第11話

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前宰相フォン・ヨハネスと団長アレクサンドロスに見送られ、二人は旅に出発した。


これが最初で最後の、二人だけの旅になるのだ、その一瞬一瞬を大事にしたい・・・二人はそう思った。


馬車を御すオーグの隣にアレイシアは座り、肩を寄せる。


「・・・ここは寒くないか?」


オーグが心配するが、アリーは首を振る。


「ううん、オーグが温かいから、平気」


オーグは、片方の腕で、アレイシアをそっと包む。



***



初日の宿で、二人は結ばれた。


それは、互いにとって、ごく自然な流れである。

若さ故か、初夜の後も、二人は一睡もしなかった。


この貴重な時を、無駄にしたくない。

二人がそう思うからでも、あったろう。


実際、幸せを感じるだけで、二人に疲れはなかった。




二人に残された僅かな時間、オーグは、可能な限り、美しい景色をアレイシアに見せたいと思った。


青く澄み切った湖、美しい山の峰が見える場所、古風で美しい町並み・・・先々で味わう美味い飯。


アレイシアは毎日笑う、声を出して笑っている。

以前は冷たいと言われ続けたオーギュストも、いつの間にか同じように明るく笑う。


ふたりの間に、会話と笑い声が尽きることはなく、旅の途中のどんなありふれた景色でさえ、輝いて見えた。



夜、オーグは、美しいアレイシアを見つめる。

完璧な造形が、白く透き通るような肌に包まれている。


「・・・恥ずかしいよ」


そう小さく呟いて、僅かに頬を赤らめ、俯く姿に、

オーギュストは我を忘れ、溺れる。

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不遇だった没落令嬢、第三騎士団の家政婦となる スズキハ ジメイ @suzukihajimei

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