あれから三年という年月が経った。

あれから━━私が強姦、レイプされそうになった事件。小学五年生の私には、そういう直接的な単語は理解することも、認識することもできなかったのだが━━とにかく三年。

それはひとりの女の子が変わるには十分すぎるほどの年月だ。

私は、中学二年生になっていた。世間的にも自身的にも繊細でお年頃の、特に女の子にはそうだろう、反抗期の真っ只中だった。それはそれは荒れた。荒れにあれた。

夜遊びなんて、当たり前、無免許で単車を走らせ、暴力上等、補導の数など数知れず━━。最初は両親も嗜める程度だったが、その度に私は反発し、ときには暴力を振るうこともあった。次第にまるで腫れ物に触れるようになり、それに比例するように私は家から離れる日が増えていった。そんな私だが、乙女の純血、いわゆる処女だけは守っていた。

あまり意識してはいなかったが、いや無意識下では意識していたのだろうが、小学五年生の頃にあったレイプ未遂事件がしっかりと━━脳髄に身体に、しっかりと刻まれていた。


その日の夜も私は、悪友と夜遊びに興じていた。コンビニの駐車場でタバコを吸って、路地裏で片手間にサラリーマンらしい大人を恫喝し、実際に殴って、そいつの財布からお札を抜き、我が物顔で街を闊歩した。

怖いもの知らずだった。それは怖いものを知ることの伏線を張っているようなものだ。罪を冒せば、罰を受ける。必然であり、当然の帰結といえた。


皮肉にもそのときの私は、あのレイプ未遂事件があった日をなぞるようにひとりだった。その夜も軽い気持ちで、ちょっと派手な頭をして派手な服を身にまとっていたお兄さんの背中を足蹴にし、良い子ちゃんが見たら、卒倒するような、目を覆いたくなるような暴力をはたらいて、昏倒させた。そこまではいつも通りだった━━そこまでは。

ふと周りを見たら、数人の男たちに囲まれていることに気づいた。多勢に無勢だった。それはそれは酷いものだった。

暴力を振るわれ、ボコボコにされ、壁に背中を押しつけられ、両腕を男たちに押さえつけられ、無理やりに唇を奪われた。男たちの私を見る目は、好奇にギラギラと当てられ、まさにケダモノのそれだった。そして、ひとりの大柄な男に穿いていたチェックのスカートを無理やり脱がせられ━━強姦されようとしていた、そんなとき、私の口から発せられたのは、

「お母さん!」

という中学生という年齢に相応しい叫びだった、悲鳴だった。そして私は━━。

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