第13話 王都へ向けて

 食事を終えた3人は、オウロがレイを支えながらギルドに向かう。

 体を引き摺っているが、顔に痛みは浮かんでいない、レイの体が自信で話していた頑丈というのは嘘ではなさそうであった。


 ドアを開くと、


「こんにちは……レイさん!目が覚めたんですね!」

「何!?レイだと!?」


 受付嬢エリとギルド長マクセルが気づき、マクセルはレイの目の前までダッシュで寄る。

 その動き、イノシシも驚くほどの猪突猛進ぶり。


「おおっ、良かった良かった!生きててくれて、本当に良かった!お前のような逸材を死なせては、俺の筋肉魂が全てのイノシシ型を消し飛ばすところだった!!ところで、体の方は─。」

「ギルド長、生態系バランスが崩れるのでやめてください。あと、どさくさに紛れて怪我人のレイさんの筋肉を見ようとしないでください。」

「は、はい。」


 エリの圧力に負け、マクセルは小さくなりながらギルドの中へ戻る。

 もはや、どちらがギルド長か分からない。


「レイさん、生きててくれてありがとうございます!合わせて、申し訳ございません。わたくしの判断ミスで、命に関わる危険に晒してしまい─。」

「いいえ、エリは何も悪くない。むしろ、感謝しています、俺に楽しいという感情を思い出させてくれて。」

「あ、ありが……えっ!?」

「感情が戻ったのか!レイ!」


 驚くエリとマクセルに対し、レイの感情が一部戻ったことと、記憶も欠片程度だが取り戻したことを皆に説明した。


「なるほど、であればこれからも生きていれば取り戻せるチャンスがあるかもしれませんね!」

「ああ、わがままだと思うけど、みんな、これからもよろしくお願いします。俺に、力を貸してほしい。」

「もちろんです!心なしか、レイさん明るくなりました?」

「ん?自覚はないけど、どうだろう。」


 今日はギルドに顔を出すだけとし、完治するまで1週間は要する見解だったため、レイはそのまま宿舎に戻った。


 宿舎の戻れば、さらに元気づけてくれる人が。


「あらっ!目を覚ましたんだね!確かあなたは、レイだったかしら?」

「はい、心配をかけました。」

「いいのよ!生きてれば安いわ!そうだ、食欲はある?私の新作、食べないかい!?」

「ああ、お願いします。」


 レイが席に着くと、香辛料のいい香りが届く。

 焼いた肉の香りに加え、落ち着く香りも添えられていた。


「はいよ!チキンのハーブ蒸しだよ!」


 レイの目の前に、直径60㎝程の鳥を丸々一羽大きなハーブで包んで焼いたものが置かれる。

 外の皮はパリッと、ナイフで斬れば肉汁が溢れるパーティー会場などで置かれていそうな逸品だ。


 病み上がりのレイであったが、あまりにも迫力のあるビジュアル且つ、美味しそうな匂いに食欲が一気に上がる。


「すごいな、食べていいのか?」

「もちろん!お替わりもあるからどんどんどうぞ!」

「え、お替わり?わ、分かった。」


 レイは頭の中で、何羽分調理したのだろうかと考えたが、今は深く考えず目の前の食事に集中しものの10分で平らげた。

 骨以外綺麗に食べつくし、水を飲んで一息つく。


「ごちそうさまでした、最高においしかった。」

「お粗末様!お替わりはいいのかい?」

「ああ、本調子だったら食べたいんだけど、これ以上食べたら動きが鈍くなってサポーターの人達に怒られそうだから、今日はやめておくよ。」

「あいよ!そしたら、もっといろんな料理を試すから、是非食べておくれよ!あんたは誰よりもよく食べる人だから、本当に作り甲斐があるよ!」

「ありがとう、お金はここに置いて─。」

「いいよ!これは私が好んでやっていることだから、大食いの人は大歓迎だから、お金より生きて帰ってくることを代金とさせてくれ!あ、デザートにプリンが─。」


 補助員の女性はデザートを取りに厨房に向かう。


 何気ない彼女の優しさから、とても温かい気持ちを感じたレイ。


(すごい、これが、人の温かさなのかな。俺は、本当にいい所に連れてきてもらったんだな。)



 それから連日、宿舎で安静にしていたレイは多くの料理を食べたおかげか、1週間完治にかかると思われていたが、まさかの3日で完治させた。


 医師がレイを診察し、初回の自分が診療ミスをしたのではないかと疑うレベルの速さであった。




 そして、レイはギルドに向かった。


「おはようございます!あ、レイさん!今日から復帰ですね、噂になってましたよ、驚異的すぎる回復力です!」

「おはようございます、エリ。オウロは来ているのか?」

「僕をお呼びかい?」


 レイの声に反応して、オウロが現れる。


「ああ、おかげさまで完治できたから、王都まで付き合ってほしいんだ。」

「王都アテネか、了解。そしたら、エリさん、王都向けのクエストはありますか?」

「そうですね……少し重たいのですが、荷物の運搬があります。報酬は銀貨3枚ですが、如何ですか?」

「問題ありません、受注します。」


 オウロは待っている間に、


「そうだ、レイ。これを受け取ってくれ。」

「ん、これは?」


 オウロは銀貨20枚を渡してくる。

 その重さは、今までのどの報酬よりも物理的にも重く、気持ちとしても重く感じた。


「この前のイノシシ型亜種の報酬だよ。」

「……オウロは自分の分取ったか?」

「ああ、これは君の分だよ─。」


 レイはオウロの話しを遮る眼光で目を見つめる。

 レイは分かっていたのだ。


「嘘だな、オウロは俺に全額渡そうとしている。」

「えっ!?」

「オウロが約束してくれただろ、俺達でクエストをこなすって。だから、これは等分じゃなきゃいけないんだ。」

「でも、僕は君を守れなかった─。」

「オウロが俺を守りたいと思ってくれるなら、俺もオウロを守りたい。俺の気持ちも受け入れてくれたら、これからもっと楽しくなる気がする、


 レイは銀貨を半分返し、オウロに握らせる。

 オウロは眉にしわを寄せ、申し訳ない表情を浮かべながらも、受け取る。


「お待たせしました、発行しましたのでご出発できますよ!」

「ありがとう。行こう、オウロ。俺を、連れ出してくれ。」

「……ああ、了解した。」




 カラマタから王都アテネまでは、馬車で3時間ほど。


 2人は馬車に乗り、揺られながら王都に向かう。

 辺りは綺麗な自然と舗装された道。


「なあ、オウロ。」

「どうした?」


 オウロがレイの顔を見ると、優しくレイは微笑む。


「これから、もっと楽しくなりそうだな!」

「っ!?ああ、僕がそうして見せるよ。」

「僕がじゃない、俺達で楽しくするんだ!」

「ははっ、敵わないね、君には。」


 2人はそのまま王都アテネまで向かった。

 そこで、彼らを待ち構えるものは何なのか。

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