第71話 再興に向けて

 リンが自分の名前を思い出してから2日が経過、

 廃村だった場所は綺麗に片付けられ使える建物は修復に動き始め、カラマタのギルドメンバーは徐々に戻っていった。


 村を立て直すリン達もこれからの動きを話し合っていた。


「農作?意外だな、リンはそんなこともできるのか?」

「マクセル、しれっとディスってるぞ。多分できる、俺のいた世界での記憶が蘇る中で俺自身がやってたことも思い出せてきたんだ。農作は、その中の一つみたいだ。」

「作った野菜を活かして料理もできるなんて、リンくんは本当に何者だったんだい?」

「うーん、十華一刀流トウカイットウリュウを会得した人間なのは違いないと思うけど、それ以外のことも、最低限生活できる力は養ってたみたいだ。」


 リンは村を再興する為に2つ提案していた。



 1つ目は、名産品を作ること。


 イリオスでは多くの地域で特産品を持っている。

 人気な野菜や畜産、装飾品や武具など多岐にわたる。

 この世界で需要こそ少ないが、希少な品である魔術を使うための七石もその一つになる。


 そんな中で、この村でも他にはない名産と呼ばれるものを作ろうとしていた。

 それが、田畑を活用した栄養満点の食材達だ。


 リン達のいる村は、周りの地形も含めて農作に適した栄養素の豊富な土があり、イリオスで農産物を特産品としている地域は少ないため希少価値が高いと予想した。

 そして、2つ目の目的も絡んでいる。


 この村でしか味わえない新しい料理を開発し、唯一無二のグルメ村を作ろうとしている。


 理由は簡単、食事はどんな人間においても必要な要素であり、評判になれば多くの人が出入りし、リンのことを知る、または元の世界に戻るきっかけを得られるチャンスが増すと考えた。


 田畑を作り上げるのはリンの知識と、カラマタからの応援によって。

 料理はリンともう1人依頼した人がいる。


「アテネで世話になってるカフェの人をスカウトしたいと思ってる。あの人は料理スキルが高いだけじゃない、接客でお客さんを楽しませることができてた、即戦力として来て欲しいと思ってる。」

「なるほど、確かに効率的な村の発展方法な気がするね。なら、あたしはこの村に必要な建物や配置を考えたい、兄さん、手伝ってもらえる?」

「おう!そしたら俺とエリ、リーナでカグヤをサポートしよう!」

「僕はリンくんの作る田畑を勉強したい、お願いしていいかい?」


 役割分担が決まった。


 リン、オウロは田畑を作る。

 そして、これから数週間先に開店するお店の看板娘として、アテネのパンケーキ屋からスカウトするべく手紙を送った。


 カグヤ、エリ、リーナ、マクセルが村の展開を話し合う。

 カグヤ以外はカラマタでの仕事もある為、交代で参加することになった。



 場所を移し、リンとオウロは鍬と種を持って田畑を始める位置に向かった。


 その途中、


「あ、あの。」

「ん?あんた達は確か、この村に残っていた。」

「はい、先日命を助けて頂いた者です。その節は、本当にありがとうございました。」

「気にしないでくれ、本当に無事で良かった。」

「わしらはもう若くないが、その格好を見るに畑でもやるのかい?良かったら、わしらにも手伝わせてもらえないかい?」


 まさかの依頼に、リンは目を大きく開く。

 リンは知識や技術を持ち合わせているが、人手は確実に足りていない。


 そこに、命の危険を感じた村に戻って手伝いを申し出る2人の勇気に驚いたのだ。


「いいのか?俺はとても助かるけど、正直安全が保証された地域じゃない、また同じ危険だって─。」

「そうであっても、わしらは命の恩人に何も返さないでこの先死ねるほど腐ってはおりません。恩返しというのは、人が生きていく上で必ず必要な行いだと信じとるもので。」

「……分かった、よろしく頼む。もし、危険が迫ったらすぐに教えてくれ、必ず助ける。」

「ありがとうございます、頼もしいお方。お名前をお聞かせ頂いても?」

「リンだ、リン・ウラノス。これからよろしく頼む。」


 リン、オウロ、老夫婦は荒れた土地を見つめる。


「ここをまずは耕して農作のスタート地点にしたい。種は、トマトとナスの2つだな。」

「分かりました、では種は我々が。耕すのはお任せしてよろしいですか?」

「もちろんだ、オウロ、2人でやるぞ。」

「了解!」


 リンとオウロは土地を耕し、畑を作っていく。


(なんだろう、この温かい気持ち。元の世界だと、俺はこんなことをして生きてたのか?懐かしさとか、楽しさとか、いろんな気持ちが湧いてくる。いいな、この暮らし。)

「リンくん!そんなに使っても種が足りなくなるよ!」

「え?あ。」


 リンは20mほど耕すのに集中し、オウロの3倍は耕していた。


「やりすぎたな、ありがとうオウロ!」

「では、わしらが種を植えていこうかね。」


 老夫婦が種を植えていく際に、豆知識を教えてくれた。


「2つの種で植え方を変えてあげれば、育ちが早く栄養も高くなるんだよ。野菜野菜にあった植え方をマスターすれば、より良いものが作れる。」

「そんなこともあるのか、勉強になるよ、ありがとう。この土地はあまり水をあげすぎないほうがいいな、水を含みやすい土なのと雑草の少ないところから見て、過剰な水は腐らせる原因になりそうだ。」

「さすが、リン殿はすごいですな。では、この農地の管理は任せてくだされ、わしらが作り上げてみせます。」

「ああ、甘えさせてもらう。オウロ、俺たちはカグヤのフォローと、資金稼ぎでカラマタのクエストをこなしていこう。金がないと、村なんて作れないからな。」

「そうだね、なんだかこれまでよりも生きてる感じがして楽しいね!行こうか!リンくん!」


 リンによる、村復興プロジェクト開始。

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