帰ると、自分の部屋に入りました。

莉桜花は自分の部屋にある鏡の前に立って、自分の姿を見つめます。

鏡に映った自分は、少し頬が赤くなっているように感じます。

「美月の唇柔らかかったな……」

莉桜花はぽつりと呟きました。

そうすると、美月との思い出が浮かんできます。

「キスした時の気持ちすごく気持ちよかったなぁ」

そう呟いた莉桜花は、自分の唇を指でなぞるのであった。

「美月とキスしたいな」

莉桜花はそんなことを考えてしまいました。

しかし、そろそろ晩御飯を食べないといけないので、家族のいるリビングに向かうのでした。

リビングには母親が居て、莉桜花に気づくと声をかけてきました。

「おかえり、今日は遅かったじゃない」

「うん、ちょっと寄り道してたからね」

「それで何を買ってきたのかしら?」

莉桜花の母は微笑みながら尋ねます。

「えっとね……はいこれ!」

莉桜花は手に提げていた袋を見せるのです。

中にはおしゃれなアクセサリーが入っています。

「あら、綺麗なネックレスじゃない」

「えへへ……」

そんなやりとりをしている中、玄関で物音がしました。

どうやら父が帰ってきたようです。

そしてリビングに入ってきた父は、莉桜花を見ると言いました。

「おかえり、今日は遅かったじゃないか」

「ただいま! お父さんもおかえり!」

2人は挨拶を交わすのでした。

そして晩御飯を食べ終わると、莉桜花は自分の部屋に戻りました。

ベッドに横になると、今日の出来事を思い出します。

(美月可愛かったなぁ)

そんなことを思っているうちにいつの間にか寝てしまっていたのでした。

2人がキスをした日から数日経ったある日のことでした。

2人はいつものように一緒に登校していたのですが……。

学校に着くと教室に入りました。

そうするとクラスメイトたちが2人に話しかけてきたのです。

「ねぇ、莉桜花ちゃん」

「何?」

莉桜花は首を傾げながら聞き返します。

そうすると、クラスメイトの1人が言いました。

「あの……これあげる」

そう言うと、小さな紙袋を手渡してきたのです。

莉桜花はそれを受け取りました。

「これは……?」

不思議そうな表情をする莉桜花に対して、そのクラスメイトは答えます。

「えっとね……開けてみて!」

莉桜花は言われるままに袋を開けてみることにしました。

そうすると中には可愛らしいデザインのヘアピンが入っていたのです。

「わぁ……可愛い!」

莉桜花は目を輝かせて喜んでいました。

その様子を見た他のクラスメイトたちも、次々にプレゼントを渡してきたのです。

あっという間にたくさんのプレゼントを抱えていました。

そんな様子を見ていた美月は、微笑みながら言うのです。

「よかったね、莉桜花」

2人は笑顔で頷き合うのでした。

もらったプレゼントはどれも素敵なものばかりで、2人はとても喜んでいました。

「えへへ……みんなありがとう!」

そんな様子を見ていたクラスメイトたちは、まるで自分たちのことのように喜びを感じているのでした。

2人はその後も昼休みまでずっと、プレゼントの話題で持ち切りなのでした。

昼休みになると、2人は一緒にお昼ご飯を食べるため屋上へ移動しました。

屋上は人気がないので、お気に入りの場所です。

屋上に着くと、そこには誰もいませんでした。

2人はベンチに腰掛けるとお弁当箱を取り出します。

そして、食べ始めようとしたその時でした……。

2人の前に1人の女子生徒が現れたのです。

「あの……」

その生徒はおずおずと話しかけてきました。

2人はその子を見ると、すぐに誰かわかりました。

それは先日プレゼントをくれたクラスメイトだったのです。

「どうしたの?」

莉桜花は優しく声をかけました。

「実はね……」

その女子生徒は言いづらそうにもごもごと口を動かしています。

そんな様子を見て、美月が代わりに話し出します。

「何か用事があるんでしょ?」

美月は優しい口調で尋ねました。

そうすると、その女子生徒は意を決したように顔を上げました。

「あの……私ね……」

そう言いかけると、莉桜花がその言葉を遮りました。

「あっ! わかった! これのことでしょ!」

そう言いながらヘアピンを見せびらかしています。

それを見た女子生徒の顔が明るくなりました。

「そうそれだよ!」

女子生徒は嬉しそうな声で答えるのです。

「これね、本当に嬉しかったんだ」

莉桜花は笑顔で答えます。

そんな様子を見ていた美月が口を開きました。

「それで? どうしてこれを?」

2人はその女子生徒に尋ねます。

2人の疑問に対して彼女はこう答えました。

「実はね……私2人のことが好きなんだ」

2人は驚きの表情を浮かべています。

そんな2人に構わずに、彼女は話を続けました。

「だから2人と仲良くなりたくて……それで……」

2人とも黙って話を聞いています。

そんな時、美月が口を開きました。

「……それで私たちに何をしてくれるのかな?」

2人の言葉に、その生徒は少し考え込みます。

そして……。

「えっと……2人と仲良くなりたい!」

そう答えたのでした。

その言葉に美月は微笑みました。

「そっか」

そう言うと莉桜花は立ち上がりました。

2人は手を繋ぐと、屋上を出ようと歩き始めました。

そんな様子を見ていた女子生徒は、慌てて声をかけます。

しかしその声は届かずに、2人は屋上から出ていくのです。

教室に戻るとクラスメイトたちは驚いた様子で駆け寄ってきましたが……。

2人はそんなクラスメイトたちを無視して自分の席に座りました。

(私たちももっと積極的にならないとね)

(うん!)

2人は心の中で思うのでした。

3日ほど経ったある日のことでした……。

いつものように学校に来た莉桜花と美月ですが、その日はいつもと違いました。

2人の席に机がなかったのです。

それどころかクラス全体が静まり返っていました。

2人に視線が集まっていました。

その視線には様々な感情が込められていましたが、どれも良いものではありませんでした。

そうすると1人の生徒が近づいてきました。

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