第19話 緊急クエスト

 レイとオウロは王都アテネから馬車に揺られてカラマタに帰還した。


 十華一刀流トウカイットウリュウについての情報は何も得られなかったが、騎士団長との出会い及び王妃の妹に認識されたオウロ。

 これから何か起きるのではないかと、レイは心のどこかで感じていた。


 納品クエストは問題なくクリアし、報酬の銀貨3枚はオウロが気を使って銀貨1枚と銅貨5枚で2人分もらい、レイと等分していた。


 日が落ちる前に帰ることができ、まずはギルドに向かった。

 レイはお土産を4人分買っていたため、一刻も早く渡したいという気持ちが強かった。


 大きな木のドアを開けると、ギルドは元気が出るほどに賑やかだった。

 オウロがエリに報告する。


「ただいま戻りました。」

「お疲れ様です!オウロさん、レイさん!アテネまでお疲れ様でした!」

「エリさん、遅くなりました。クエストは問題なく納品完了しました。その後に、図書館でレイ君のことを調べたんですが、特に情報は手に入れられませんでした。」

「あら、残念でしたね。でも、まだチャンスはあるはずです!レイさん、一緒に頑張りましょうね!」

「ああ、ありがとう。あと、エリに渡したいものがあるんだ。」


 レイは懐から箱を取り出してエリに手渡す。


 丁寧にラッピングされた箱を見たエリは、一気にテンションを上げて寄ってくる。


「えっ!?まさか愛の告白!?」

「いや、いつも助けられてるからお礼をしたいと思ったんだ。エリの楽しそうな笑顔は、俺だけじゃないみんなを支えてくれてるだろうし。」

「そんな、レイさんもしかして記憶を失う前は女性をたくさん虜にしてたんじゃないですか?扱いに慣れてそうですし、こんなこと、普通しませんよ!」

「普通しないのか?すまない、俺は普通があまり分からないから、これから気をつける─。」

「いえ!嬉しいので続けてください!」

「あははっ、レイ大変そうだね。」


 苦笑いしながらオウロが見つめると、

 追加でギルドに入ってくる人が。


「おおっ!レイ、オウロ、戻ってたか!」

「お疲れ様です、レイさま、オウロさま。」

「帰還しました、ギルド長。それでは、僕は先に戻りますね。あ、レイ君はみんなに用があるみたいだから、置いていくよ!」

「なんだ、俺たちに用があるのか?」


 オウロはギルドから出ていき、宿舎の方へ向かう。



 ギルドに残ったレイは、


「ギルド長、リーナ、これ受け取ってくれ。」

「なんだ、これは?」

「日頃の感謝をしたいと思って、アテネで買ってきた。好みだったらいいが。」


 ギルド長マクセルには、筋肉の増幅によく使われる肉を挟んだサンドイッチを、

 リーナには赤い宝石が埋められた、ブレスレットを渡した。


「おおっ!これはタンパク質重視の肉料理か!センスがいい!良すぎる!一緒に食べよう!レイ!」

「これは、とても美しいですね!わたくし、このような物もらったことありませんでしたので、とても嬉しいです!ありがとうございます!」


 エリだけでなく、マクセルとリーナの笑顔を見て、レイは心が温かくなる気がした。


(なんだ、この感覚は。心が、熱くなってる?いや、そんなことありえない……わけじゃないのか?なんか、良い気分だ。)

「あー!リーナのアクセサリーも綺麗!これは、私も負けてられない!レイさん!明日からまた頑張りましょうね!私にできることはなんでもさせてもらうから!」

「え?姉さんももらったの?レイさま、どんな怪我でもわたくしが診ますからすぐ来てくださいね!少しの怪我でもちゃんと診せるんですよ!」

「あ、ああ、2人ともありがとう。」

「ほらレイ!早く一緒に食べるぞ!俺の筋肉弁当も分けてやろう!」


 レイはマクセルと共に買ってきたサンドイッチを食べ、いつもマクセルが食べてるという筋肉弁当も分けてもらっていた。


 脂身の少ない肉と、サラダがメインのおかずに、一合ほどのご飯が。

 驚きながらもレイも分けてもらい楽しい時を過ごした。


 笑顔が飛び交い、自分の力で楽しい雰囲気を作り出したレイ。

 その環境を、レイはとても心地よいと感じていた。


(ああ、ここに来れて本当に良かった。オウロ、俺を見つけてくれてありがとう。)


 レイが心の中でオウロに感謝していると、



 暖かさに満ちたその雰囲気を破壊する知らせが入ってくる。


 ギルドのドアが急に開けられ、息を切らせながら1人の男が額から血を流しながら走り込む。


「だ、誰か助けてくれ!人が、人が!」

「おい、落ち着け、何があった?」

「ギルド長、隣町の人が、見たことのない、二足歩行に!」

「っ!?」


 男の知らせに、ギルドの戦闘員達はざわつき始め、すぐに動くことができなかった。


 そんな誰もが予想していなかった内容に驚きを隠せない中、レイは迷わず外に出る。

 体が勝手に動いたと言っても良い。


 合わせて、駆け込んできた男の声を、オウロも耳にしていたようだ。


「レイ君!」

「オウロ!」


 オウロが走ってレイと合流し、


「ギルド長!これは、緊急クエストってことで良いですよね?」

「ああ、周りの町にも応援を依頼する。俺も後で向かう、先陣はレイ、オウロ、任せるぞ!」

「はい!」

「分かった!」


 レイとオウロは長旅の疲れを見せずに、走り抜けていく。


「ギルド長!私たちにここはお任せを!」

「各戦闘員へ、緊急クエスト発生!隣町に至急応援を!補助員はギルドに集まってください!臨時指揮は、わたくしリーナとエリが行います!」

「任せるぞ、2人とも!お前たちついて来い!同志を助ける時間だ!」

「おおっ!!」


 マクセルを中心に救助部隊を組むカラマタの戦闘員。

 ギルド長の逞しい声が、弱気の風に吹かれていたギルドの皆を勇気付けた。





 先に隣町に走るレイとオウロ。

 走り込んできた男の話を聞いた瞬間、レイは嫌な気配を感じ取った。


(俺の体が、二足歩行のモンスターって聞いた瞬間に何かを感じた。体の芯から冷えるような、何か嫌なものを。何が起きてるんだ、隣町で。)


 レイとオウロは地面を割らんばかりに強く蹴り、隣町に向け全速力で向かった。


 カラマタに急遽入ってきたモンスター襲撃の知らせ。

 はたして、2人を待つのはいったい何者なのか?

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