翌日ケータイに電話がかかる
翌日。
「二日連続で来てくれてありがとー♡ 今日も気持ち良かったよー♡ ありがと、お兄様―♡」
「おう。俺も凄い気持ち良かったぞ」
「そう言ってくれて良かったー♡ お兄様今日に帰っちゃうんでしょ? またいつでもこの町に遊びに来てねー♡」
「おう、わかった。また時間と金が出来たら遊びに来るわ」
「うん。いつでも待ってるからねー♡ それじゃあ今日はありがとうございましたー♡」
俺は風俗嬢のリリとそんな挨拶をして箱ヘルから出ていった。俺は今日もこの町の箱ヘルで遊んでいた。
東京に帰る前にリリと遊んでいこうと思って、今日は朝からリリを指名してずっと遊んでいた。お客が誰もいないって事で四時間くらい延長してリリとずっとプレイルームで遊んでいた。
「こんなに遊んでもたったの二万円で済むなんて安すぎて笑うな。めっちゃ気持ち良かったし最高だったな……って、うん?」
―― プルルルッ……プルルルッ……
その時、俺のケータイから着信音が鳴った。ケータイを開いて画面を確認すると着信相手は元会社の同僚だった。俺はすぐに着信ボタンを押して通話を開始した。
「もしもし?」
『あ、お、俺だ! い、今話せるか!?』
「おう。昨日ぶりじゃん。どした?」
『い、いや、落ち着いて聞いてくれ……! あ、あのな……あのクソ上司が……クソ上司が……死んだってよ!!』
「え……って、は、はぁ!? なんだって!? アイツが死んだのか!?」
『あ、あぁ! そうなんだ! さ、さっき社長からメールでそう伝えられたんだ! ア、アイツ……自宅で首吊り自殺をしたんだってよ!!』
「……えっ!? じ、自宅で……首吊り自殺? ま、まじかよ……?」
『あ、あぁ、マジでそうなんだ! 自宅のリビングで首吊って死んでたんだって! 今会社の中ではその話題でいっぱいになってるよ! ア、アイツが自殺するなんて……誰よりも自殺なんてするタマじゃなかったはずなのに……』
元同僚の言う通りアイツは自殺をするようなタマじゃない。誰よりも狡賢くて汚いクソ野郎だった。だから精神的に病む事も無いだろうし自殺する事も絶対に無い。
それなのにアイツは事故や病気ではなく自殺したなんて……しかも自殺の方法がまさかの首吊りだったなんて……サリ王から貰った新聞記事の呪殺方法と合致しているんだけど……それってつまり……どう考えても……!
(ま、まじかよ……あの呪術師……本物だったんだ!!)
俺はそれを知って身震いしていった。あのクソ上司を呪殺で殺してくれたんだ! こんなのマジで嬉しいじゃねぇかよ!!
『という事でちょっとだけ飲み会はしばらく出来そうにはないんだ。あのクソ上司の仕事の引継ぎとかあるし、しばらく忙しくなりそうだ。だからすまんけど飲み会はしばらく先にしてくれると助かる』
「あぁ、もちろんわかってるよ。それじゃあお前の仕事が落ち着いたらまた飲み会しような」
『そう言ってくれると助かるよ。そんじゃあ、またな』
「おう。またな」
―― ブツッ……ツー……ツー……
元同僚との通話は終了した。俺はケータイをポケットにしまい込んでいった。
「……ぷはは、何だよ。アイツ本物の呪術師だったのかよ! はは、マジで最高だなぁ……!」
俺は笑いながらそう呟いた。町の皆はインチキだとかニセモノだとか言ってたけど、実はあの呪術師は本物だったんだ!
なるほどな。あまりのボッタクリ価格過ぎて全然利用する客がいなかったから、町の人たちは全然気づいてないだけで……あの呪術師は本物の呪術師だったって事か。はは、こんな嬉しすぎる誤算があったなんて最高だ!!
◇◇◇◇
それから程なくして。
「そうですか。呪殺が上手くいったようで何よりです」
「あぁ。昨日依頼したのにもう達成させてくれるなんて……アンタかなりの腕利きなんだな」
「ふふ。恐縮です」
俺は桜木山に登ってあの呪術師に会いに来た。呪殺が完遂した事を伝えに来たんだ。
「アンタのおかげであの男に復讐出来て最高だよ。本当にありがとう。こんな腕の良い呪術師と出会えて良かった。でも町に住んでるヤツらは皆アンタの事をニセモノだとかインチキだとか言ってたぜ? 本物ならもっと本物だって伝えた方が良いんじゃねぇか?」
「おや、町の人に私の事を話したのですか? ふふ、大丈夫でしたか?」
「? 大丈夫って何だよ? 祈祷師に会いにこの町に来たって言ったら、皆から笑われたくらいだけど? アンタ町のヤツらから全然信用されてなさすぎだろ。はは」
「……ふふ、そうですか。それだけで済んだのなら良かったですね」
「?」
呪術師の男はふふっと笑みを浮かべながら何やら意味深な事を呟いてきた。意味がよくわからなかった。
「……まぁいいや。という事で今回は呪殺依頼をしてくれてありがとな。アンタのおかげで今日からぐっすりと眠れそうだ」
「それなら良かったです。それと昨日、私に呪術依頼をした事は他言無用にした方が良いと忠告させて頂きましたが、私に会った事自体も誰にも言わない方が良いと思いますよ。たとえこの町の人であってもね……」
「? 会った事自体言わない方が良い? なんでだよ?」
「まぁ色々と理由はありますが、太古の昔から“口は禍の元”と言われてますからね。呪殺を依頼したなんて周りの人に知られたら、変な目で見られたり、悪い事に巻き込まれるかもしれません。ですから祈祷師である私と出会った事は誰にも話さず真っ当な元の生活に戻っていった方がよろしいかと」
「あぁ、そういう事か。もちろんわかってるよ。こんな呪殺を頼んだなんて事をおおっぴろに公言なんてする訳ねぇって。そんな事を公言したせいで警察に捕まったりしたらめんどくせぇしな」
「ふふ。そうですか。それなら安心しました」
「おうよ。それで今日は東京に帰る前に呪殺依頼を完遂してくれた事の感謝を伝えに来たんだよ。改めてありがとな。アンタのおかげでスカっとしたぜ」
「それなら良かったです。それでは改めて今回は呪術依頼をなさって頂き真にありがとうございました。お気を付けてお帰りくださいね」
「あぁ。そんじゃあな」
こうして俺は呪術師に別れを告げて社から出ていった。そしてそれからすぐに駅に向かい、東京へと帰路についた。
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