第179話 彼の意思
リンは思い出したことを皆に伝え、ワノモトに戻るまでのタイムリミットを知った
皆は寮に向かい、休息を取る。
シオンの夜は心地よい気候で、皆過ごしやすいと好評で合った。
そんな中、1人ごそごそと準備をしている者が。
「必要なものは、全て持ったかな。後は、ここから出ていくだけ。……すまない、みんな。」
そう、オウロであった。
月が真上に昇り、皆が寝静まった頃、荷物をまとめてオウロはシオンの東門へと向かった。
(リン君が全ての記憶を取り戻した、いつ僕らと戦うことになるか分からない、最悪の未来は回避したいけど、僕にどこまでできるか。)
考え事をしながら歩くオウロの前に、
「もう行ってしまうんですね、オウロさん。」
「っ!?なんで、ここに。」
「言いましたよね、うちは相手の感情を高い確率で読み取れる。先ほどの会議のなかで、オウロさんは何か決意した顔をされていた、だから今日だと思ったんです。」
「……さすが、ウラノス家の兄妹は手ごわいね、アンジェ君。」
オウロの進む道に先回りしていたのは、アンジェであった。
「この前もお話ししましたが、うちは今オウロさんに何かするつもりはありません。そして、それが遠い日でないのは予想していました、流石に今日だとは思いたくなかったですが。」
「本当に、通していいのかい?僕は君らの情報を流すかもしれないよ、君たちの敵対する集団に。」
「……それがオウロさんの選ぶ道だというなら、うちは否定しません。
「買いかぶり過ぎだよ、僕はただの戦士だ。……いや、正確には古代騎士団に所属していた、元騎士であり、今は戦士。というのが正しいかな。」
アンジェはゆっくりとオウロに近づく。
「オウロさん、あなたが敵に回ってしまった場合、うちらは武器を向けなくてはならなくなります。望まない戦いなのは、オウロさんもご承知の上ですよね?」
「もちろんだよ、僕が本気を出したとしても3人に攻めてこられたら勝てる可能性は0に等しい。それでも、僕はやらなくちゃいけないことがある。それは、明日にはリン君が教えてくれるはずだ。」
「そうですか。オウロさん、うちらはすぐに再会する運命ですか?」
「……ずるい聞き方だね、それに答えたら僕がどこに戻るか予想が出来てしまうよね。まぁ、君ほどの人ならもう僕がどこに属しているか予想は出来ているのかな。」
「はい。……身喰らう旅団、そこがあなたの居場所、なんですよね。」
アンジェの問いに対し、オウロは肯定も否定もしない。
「オウロさん、あなたがそこにいるのだとしたら、うちらは必ず出会います。そして、状況次第では、命を奪い合うことになります、それでも行かれるのですか?」
「……ああ、僕にも譲れないものがある。リン君と出会って、セレジア様ともお話しできて、アンジェ君とも共に過ごせた日々が、とても楽しかった。でも、僕の目的は変えない、それが僕の覚悟だから。」
「分かりました、うちから兄さんたちには特に何も話すつもりはありません。オウロさんたちの行いが危険だと感じたら、うちらは容赦しません。次会う時、その時はこんな会話もできないでしょう、それにこれから敵になる人に伝えるのもどうかとは思いますが、最後に。」
アンジェはそっと、オウロの両手を包み込む。
そして、
「楽しい時間を、一緒に過ごせたこと、感謝します。どうか、お気をつけて。」
「……本当、敵に贈る言葉じゃないね。でも、ありがとう。僕も楽しかったよ、それじゃあ。」
オウロは優しく手を離し、東門から外へ出ていく。
アンジェは、オウロの後姿をしばらく見つめていた。
「どうして、兄さんも、オウロさんも、うちの周りの男の人は頑固な人ばかりなんですかね。ちゃんと、手を貸してほしいって言ってくれればいいのに。そうは思いませんか、レムさん?」
振りむいたアンジェの視線の先には、大きな木箱が。
そこから、レムがゆっくりと姿を現した。
「お気づきでしたか、アンジェさん。」
「はい、手をだされなかったので意外ではありましたが。」
「古代騎士団所属、当時エースとしても名高かったアトラス家、その長男が、オルデン・アトラス。彼なんです。」
「噂では聞いたことありますが、騎士団には過去3種類あるようですね。古代騎士団、上位騎士団、そして今の騎士団。そしてレムさんは、上位騎士団の人であると。」
「っ、誰からその情報を?」
「いえ、うちの直感です。でもその反応は、当たりということですね。騎士団にもいろんな事情があるのだとお察しします、レムさん、今の会話をお伝えするかはおまかせします。それでは、うちは寝ますね、お休みなさい。」
アンジェはレムの隣を過ぎ、寮に戻る。
「……上位騎士団としては、セラ様にお伝えすべき内容。でも、今の私はアネモネの看板娘でしかない……アンジェさんもいじわるな人ですね。」
そうして、夜が明けた。
ワノモトへの期限、残り13日。
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