第24話 似た匂い
スタンピードによって、多くの戦闘員が負傷し、モンスター側が優勢になっていた。
レイが個人の力で劣勢を跳ね返すためにイノシシ型や蜂型を倒し、数を減らしていくが個人の力だけでは厳しい戦いであった。
辺りで悲鳴が木霊し、助けに行こうとするレイだがイノシシ型に道を阻まれ、動きが取れなくなる。
目の前で虎型に殺されそうになっていた戦闘員は、乱入してきた1人になって助けられた。
「……っ、生きてる、のか。」
「早く退いて、そこにいられては邪魔。」
全身銀色の装備をつけた者が参戦し、その手に持つ特殊な武器で戦い始めた。
鋭い声で放たれな言葉に恐れをなした男は、足を引き摺りながらその場から離れる。
参戦した者の手には1mほどの剣に、刀身の下には直径44ミリ程度の銃口が装着されており、特殊な形状であった。
その姿を見て、レイはとある人物を思い出す。
(あいつって、騎士団長じゃないのか?……雰囲気は少し違うな、兜に赤い羽が付いていないし、全身銀色の装備ではあるけど色味が薄い。あいつと連携できたら優勢にもっていけるかもしれない!)
レイは目の前のイノシシ型を避け、鮮血の銀髪の方へ向かう。
レイが迫っていることに気が付いたのか、レイに向け剣を向ける騎士。
その剣の下に装着されている銃口から、赤い光が見える。
剣の持ち手に力が込められるのが見てとれ、さらに光が強くなる。
(あの穴から、何か撃ち出される??嫌な予感がする、背後のイノシシ型から距離を取るか。)
レイはさらに加速し、騎士の方に向かうとともに特殊な剣の銃口から赤い光が放たれる。
レイの目に映ったのは、赤い光と共に熱を帯びた何かがレイの頭上を超えてイノシシ型に直撃。
1発のそれがイノシシ型を1体倒し、さらにもう1発放たれ2体のイノシシ型が魔石に変わる。
(オウロ達との戦い方とも、ペレの村で見た武術書にも書いてなかったはず。でも分かる、あいつがいれば状況がひっくり返る。)
騎士の背後に虎型モンスターが現れ、大きな爪を振り下ろす。
「っ!避けろ!」
「……。」
騎士は背後から迫る虎型モンスターの攻撃を、読んでいたかのように避けて、特殊な剣を構える。
だが、その剣で攻撃に移る前に、
「
レイの渾身の一撃が虎型に振り下ろされ、騎士を襲った虎型が倒される。
レイの素早く確実な攻撃に、騎士はどこか驚いているように見える。
「おいっ、あんた、今は仲間って思っていいんだよな?」
「……あなたの敵は、誰だ?」
「今はスタンピードだ、早くしないと多くの人が死んじまう!」
「了解した、なら今は共闘させてもらう。」
「ああ、頼む!」
レイと騎士はひとまず連携に徹して、辺りのモンスターを見る。
戦闘員が苦戦している場所は3箇所。
虎型モンスターが2体、イノシシ型モンスターが2体、蜂型モンスターが6体目に映る。
倒す優先順位、戦闘員の危険度などを目で確認し判断を騎士が意見を述べる。
「強き戦士よ、虎型は任せていいか?」
「ああ、空飛んでるのはあんたの方が得意だろ?」
「ええ、そっちは任せて。もう1体の虎型は2人で消しましょう。」
「OK、頼む。」
レイは虎型に向け突き進むと、レイの姿をキャッチした虎型が1体その自慢の爪で引き裂こうと迫ってくる。
この瞬間、レイの頭に電気が流れるような気がしていた。
(なんだ、今の感覚。……これなら、いける!)
レイは剣を腰にしまい、虎型が目の前に迫るタイミングまで何もしないで待つ。
「がぁぁ!!」
地面を削りながら、鋭い爪が振り下ろされる。
その爪がレイに達する1秒前ほどのタイミングで、再度レイはあの攻撃を発動させる。
「一の型、
剣を腰にしまい、抜刀とともに斬り上げた一撃が虎型を真っ二つにする。
「グルルツ!」
「もう一体いたよな、来るなら来いよ。」
レイと虎型は一定の距離を保って、戦闘を継続する。
その間に、騎士は剣を構え再び銃口を赤く光らせ、蜂型が迫ってくるなか、3回銃声をさせ蜂型を4体倒す。
攻撃を避けて迫ってきた2体は、針で突き刺そうとするも見た目とは裏腹に軽やかに動く騎士のステップで避けられ、その勢いを殺さずに剣で2体とも切り裂く。
「……、あと3体か─。」
「いいや、2体だ!」
レイが大きく振り下ろした剣が、さらに虎モンスターを倒す。
2人は背中合わせに武器を構え、レイは息をあげる。
騎士は息こそあげていないが、方が上下するほどの疲労は溜まっているようだった。
「危険対象はあと2体のイノシシ型か?」
「ああ、早く終わらせてカバーに回るぞ。」
「背中は任せるぞ、謎の騎士!」
「了解した、名もなき戦士。」
そこから2人は、戦闘員を襲っているイノシシ型に向け、数秒で距離を詰め、
「
レイは宙を舞う蝶のように剣を振り抜き、イノシシ型の体を切りつけ、片方に関しては足蹴りを顔面に入れる。
ふらついたイノシシ型に対し、
「あなたも眠りなさい。」
特殊な剣で切りつけられたイノシシ型一体が倒される。
2人の攻勢に焦りを見せたイノシシ型は、レイの接近に反応にできず、
「終わりだ!」
剣で顎を切り上げ、そのまま高く飛びあがり、落下とともに振り下ろしてトドメをさす。
そこから戦闘を10分ほど続け、人間側の勢いが復活してきたタイミングでスタンピードを起こしたモンスター達が徐々に帰って行く。
「くそっ、いかせるか─。」
「やめなさい、1人で向かっても無駄死にするだけ。」
「……ちっ、分かってる。でも、体が勝手に動いちまいそうだった。」
「……それはあなたの優しさだと思う。でも今は耐えて、怪我人を治療するのが優先。……騎士団も集まってきた。」
負傷者多数の戦闘員の場所に、騎士団が現れ残党処理をして行く。
負担が大きかったレイは、闘気を解除しその場に座り込む。
「ふぅ、助かったよ、銀色の騎士。」
「いや、やるべきことをしただけ。」
「……一つだけ。あんたに聞いてもいいか?」
「なんだ?」
低い声で答える銀色の戦士。
レイが質問した内容は、
「あんた、セントじゃないのか?」
「セント?それは騎士団の長のこと?違う、私は私です。」
「……じゃあなんで、あんたとセントから似た匂いがするんだ?」
レイの鼻はいったい何を感じたのか?
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