第2話「お菓子と会場の準備をしましょう!」

「それは確かに名案ね!」シレネはビーンズの楽しそうな提案に透明な青色の瞳をキラキラと輝かせました。


「そうだろ⁉だから早速みんなに招待状を出そう!また僕がみんなに配ってきてあげるよ!」


「そうね。動くなら早いほうがいいわ。家の裏にカボチャがたくさんなっていたし、今回はあれを使ってパンケーキを作りましょう。すぐに招待状を用意しないとね!」シレネはそう言うと、テーブルの上に残っているクッキーの山を見つめました。


 シレネはきれいで大きなはっぱをいくつか用意してクッキーを包み、便せんにハロウィンパーティの旨を記載して括り付け、前にビーンズがパンケーキのかけらを運んで宣伝したときみたいに籠の中に詰めて、ビーンズに渡しました。


「これでどう?あ、そうだ。今回はみんなの好きなものを一つ持ち寄ってもらいましょう!お菓子でも飾りでもなんでもいいと伝えてね。その方がきっと楽しいと思うわ!」


「それはいい案だね!それじゃあ僕はみんなのところを回ってくるよ!」ビーンズが張り切って足で籠を掴み、大急ぎで飛んでいきました。


「それじゃあ私はお菓子の準備をしなくちゃね!」シレネはお菓子を作るために、黒いワンピースドレスの上にエプロンを付けます。

「えっと、どんなお菓子を用意しようかしら。」


 シレネの考えたメニューはこうです。まずはメインのパンケーキ。森の住人達と仲良くなったきっかけですし、シレネの得意料理です。お菓子のメインとしては欠かせません。

 裏庭のカボチャと街で調達したシナモンとナツメグを使い、シナモンの香りにスパイスの効いたカボチャのパンナコッタパンケーキを作ります。飾り付けにはカボチャのランタンを模したクッキーとベリーをいくつか飾ります。


 次にゴーストカップケーキです。こちらは少しビターに、チョコレートのカップケーキを作ります。甘さ控えめの生クリームでゴーストを模した飾りつけをして、甘いものが得意でなくても食べられるような仕上がりに。


 ついでにカボチャやゴースト、骨の形の賑やかなクッキーを作ります。それからがっつり食べたい人向けに、カボチャでパイも焼いてみました。他にもスープやジュースを用意しましたが、これだけあればいいでしょう。シレネが一仕事終えると、もうすでにお昼を過ぎていました。


 味見もかねて、小腹を満たすために形の欠けたゴースト・クッキーをつまんでいると、呼び鈴を誰かが鳴らします。

「はーい!」元気に扉を開けると、ドワーフのおじさんたちが数人、玄関の前に立っていました。


「ご招待ありがとう、お嬢さん。まだ早いとは思うが、会場の設営に手伝いが必要じゃないかと思ってね。こちらからの持ち寄りのついでに手を貸したいとやってきたんだ。」おじさんが渋い声で言いました。


「それは確かにありがたいわ!今からランタンとろうそくを用意する予定だったけれど、飾りつけを作るのに人がいてくれたらありがたいもの。」シレネはありがたく手伝いを受け入れました。


「それでなんだが、まずは私らから持ち寄りの品を。カボチャをくりぬいて作ったランタンだ。急ごしらえの品ではあるが、私らが作ったものだ。なかなかいい仕上がりだろう?みんなで作ったから数もある。会場にはこれらを飾ったらどうかね?」ドワーフのおじさんたちの後ろには大小さまざまな形のカボチャのランタンが積まれていました。


「とてもいいわ!今からテーブルを出す予定だったから、さっそく並べてしまいましょう!点灯は魔法で一斉にやるわ。みんなが揃ってから火をつけましょう。その方がきっと楽しいはずよ!」シレネはとても喜びました。


「ただいまシレネ!なんだかとってもいいにおいがするぞ!」ビーンズも森を一回りして戻ってきました。

「わぁ、ドワーフのおじさんたち、それにカボチャのランタンがいっぱいある!」ビーンズはカーと驚いたように鳴きました。


「これからおじさんたちと一緒に飾りつけをしようと思っていたの。ビーンズも少し休んだら手伝ってね。」シレネはお昼のために用意したパンを、おじさんたちにも振舞いながら言いました。

「分かったよ!」ビーンズもパンのかけらをもらい、もぐもぐと食べながら応じます。


 そんなこんなでおじさんたちの手伝いもあり、会場の設営は難なく終わりました。そろそろ夕暮れ時です。持ち寄りの品を持った森の住人たちが、少しずつ会場に集まり始めました。


「シレネちゃん!ご招待ありがとう!私たちは森でたくさんベリーを摘んだわ!」

 ウサギさんたちがぴょんぴょんと跳ねながらやってきました。大きなはっぱにたくさんの野イチゴが包まれています。


「ありがとう!パンケーキに使ったからちょうど在庫を切らしていたのよね。いくつかカップケーキに乗せて、残りはそのまま食べられるようにしましょう!」シレネはウサギさんたちにお礼を言って、トッピングを完成させました。


 そうこうしているうちに他の住人達も集まりました。空はもうだいぶと暗くなっています。エルフたちは植物から分けてもらったきれいな枝や花を、妖精や動物たちは思い思いに好きな果実や木の実を持ち寄り、シレネはそれらを仕上げのように使っていきます。

 みんなの力でパーティを開始する準備が整い、会場もいっぱいになりました。テーブルの周りはきれいな花や枝で飾られ、上にはシレネの作ったお菓子や持ち寄りの果物などが所狭しと並べられています。


「これで準備が整ったわ!みんな今日は招待に応じてくれてありがとう!」


 シレネが一声発すると、わぁっと歓声が上がりました。エルフたちは端のほうで上品に微笑んでいます。あたりはもう薄暗く、ランタンに火を灯すには都合のいいような頃合いです。


「それじゃあ、カボチャのランタンに火を灯すわね!3・2・1!」

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