第158話 誓いの証

リンはセラの元に救援に現れ、セラを取り押さえていた何かを吹き飛ばした。


「セラ、目では見えないけど厄介そうな人みたいな奴がお前を押さえ込んでたみたいだ。相手の位置、直感でも分かるか?」

「正直ほとんど分からないわ、動いていればまだしも止まられていたらどこにいるのか。」

「分かった、なら俺がセラに指示を出す。風が何かに当たる音、敵の匂い、殺気、それで大体の位置を割り出す。あとは、いけるな?」

「ええ、道を切り開いて私たちはここを去る。殺さないように気をつけなさい!」

「ああ!」


リンは黒剣を構え、セラは銃剣を構える。

リンが一直線で向かった先にセラは銃剣を向け、


「姿形を消せても、存在そのものは消せないだろ!一の型、華火ハナビ。」


鋭い斬り上げが、金属とぶつかり合ったのだろう眩しい火花を散らす。


その瞬間を見逃さなかったセラは、


「そこね!」


1発弾丸を放ち、足と思われる部分に直撃し赤い血が滴り落ちる。


相手が人の姿に近い存在だと予測し、今の状況で足を配置する場所を見極め撃ち込んだ一撃がヒットしていた。


血を流すものは、そこから動かなくなる。


「セラ!あと2人いるぞ!」

「了解!」


リンは声を発すると同時に、黒剣を構え重い一撃を受け止める。


「姿を消せてるからって、慢心してたら俺たちには勝てねえぞ。三の型、カイ向日葵ヒマワリ。」


相手の武器を弾き、回転斬りで相手を吹き飛ばす。


(当てた感覚はあったけど、人にはない異様な硬さだった、何か特殊な防具を身につけてるか、オオカミ型やクマ型みたいに新種の二足歩行か?っ!?この音。)

「セラ!後ろだ!」

「ええ!照らせ、サファイア。」


銃剣に魔術を宿し、5発の氷の斬撃が突き進む。


しかし、全て叩き落とされセラの目の前にまで何かが迫る。


その異様な雰囲気を、セラは感覚で捉えていた。


「リンほど、あなたの位置を把握する力がなくても、単調な攻撃なら私にも読めるわ!照らせ、ルビー。」


続けて銃剣に魔術を発動し、熱を帯びる。


振り下ろした銃剣と金属製の何かがぶつかり合い、火花を散らすとともに相手の肩らしき部分が少々黒く焼けた。


危険を感じたのだろう、セラから距離を取る見えない何か。


この場にいると思われる3体の敵に警戒をさせさらに距離を取らせた瞬間、2人は行動を起こした。


「行くぞ!セラ!」

「ええ!……姉さん、必ず迎えに来ます。」


2人は武器を構えながら、見えない何かがいない方角に走り出す。


2人を追いかけてくるのが、足音で理解できた2人は、


「そこで止まってなさい!」

「ストーカーはいけないぜ!」


リンは白い大きな斬撃を、セラは氷の斬撃を放ち見えない何かを足止めする。


そのまま広場を突き進み、目の前に大きな壁が現れる。


すると、


「リン!手を!」

「ああ!」


セラはリンに手を差し伸べ、ガシッとお互い手を掴む。


ギガスの呪いにより、一瞬リンの指先が凍りついたが熱を集めるイメージで、リンは氷を溶かす。


続けて、


「照らせ、白銀パール。」


銃剣に魔術を発動し、白い光を放ち2人を覆う。

加速したスピードを殺さず、2人は地面を全力で踏切高く飛び上がる。


壁を越えるまであと1mのところに達したタイミングで、リンは片手で黒剣を構え、


の型、月華乃凪ゲッカノカゼ。」


地面に向け斬撃を放ち、その反動で2人は押し上げられ壁を乗り越える。


そのまま地面に向け落ちていく中、


「照らせ、アメジスト。」


銃剣に紫色の光を纏い、近くの木箱を足元に引き寄せる。


そこへ着地し、リンとセラは城から脱出に成功する。


「ナイスだセラ、このまま入り口まで走るぞ。」

「……。」

「セラ?」

「ねえ、リン。さっきの話を聞いても、あなたは私のそばにいてくれる?」


必死だったリンは気づけていなかった。



セラの心の傷を。

それもそのはず、自分が身代わりとなって姉ステラに課せられようとしていた、ギガスの呪いを受け、辛い生活も家族の為と思って乗り越えてきたが、



裏切られたのだ。



セラは、不安に取り憑かれていた。


今は逃げなくてはいけない状況。




それでも、リンはセラの頬を両手で優しく包み、


「離れない。」

「……本当?」

「ああ、セラが離せと言ってもその手を掴み続ける、一緒に歩くぞ。それでも不安なら。」

「不安、なら?」


リンは頬から手を離し、セラの左手を優しく持ち上げる。


そして、



そっと手の甲に口付けをした。


咄嗟のことに混乱しているセラは、


「な、何してるの!?」

「これは、誓いだ。そして、俺たちという存在を、

「……はぁ、本当にあなたは油断できないわね。」

「凍り付けにはしないので?」

「しないわよ、まずはここから脱出する、私について来れる?」

「当たり前だ!セラ、俺のそばで導いてくれ!」


2人は武器をしまい、王都の入り口まで走り出す。


その時のセラの顔は、リンゴのように赤く火照っていた。


その顔をリンに見られまいと、先頭を走り続け着実に正門へと向かっていた。


セラの心は、少しずつ、そして着実に溶かされていった。



他の誰でもない、リンのおかげで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る