第253話 イリオスへ帰還

 支援課(ダーヴ)は、ムクナに守られながらセラがユグドラシルに展開されている術式を解読し、ワノモトから姿を消した。


 ムクナたちにワノモトを任せ、リン達はイリオスの事態を収束に向かった。


 光に包まれたリン達は謎の白い空間をふわふわと移動している感覚であった。


(なんだ、この感覚。少し、懐かしさすら感じる、そうか、俺はやっぱりこの光を通ってイリオスに行ったんだな。周りにみんなはいない、同じ場所にたどり着けるといいが。)


 リンはこれからの動きについて再度確認していた。


(最終目的地は王都アテネ。その前に、シオンとカラマタの様子を見て情報も集める。俺たちがいなかった1日で、身喰らう旅団がどれだけ動いたかで状況も変わってるはず。臨機応変に、作戦を立てないとな。)


 リンは流される感覚に身を任せ、先を見据える。


 すると、


(ん?少し先がさらに明るくなってる、出口か?よしっ、気を引き締めないとな。)


 さらに明るい光がリンを覆う。




 次目を開くと、


「……っ、着いたのか。ここは、イリオス、だな。どの辺りだ?」


 リンは辺りを見渡し、イリオスに戻ってきたことを確認する。

 辺りには木が生い茂り、人もモンスターも見当たらない。

 だが、ワノモトでないのはすぐに理解できた。


「セラ!アンジェ!オウロ!誰かいないのか!!」


 リンの声が全体に響き渡るが、返事がこない。

 シーンっとした空間が広がる。


「まさか、みんなバラバラの最悪のパターンか?」


 リンが不安を覚えていると、


 急に新たな光が3つ現れる。

 そこから、


「っ、着いたのね。」

「あ、兄さん!セラさん!」

「僕らは離れ離れにならずに済んだみたいだね。」


 セラ、アンジェ、オウロが遅れて現れる。


「おう、まずは予定通りだな。時間が惜しい、セラ、オウロここがどの辺りかわかるか?」

「そうね、王都にはあまり近くないわね。オウロは何かわかる?」

「そうですね……古代騎士団時代に遠征先で来たことがある気がします。多分ここは、シオンから数キロ離れたところだと思います。」

「じゃあ、逆に捉えれば最初にシオンに迎えるってことだな。カグヤ、レム、ルビアたちが心配だ、まずはシオンに向かおう。」

「了解、僕が先頭を行くよ。歩いてれば記憶が蘇ってくると思うから。」


 4人は草原から、人の手で整備された道に出る。


「ここからシオンに迎えるのか?」

「少なからず、人が集まる場所には迎えるはずだよ。僕の感覚で申し訳ないけど、シオンのあるだろう方角に行こうか。」

「頼りにしてるぜ、オウロ。いつもオウロは頼りになる仲間だからな。」

「嬉しいこと言ってくれるね、僕は君を利用しただけに変わりないのに。」

「それでも、オウロがいながったら俺はペレの村で大切な仲間に出会うことなく生きてただろう。初めてのきっかけをくれたのはオウロだ。」


 リンの言う通り、感情と記憶を失っていたリンは、誰かに利用されることが多かった。


 オウロもその1人であることに変わりはない。だが、リンの人生を変えるきっかけを作った1人であることにも変わりはない。


 オウロの感覚で進んでいた支援課(ダーヴ)。



 そこへ、


「誰かぁぁ!」

「ぐぉぉ!!」


 男の悲鳴と、それと同時に大きな野生動物のような声が響く。


「っ!?くそっ、嫌な予感が当たってそうだ。身喰らう旅団は予想以上に動いてるのかもしれない。」

「リン!私たちのやることは変わらないわよね?」

「当たり前だ!悲鳴の元に向かうぞ、これ以上命を奪われてたまるか!」


 道を外れ、リン達は悲鳴の先に向かう。




 リン達から少し離れたところで、


「っ、な、なんで、ここに、こんな化け物が!」

「ぐぁぁ!」


 腰を抜かし、その場に倒れる男の前には、両手に金属のグローブを装備したゴリラ型モンスターが。


 怒りに支配されているのだろうか、顔はダルマのように赤く、鼻息も荒い。


「がぁぁ!!」


 ゴリラ型の鋭い拳が、男に向け振り下ろされる。


「だ、誰かぁ─。」

「オウロ!」


 リンがスライディングして男を助け、そのままゴリラ型から距離を取る。


 地面に突き刺さった拳に対し、


「初式(ショシキ)、雷光(ライコウ)。」


 腰を落とし、鋭い正拳突きが直撃する。


「うがぁ!!」

「あ、あんた達は?」


 男はリン達に助けられ、近くの木に寄りかからせられる。


「そこで待っていてくれ、俺たち支援課(ダーヴ)がこいつを引き受ける。」

「あ、ありがとう。でも、気をつけてくれ。こいつにはいろんな町がやられてる、相当手強いモンスターだ。」

「……そうか、分かった。なら、こいつにやられたみんなの分も俺たちが晴らさないとな。」


 リンとオウロが正面から対峙し、

 セラとアンジェは背後に位置する。


「ぐぉぉ!!」

「でかい声だな、お前も身喰らう旅団に何かされた被害者なのかもしれない。だけど、これ以上人を殺めてしまう前に、俺たちが止めてみせる。」

「リンくん、襲われてた人からも情報を聞きたい、彼にも被害がいかないように気を付けよう。」

「ああ、もちろんだ。イリオスに戻って最初の壁、みんなで乗り越えてやろうじゃねえか!」


 リン達は暴れ狂うゴリラ型モンスターとの戦闘を開始した。


 はたして、今のイリオスはどうなってしまっているのか。

 それを知る為にも、まずは目の前の敵を倒すのが、今の役目。

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