第214話 ブラッドの配下

 セラも黒服と激しい戦闘を繰り広げていた。


「あなたも蒼き世界に憑りつかれた1人なのね、何でそこまでして蒼き世界を望むの?」

「ブラッド様から蒼き世界を聞いても何も思わなかったのか、愚かなお姫さん!生きるべき人間が、今の世界じゃ金や権力にものを言わせる奴らに淘汰されている。そんな世界が正しいわけがない、なら必要な人類を選別するのが一番安全で効率的だ。」

「それをブラッドに任せるつもり?1人の正義感に任せて世界を作るなんて危険だと思わないの!」


 銃剣と短剣が正面からぶつかり合い、火花を散らす。


「ブラッド様は全ての人を超えた方だ、もはや神と言っても過言ではない。」

「人は神にはなれない、人は皆人よ、ブラッドもその1人に変わりないわ。」

「それはあんたが認めたくないだけだろ、自分より優秀な部分しかない人間を、認めるような人には見えないからな!」

「あなたに私の何が分かるのかしら、まあいいわ、あなたも捕らえて話を聞かせてもらうから!」


 セラは黒服と武器を交わし、複数回火花が散る。


 スピードで劣るセラだが、相手の動きを一つ一つ冷静に分析し、対処することで戦いを有利に進めた。


 その状況に焦りを見せた黒服は、


「戦うつもりがないなら、そろそろ死んでおけよ!さっきから守ってばかりじゃ、勝てねえぞ!」

「悪いけど死ぬつもりはないわ、私が死んだら悲しんでくれる人たちがいるのだから。それよりあなた、顔色が悪いようだけど、大丈夫かしら。」

「へっ、そんな虚言にのるかよ!」


 音を置いてくるスピードで短剣を突き刺す黒服。



 しかし、


「輝け、茈(スギライト)。」


 銃剣に魔術を発動し、吸い込まれるような濃い紫の光を放つ。


 すると、


「っ!?」


 黒服のスピードが目に見えて遅くなり、短剣がセラに届く前にその場に立ち止まる。


「な、なにを、しやがった。」

「私の戦い方を知らないなら勉強不足ね、もっと周りを知った方がいいわ。」


 セラの放つ濃い紫の光は、光を受けたものの重力を増加させ、その場に伏せさせるほどに重くなった。

 黒服も動けずに片膝をつく。


「くそっ、魔術に、こんなものが、あったのか。」

「下手に動かない方がいいわ、あなたにかかる力を無理やり抜ければ今の脆い体を壊しかねない。」

「脆い体だと、舐めたこと言ってくれるじゃねえか。こんなの容易く吹っ飛ばして─。」

「やめなさい!」


 黒服が無理やり動こうと地面についた膝を上げようとする。



 その時、


 バギッと鈍い音が響く。


「っ!?あぁ!!」

「バカなことをするんじゃないわよ。」


 セラは魔術を解き、黒服の短剣を蹴り飛ばしてそばによる。


「あ、足が。」

「そうよ、今あなたの足の骨が折れたのよ。薬を使って力を得たあなたは、自分の限界に気づかなかった。だから無理に動かそうとした体が、傷を負ったのよ。」

「くっ、なぜ、俺が、あんた如きに。」

「100歩譲って、あなたが蒼き世界に魅力を感じることは否定しないわ。ただ、蒼き世界について0から理解する努力をしないあなたに、寄り添う気にはなれないわね。」

「っ、ははっ、お前たちだけじゃ、何も、もう、間に合わない!」


 黒服は苦しそうな声を上げながら、さらに怒号を飛ばす。


「ブラッド様は、もう、次のステップに進んでる。必要な人を、選別して、蒼き世界を、確実に作り上げようと、している。お前たちの、居場所は、もうない!」

「そう、なら居場所がないその世界を壊して、私は今のイリオスとワノモトを守るわ。ブラッドの作る世界を、私たちは止める。」

「やれるなら、やってみやがれ。あんた、たちを、後悔しか、包まない、だろうから、な。」

「後悔はもう数えきれないほどしたわ、だから経験値が多い分後悔の数を減らしてみせるわよ。あなたは、もう眠りなさい。」

「ぐっ。」


 痛みに苦しんみながらも話していた黒服は意識が途切れ、その場に倒れ込む。


(ふぅ、今回も身喰らう旅団のメンバーを止めることができた。でも、まだ数えきれないほどの信者がいるとしたら、これから先が不穏ね。……リンの方はどうかしら?)

 セラがリンの方向を見つめると、


 黒服を担いで馬に乗せる姿が映った。


(さすが、私のパートナーね。……リンも、いろいろ思うところがある中で戦っている、私ももっと彼を見習わなくちゃね。)


 セラもギガスの呪いで黒服を凍らさないように、馬に乗せる。


「セラ!そっちもいけるか?」

「ええ、ここからシオンに向かう?」

「いや、あったわマクセルのいるカラマタに向かおうと思う。シオンに間者がいたんだ、カラマタにいてもおかしくないからな。」

「分かったわ、ついて行くから先頭は任せるわよ。」

「ああ、了解だ。」


 2人は黒服を後ろに乗せ、馬を走らせた。


 着実に身喰らう旅団の手が伸びてきており、少しずつ被害を受けているイリオス。

 アテネは完全にブラッドの手中にあり、国王ベガも敵だと認識できてしまった。


 これからリンたちは、イリオスで1番大きい存在を敵として過ごすことになる。


 はたした、ブラットの作る蒼き世界を止め、ワノモトに戻る架け橋を見つけることはできるのか?


 まずは、リンとセラは今回の一件をマクセルに伝えるため、カラマタに向かったのだった。


 リンたちを追いかけてくる身喰らう旅団がいないことに十分注意を払いながら。

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